マガジンのカバー画像

SQUA的連載コラム

85
沖縄で暮らすひとびとの、日々のものがたりと、思うこと。
運営しているクリエイター

2021年9月の記事一覧

vol.031 心の目

7月ごろから人を撮影する仕事が重なっていた。このご時世、人に会うのは気をつかい、親しい友人にもなかな会えない。そんな時期に仕事とはいえ対面で人に会う機会が重なったのは心配もあったけれど、素直に嬉しかった。 先日SNSのタイムラインに人類学者の山極壽一先生のインタビュー記事が流れてきたので気になり読んでみた。その中で、「共感を向ける相手をつくるには、視覚や聴覚ではなく、嗅覚や味覚、触覚をつかって信頼をかたちづくる必要があります」と話されていて、記事を読みながら深く頷いてしまっ

vol.010 暮らしの蕾

沖縄市は園田という集落にある、一軒の古民家へやって来た。 庭で月桃(げっとう)を収穫していたのは、吉本 梓(よしもと あずさ)さん。彼女はここで、主に月桃を用いた物づくりをしている。 ウチナーンチュにはお馴染みの月桃だが、県外の方は聞き慣れないかもしれない。桃色の小さな蕾をつける、沖縄に自生するショウガ科の多年草だ。 ポリフェノール豊富な実を煮出して健康茶にしたり、防虫・消臭効果のある葉でムーチー(餅)を包んだり、精油を抽出してアロマにしたり… この島の暮らしに古くから

vol.030 奈央ちゃん

高林奈央ちゃんは、焼き物屋の夫の一番最初のお弟子さんとして月に一度ぐらいの頻度でお手伝いに通ってきていた。約10年ほど前のこと。 石垣島から竹富島に日帰りで通ってきていたこともあったが、数日間泊まり込みでお手伝いにきていたこともあった。そんな時は、朝ごはんや晩ごはんを共にするのが嬉しくて、あれやこれやとテーブルに料理を並べては奈央ちゃんの嬉しそうな顔を見て楽しんでいた。 娘が生まれて1年目ぐらいに、子育ての疲れから免疫力が落ちてしまい肝臓周辺の炎症をおこしてしまった。1週