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心に納める

 

 氷室京介のKISS MEを聞くと、スーパーファミコンのSDガンダム円卓の騎士が想起されます。これは当時、このゲームをやりながらリピートでずっと聞いていた為なのですが、このような(聞くと全く違うものが想起される)曲がいくつかあります。劇伴が良い映画は名作が多いのですが、音とシチュエーションはリンクしやすいのでしょう。いずれにしても記憶と密に絡んでいます。何の話かと云えば、模型においても記憶と深くリンクする、印象の強い模型があるのではないか。そんなお話です。先日ガンダムベース東京に友人と買い物をしに行ったのですが、世代の違う友人とSD談義に花が咲きました。小中学校の頃の思い入れがあるSDガンダムは、その完成品やパッケージを見ると当時の気持ちや感覚がまざまざと思い浮かびます。そんな昔話をしながら色んなSDガンダムを買って帰ってきました。箱を開けて付属の漫画を読んで何も考えずに組んでシールを貼って完成。とても楽しい。子供の頃の気分のままの完成です。そのまま棚に飾ってしまいましょう。その素組の完成品を見る度にあのころの気分を思い出すのです。

それとは別にもうひとつ買ったものがあります。ファインモールドの1/12?シリーズ、ソビエト陸軍女性兵士ターニャのプラモデルです。このシリーズ、発売当時から知っていましたが中々組む機会がありませんでした。そんな折に鳥山明先生の訃報をSNSで知り心にぽっかり穴が空いたのですが、その時にこのプラモデルの事を思い出し、組むなら今しか無いだろうと思い立ち、購入、即作成に入りました。キット自体には思い出や思い入れは特に無いので、組んでいる間はいつも通り無心にどう仕上げるかしか考えておりません。サイズも小さいので3日ほどで完成しました。棚に納めて完了、これで心を落ち着ける事が出来ます。式を打つと云う考え方があります。入学式卒業式結婚式葬式、様々な式がありますがいずれもこれをする事で一旦折をつけようと云う儀式です。これらは何れも、心を落ち着かせるための装置です。今回自分が組んだのも、心に空いたスキマを埋めるための儀式です。自分がどう折り合いをつけるのかそのために行う行為ですね。

SDガンダムが並ぶ棚の一角にこのフィギュアを納めた時にふと思い出しました。人は2度死ぬと三谷幸喜は云いました。1度目はこの身体を土に還す時。もう一度はその人を知る人間が全て居なくなった時です。鳥山明と云う偉大な先生を、このターニャを見る度に私は思い出す事でしょう。

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