見出し画像

戦車模型海外技術指南と云う奇書

日本の三大奇書の1つ、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」と云う本が大好きで何度も読んでいます。ミステリィなのですが衒学的で機知に富んでいてとても面白いんですが、何度読んでもわかりません。ミステリィなのにわからないんです。スカッとする訳でもなく、読みやすい訳でもないのに何故かめちゃくちゃ面白いんです。解説本などもいくつか読んだりしましたがどれもスパッとしない。だからこそ何度も読んでしまうのですが、分からないながらも1つ云える事は、何度も読めるくらい楽しみの構造がとても強い。この本、初版が1935年でもう85年も前の本なんですが、よみ重ねる度に新しい発見があるわけです。100年読める本て凄くないですか。

さて、余談はさておき、平井真さんの戦車模型海外技術指南と云う本が大日本絵画から出版されました。戦車模型、プラモデルの戦車をリアルに仕上げるための指南書です。平井さんはTwitterでホローさせて頂いており、Twitter上でも惜しみなくご自身の技術を掲示されておりいつも非常に勉強させて頂いております。その洗練された手法がとても綺麗な写真ともに手順が解説されておりなるほどこうすると上手く出来るのだなと云う気分にさせてくれます。
そう、そんな気分にさせてくれるのです。平井さんのTwitter上の技法もそうなのですが、プロの料理番組のように「この方法で仕上げたものがこちらになります」と同じで待ってくれ今なんか急に凄いの出てきてないかと云う様な超絶洗練された手順が解法として写真解説されているわけですね。ざっと読んだだけでも、1度でも戦車模型を弄ったことがある人ならそう感じるのではないかと云うポイントがほぼ全ページにあります。読み込んでやり込んで初めて見えてくる行間みたいなものが溢れている予感しかしません。

同じ感覚を、吉岡さんのタンクシンクタンクとR工廠さんのナノテクノロジーを読んだ時に感じました。この2冊は未だに何度読んでも分からない事だらけです。本当の技術の指南書と云うのは、読んだだけでは意味がなく、やり込んでそれが出来た時に初めて本当の意味が身につく様に出来ているのだと思います。そういった意味では、平井さんのこの本も間違いなく分かるまで何度も読んで何度も試してみないといけない様な予感に満ち溢れています。良著の予感しかしません。優れたプロほど簡単そうに説明します。そこを見誤ってはいけません。隠れた技術を、意味を見つけないとスルッと終わってしまい拍子抜けして終わりです。

そんな訳で向こう100年は読める、分かるようで分からない少し分かる大日本絵画の三大奇書の1つ、平井真さんの「戦車模型海外技術指南」、是非買いましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?