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"Constant Moderato" に寄せて そのタイトルについて

いい曲ですよね、Constant Moderato.

このティザー PV で使われている "Constant Moderato" というタイトルの曲は、同じくブルーアーカイブ内で用いられている Aoharu と並んで、このゲームの顔とも言える楽曲だと思います。特に Constant Moderato は、ブルーアーカイブの素敵な楽曲たちのなかでも、「初めてブルーアーカイブを起動したとき」に流れていた曲として、私にとって特別な記憶に彩られています。この "Constant Moderato" というタイトルを、どのような意味を込めて私が理解しているか、ということについて記しておきたいと思います。

さて、ブルーアーカイブ起動時に流れるムービーからも、この曲には「ブルーアーカイブのキャラクターたちの日常」といった印象を強く受けました。"Constant" という形容詞もそうしたイメージを補強していると思います。

しかし、"Constant" と "Moderato" という語の結合は少し不思議な感じがします。constant は形容詞だし、moderato も音楽用語として副詞的に使われます。形容詞は名詞を修飾しますので、文法上は「コンスタントなモデラート」とはなりません。それでも、明らかに「コンスタントなモデラート」と読むことが意図されているタイトルでしょう。

"Constant Moderato" の意味するところを考えていたところ、私は、ふとした瞬間に「いつもの足取りで」と、音楽用語のように意訳できそうだと思いました。ちょっといい感じに訳せたんじゃないか、と自画自賛さえしました。

けれども、落ち着いて考えると、テンポを表す音楽用語で「足取り」と訳せそうなのは「歩くような速さで」を意味する "Andante" であって、"Moderato" はふつう「中くらいの速さで」という意味で使われています。「いつもの足取りで」という訳に適切なのは "Constant Andante" のはずで、"Constant Moderato" はそんな訳にはならなさそうです。私の「名訳」は、音楽用語をちゃんと訳そうとすると単なる誤訳となってしまいました。悔しい!! なんで "Constant Andante" じゃないの!

なぜでしょう。

「足取り」と訳すのは "Moderato" よりも "Andante" のほうが適切だと気がついたときよりも、さらにいっそう落ち着いて考えてみましょう。"Moderato" には二通りの理解のしかたがあると思います。一つは上のように「中くらいの速さで」とそのまま理解するしかたで、もう一つが "Andante" よりも少し速いテンポを示す音楽記号として理解するしかたです。

"Andante" と "Moderato" という音楽記号が示すテンポ同士の関係から考えてみると "Constant Moderato" のモチーフは、"Andante" よりも少し速さ歩いている、と考えることができます。ここで私は、ブルーアーカイブの少女たちが活発に、少し速足に歩いている様子が思い浮かびました(モモイとか! 走ってる
モモミド可愛いね)。

3rd PV 良……。

ではなぜ "Andante" より少し速い音楽記号が使われる必要があるのでしょうか。そこにはブルーアーカイブの少女たちと関係している私たち「先生」の存在があると思います。私たちは "Andante" で、彼女たちよりもゆっくりと歩いており、
それゆえに彼女たちを見守ることができるのです。

ブルーアーカイブのストーリーでは、私たち先生は生徒たちの要請のもとで、彼女たちを助けるために行動を始める、という構造があると思います。どんな場合でも、彼女たちのストーリーが先にあり、私たち先生は、少し遅れて彼女たちに追いつき、彼女たちを手助けすることになります。私たちは、様々な困難に直面して少し歩みが遅くなった少女たちを助け、勇気付け、励ますことで、彼女たちがまた私たちよりも少し速く、私たちの少し前を歩くようにしているのだと思います。

こうした意味で、この楽曲のタイトルも、大人である先生の歩く速度である "Andante" ではなく、それよりも少し速く、友人や楽しみを発見して少し走るように行き、そして時にはそのせいで転んで傷つくこともある少女たちの日常での速度である "Moderato" でなければならないのだと思います。

こうして、"Constant Moderato" という曲名は、それだけで私たち先生と生徒のキャラクターとの間の関係を、そして彼女たちと私たちの日常を表現するものとして理解することができます。この意味で、この曲名はブルーアーカイブというゲームそのものを示しているということができるでしょう。それゆえに、この曲はまさにブルーアーカイブの代名詞とも言える曲となっているのだと思います。

以上のような理解が正しいものであるかどうかは別として、ブルーアーカイブを起動して "Constant Moderato" を聴くとき、こうした理解を思い出していただければ幸いです。

ブルーアーカイブ三周年おめでとうございます!!

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