2019年冬の移籍マーケット:ファーストチームの選手一覧と去就展望(前編)

ポジション別に解説していきます。

GK:ゴールキーパー

ウーゴ・ロリス(32)

現契約は2022年までで残り3年。スパーズでもフランス代表でもキャプテンだが、近代型ゴールキーパーとしては致命的な足元の弱さがあるため、強豪クラブが資金を投じてまで獲得に動くことはない。 残留確定


ミシェル・フォルム(35)

現契約は今シーズン終了までで残り半年。今シーズン序盤のロリス負傷離脱時に出番を得るも、そこでガッザニーガに序列をひっくり返され、現在第3GKに。オファーさえあれば二束三文でも放出しそうな崖っぷち。 放出濃厚


パウロ・ガッザニーガ(27)

現契約は2022年までで残り3年。フォルムを乗り越え、今シーズン出場した7試合は全勝。ポチェッティーノと同じ、アルゼンチンのサンタフェ州にある人口3千人ちょっとのムルプイ出身。ロリスの後継者の時代になっても2ndで控えてくれてそう。 契約延長すらあり得る


アルフィー・ホワイトマン(20)、ブランドン・オースティン(19)

上記3人の次に控える若手GKの2人だが、U-21でホームグロウンとなるため、プレミアリーグでもチャンピオンズリーグでも登録枠を使うことなく試合出場可能。フォルムを放出した場合、その外国人枠をフィールドプレーヤーに使うことができる。


CB:センターバック

ダビンソン・サンチェス(22)

現契約は2024年までで残り5年。あまり目立ちすぎず、周りも持ち上げたりせず、「スパーズが身の丈に合ってる」と逆に勘違いさせて、2年後くらいにもう一回くらい契約延長したいところ。 残留濃厚


ヤン・フェルトンゲン(31)

現契約は2020年までで残り1年半。クラブ側に契約延長オプションがある、って選手側になんのメリットがあるの?31歳の時点で1年延長可能な契約って、もうキャリアのピークをスパーズに捧げちゃってるんだよね。本当にありがとう。 残留濃厚


フアン・フォイス(20)

現契約は2022年までで残り3年。3〜4番手に最適なお年頃とクオリティ。実際はダイアーとデイビスが分け入って5〜6番手。ポチェのもとで才能を開花させるもヨシ。ビエルサのもとで修行して価値を高めるもヨシ。シーズン前半はCL登録選手から外れたが、後半は入ってきそう。 残留濃厚


トビー・アルデルヴァイレルト(29)

現契約は2020年までで残り1年半。ただし、半年後の8月の移籍マーケット終了前の2週間は、2500万ポンドの獲得オファーが届けばクラブ間合意が自動で成立する(あとは本人/代理人の選択次第)。 オファー額次第で放出の可能性有

トビーの冬の移籍を解説

端的には「オファー額次第で放出の可能性有」という空虚な表現になってしまうため以下に解説します。

2015年(トビー25歳の時)にアトレティコから1150万ポンドでスパーズに加入した時に締結した期間4年に「1年延長オプション+2500万ポンドのバイアウト」条項付帯付。

解説の前提をシンプルにするために、半年後に2500万ポンドでトビー・アルデルヴァイレルトはスパーズを去る(前提A)ものとします。

半年前、(報道によれば)スパーズは5000万ポンドの値札を付けたが買い手が付かず。夏の時点でスパーズにとって5000万ポンドの価値があった(前提B)が、獲得オファーが無かったということは他クラブにとって5000万ポンドの価値が無かったんです。

スパーズにとってトビーがあと「1年」スパーズでプレーする価値は、「5000万ポンド(前提B)-2500万ポンド(前提A)」=2500万ポンド

夏の移籍マーケットから5ヶ月が経過し、次の夏までの実働期間が4ヶ月となった今、仮にスパーズにとってのトビーの価値に対する考え方が大きく変わっていなければスパーズにとってトビーがあと「半年」スパーズでプレーする価値(前提C)は夏の時点のほぼ半分の1250万ポンド。この冬の時点で設定される移籍金(=スパーズにとってトビーがあと「半年」スパーズでプレーする価値)は、「1250万ポンド(前提C)+2500万ポンド(前提A)」=3750万ポンドになります。この半年でスパーズにとってのトビーの価値が変わっていなければですが。

スパーズにとってのトビーの価値はどう変わったのか。3つの要因があります。


■要因1:夏に5000万ポンドの獲得オファーが届かなかった

夏の時点でユナイテッドへの移籍が現実味を帯びており、交渉が繰り返されていた。とメディア報道が騒いでいましたが、終わってみれば「ユナイテッドはまったく動いていなかった」とのこと。他クラブにとって「5000万ポンドの価値は無い」選手だった現実は、スパーズの設定する要求額を減額させるかもしれません。


