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「料理の四面体」とプラモデル

ネット上で軽率に知り合いになりましたしげるくんにいい本あるよと袖の下から1冊紹介頂きまして即日購入しました、「料理の四面体」と云う本を読みました。世界各国の料理を紐解いていくと火、水、油、空気の四つの面に解体され、それぞれの点、面に色々な料理が配置可能である。引いては新しい料理もそこから見つけることが出来るのでは。と云う様な内容です。リーダビリティが非常に高く、グイグイと引き込まれる内容なのですぐ読み終えてしまいました。元々料理とは生の素材を食べられるようにする為に人間が焼いたり煮たりしただけの事が色々な知恵や経験を元に美味しく加工する技術になり、それがいつしか多岐にわたり複雑化し、各国の料理方法になっていきましたが、根本にある理屈は同じです。レシピを覚える前に、原理を知っていれば多岐にわたる応用が可能になると云うような考え方です。本質的ですね。ここで面白いのは、しげるくんが「料理の四面体はプラモデルの本質でもある」と云う様なことをツイッターで云っていた事です。読了後になるほどなーと思いました。プラモデルに限らず、世の中の趣味事全般にいえるような気もします。

人間の欲に「見たものを形にしたい」と云う気味の悪い欲がありまして、当初は木や粘土など自然のマテリアルを用いて人やものを模した形にしました。それを作ったり飾ったりして遊んでいた訳です。しかしワンオフモデルのものが多く、複製も困難でした(同じものを同じ工程で模して作る他ない)。ここで、より簡易に量産ができると云う事で、素材をプラスチックにして、型を取りやすい形状にバラしてそれを金属の型に起こして量産して売り出したものが所謂プラモデルです。この本でいえば庶民の間に生まれた民族料理の原型みたいなものですね。硬い肉を食べられるように加工する知恵と同じです。これにより同じ形のものが比較的簡単安価に人々の手に渡ります。車やロボットなどの模型がパーツを切り取って貼り付けるだけの簡単な加工工程により形(食事)となって手に入る時代になりました。料理はその後、その素材をより美味しく食べられるようにする為に、工程が複雑多様化しますが、プラモデルも同じく、多岐にわたる応用がされるようになります。はめ込み技術の向上でプラスチックを溶着する為の接着剤が不要になり、塗装の必要性(従来のプラモデルは単色で成型される為塗装が必要でした)がカラープラスチックの成型技術により不要になり、プラスチック以外のマテリアルを使用することで模型のリアリティを向上させる技術が産まれたりして、プラモデルは当初のものよりより高精細に、より複雑なものになっていきます。この辺りはもとは民族料理だったものが味の探求により高級なフランス料理になっていく流れに非常に良く似ています。

私たちが今、気軽に買って組んでいるプラモデルもそうした技術の進化の最末端な訳です。最新のプラモデルはそれこそ高級フランス料理な訳ですね。ここで問題もあります。民衆のものだった安くて簡単なプラモデル(料理)は技術の進歩により、より高精度な遊び(料理)へと変化を遂げてしまいました。新しくこの料理(プラモデル)を食べて(遊んで)みようかなと云う人は、いきなり高級フランス料理から食べ始めるわけですね。お値段も相応のものです。2~30年前、子供の頃に1度食べた人も大勢いるでしょう。懐かしんで郷土の料理(プラモデル)を食べてみようとする人もその進歩した料理の味と金額に驚くことでしょう。

民間の遊びだったものが技術の進歩により1部の趣味層を構築し、文化へと変節して行く過程はどのホビーにおいてもありうる話です。ホビーは趣味と訳されますが、英国圏では個人が長期にわたり打ち込むことを指す傾向があります。余暇を何となくそれで潰すというよりも人生をかけて行う個人研究的な意味合いが強くあるように思われます。本質的には、人生における人間活動の全てとも取れるものですね。この本を読む限り、本質的なアプローチを知ることはさきのバリエーションを増やし受け入れる基礎になりうる事のように思えてきます。プラモデルで本気に遊んでいる人はぜひ一読されても損は無いのではないかと思います。

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