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『スパイ百貨店』前日譚03

ヒカリ「普通の人はお品物の取り寄せとかかな。
でも、うちのお客様のなかで特にご贔屓いただいている方にだけ、もっともっとスゴイものを用意できますよ~って百貨店側からご案内してるんだよ」
ユリト「VIP向けに提供する案件のみが“シークレットサービス“と呼ばれている」
ヒカリ「ちなみに、よくあるご注文は“経済界を揺るがすような機密情報”とか、“蹴落としたい相手のスキャンダル”とかかな~」
マミヤ「面接でその話、たしかに聞きました……。間違いなく聞きました……。まさかマジトーンで言ってたなんて……。だって、スパイ行為はさすがに百貨店が提供するサービスの領域を超えてるじゃないですか!!」
ユリト「お得意様の資産や地位をお守りする業務だ。最終的には桃源百貨店の売上維持に繋がる」
マミヤ「サービス過剰!! ねぇ、こんなこと今すぐやめましょ? 働き方改革を今こそ起こすべきだー!! ストライキだー!!」
ヒカリ「往生際悪いなぁ」
ユリト「説明も終えたので、早速ミッションに取り掛かるぞ。時間がない」
マミヤ「ちょっと待ってくださいよ! なんとなく理解はしましたけど、一切納得はしてませんよ!?  俺、何やらされるんですか!?」
ユリト「しかし爆破とは。もっと効率の良い方法を取れないものだろうか」
ヒカリ「それな~。派手にやらかしたけど、スマートじゃないよねえ」

2人は完全に俺の主張を無視することにしたらしい。
ここではどんな抵抗も無意味なものになるのだと、悟る。
そう思うと急に諦めの境地に達したのか、俺は落ち着きを取り戻した。

マミヤ「あのー。お取り込み中申し訳ないんすけど、ヒトコトだけいいですか? 百歩譲って今回のミッションとやらには協力します。でも毎度こんな急に呼び出されるとかほんとムリなんで、これが終わったら辞めさせてもらいますね」
ユリト「なんだその言い草は」
ヒカリ「全然ヒトコトじゃないし」
マミヤ「時給、高いっちゃ高いですけど、にしても割にあわないし……。俺、まだ高校生なんで学校と両立できるバイトがいいんですよね」
ヒカリ「ワーオ。超自由だね。まあ突然こんなことになってムカつく気持ち、分からなくもないけど」
ユリト「ふむ。貴様の給与など、微々たるものだ。そうゴネ続けられても面倒だしな……。いいだろう。1案件ごとに100万くれてやる。これでどうだ」
マミヤ「は!? そんなに!? すっげぇヤバそうなニオイしかしない……でも100万かぁ……欲しい……ううーーーん、でも……」
ユリト「ちなみに、エレベーターへの爆撃は貴様のせいだぞ」
マミヤ「あはははは! さすがにそれはイチャモンでしょ~。俺は巻き込まれただけですもん」
ユリト「敵の目当てはお前だ。ボサッとしているところを救出してやったんだ。感謝したまえ。あと、爆破部分の修繕費用は10億。まるごと貴様の負債だ」
マミヤ「……は? アンタ、なんか変な薬でもキメてんすか?」
ヒカリ「分かる! 俺もユリト様に対しておんなじ気持ち、しょっちゅう抱いてるよ~! でもね。この件についてはユリト様はラリってない。かわいそうだけど、トラブルの火種はキミなんだよ」

(続く)

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