■要因2:経済的価値に影響が大きいチーム戦績

シーズン前半戦を終え、4つの大会で勝ち残っているスパーズ。「タイトル獲得」がこれまでよりは現実味を増していますが、まだまだ「タイトル獲得」がトビーがいるかいないかで決まるという段階では無いです。さらに「タイトル獲得」の経済的な価値を考えると、スポンサーボーナスが高額なのはプレミアリーグやチャンピオンズリーグとなるでしょうから、これまたトビーがいるかいないかで決まるものでもないでしょう。

経済的な価値を考えた時に現実的に直視すべきは、「タイトル獲得」ではなく、「今季CLのグループステージ突破」と「PLのトップ4入り」の2つの目標達成。前者は達成済みで、結果的にはご存知の通りギリビリ突破だったので、ヤン不在の5試合に出場したトビーがいなければヤバかったかもしれません。夏に放出しなくてよかったね。

そして、後者が最も悩ましいところ。1月6日時点で、4位チェルシーとは4ポイント差、5位アーセナルとは7ポイント差、6位ユナイテッドとは10ポイントとなっています。スパーズは見事なまでに勝ち点を稼いでいるとはいえ、ライバルたちの追撃を考えると4位以内が安泰ではありません。

一方で、トビーのチーム戦力としての重要性は、フォイスの成長やデイビスのセンターバックへのコンバート(デイビスをコンバート可能にするローズの復調)などで、夏の時点よりは「不可欠な存在」ではなくなっているかもしれません。


■要因3:クラブの資金繰り

先日、1年の契約延長オプションを行使したことで来夏有効になる「2500万ポンドのバイアウト」条項にはより細かな取り決めがあるようです。例えば、「その2500万ポンドは2年以内の分割払いとする」など。2015年にトビーを獲得した時点から、「スタジアム建設費」を睨んでいたことが明白です。トビーのチーム戦力における必要性とは無関係にクラブの資金調達の必要性は存在し、帳尻合わせが不要な一部の金満オーナーを擁するクラブを除けば、後者の方が優先されます。そして、その必要性と緊急性は高まっているような報道が多いのが現状です。

今(冬の移籍マーケットで)、4000万ポンドに迫る獲得オファーを提示してくる強豪クラブが現れたら、クラブ主導で決まる可能性は大いにあります。実際は、来夏トビーに2500万ポンドで買い手が付かないという懸念もありますからね。


SB:サイドバック

ダニー・ローズ(28)

現契約は2021年までで残り2年半。12月に復帰し、このところの復調ぶりから後半戦のキーマンとなりうる存在に。直近のインタビューを見る限りは本人に移籍の希望はなさそう。夏に改めてビッグクラブから触手を伸ばされるほどの価値を高めてもらい、そこでクラブをDisってもらいたい。 残留濃厚


キーラン・トリッピア(28)

現契約は2022年までで残り3年半。「レアル・マドリーが獲得を狙っている」との報道が出てもスパーズ・ファンが吹き出すほどの安定感がある。これぞスパーズ人財(「人材」ではない)というべき、非万能型サイドバック。東京オリンピックにオーバーエイジで来そう(テキトー)。 残留濃厚


セルジュ・オーリエ(26)

現契約は2022年までで残り3年半。トリッピアと好不調の波をズラしてくるあたり仲が良すぎ。前所属クラブで問題児だったのが更生したようだ(シランケド)。ただし、オーリエの未来において不気味なのはローンに出ないウォーカー・ピータースの存在。スパーズ側は「出場機会を減らしてる選手を整理したい」なんて都合が良いことを言っているが、実際にそれなりのオファー額で買い手がつくのはオーリエあたりと思料します。 オファー額次第で放出の可能性有


ベン・デイビス(25)

現契約は2021年までで残り2年半。誰も気にかけていないがシーズン前半戦、アルデルヴァイレルトの次に酷使されてたのに、ファンの心配はシソコに向けられていた。まさに酷使無相(こくしむそう:酷使されても周りからの関心が向けられない様)。誰も気にかけていないが25歳とまだ若い。誰も気にかけていないがセンターバック左でも安定感を発揮した。誰も気にかけていないが残り契約期間が長いとは言えない。他クラブも気にかけていないから移籍はないのだろうか。 残留濃厚


カイル・ウォーカー・ピータース(21)

現契約は2023年までで残り4年半。右サイドバックの3番手、左サイドバックでも3番手で、今シーズンまではU-21のホームグロウン(登録枠の対象外)となる。出場すればマン・オブ・ザ・マッチを獲得するヒーローだが、CL敗退の窮地に陥れたカンプノウでのミスを忘れてはいけない。ポチェが意地でも育て上げると思う。 残留濃厚


前編総括

フォルム、アルデルヴァイレルト、オーリエに移籍の可能性あり。フォルムを放出すれば、外国人枠の問題も軽減できる。アルデルヴァイレルトの移籍については、テストに出るのでよく学んでおくこと。

※評価をいただければ後編も書きます。