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SQUA的連載コラム

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沖縄で暮らすひとびとの、日々のものがたりと、思うこと。
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2021年7月の記事一覧

vol.029 バケーション

夏には、ワーケーションじゃなくて、バケーションを楽しみたい。 完全にオフライン、脱パソコン、写真編集も現像も、メールや原稿チェクもしないバケーション。 目覚まし時計に起こされず、朝食にはゆっくりとコーヒーをドリップし、新鮮なフルーツをカットしながら流れる音楽に鼻歌をのせて、好きなように新聞や本を広げて午前中いっぱいをゆるりと過ごす。気が向いたら水着に着替えて海へ。思う存分泳いだらランチへ。テーブルを囲み友人や大切な家族と食事を楽しむ。おしゃべりに花が咲き時間を忘れる。午後

vol.009 約束の水平線

ここは沖縄本島最南端の集落、喜屋武(きゃん)。広大な農地の先は一面の海。石積みの外壁や古民家が多く残り、まさにこの島の原風景を描いたような地域だ。 そんな村内に一軒、一際モダンな建物が佇んでいる。 「atelier sou」 群馬県出身の仲間秀子さんが営む、金細工(くがにぜーく)アクセサリーを主に扱うアトリエだ。 扉を開ければ、ドライフラワーの甘い香りと、年代物のスピーカーから流れるやわらかな音響に包まれる。 時を重ねたアンティークショーケースの中で、美しく並ぶ

vol.028 木漏れ日舞う中で

先月からお別れが続いている。 2人とも私が暮らす島のご近所さんたちで、20年前に移り住んだ頃から可愛がってくれていた年配の島人たちだ。MさんにもTさんにも娘を含め家族全員がお世話になっていた。 先日は、109歳と大往生のTさんの納骨式に参列してきた。木々に囲まれた空間にやふぁやふぁと南風が心地よく、木漏れ日がテントの幕や参列者の上で美しく舞っていた。 Tさんの納骨式も先月参列したMさんの納骨式も同じ場所で行われたのだけど、それは2人が眠る立派な亀甲墓が隣同士だからだ。T