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祈願上手【毎週ショートショートnote】

「ああ、神様………
  ………
  ………わかりません」

キヨカは一人、学校の教会の会衆席の最前列に座って、頭を下げ、目を閉じ、祈っていた。
朝のミサでも真面目に祈ったことなんかほとんどなかったのに。
でも、今は祈ってた。

いや、祈りたかった。

何もかもがうまくいかなくて、どうしようもなくて、
誰もいもしない放課後の教会堂に立ち寄って、
誰かが、いや、神様が、助けてくれないかと、
祈ろうとしたのに、

祈れなかった。

嫌だった。
あれもこれも全て。
でも、いざ何かが変わって欲しいと願おうとしても、
何を望んでいるのか声に出そうとしても、何も出てこなかった。

ああ、
腹が立つ。悲しい。苦しい。
これだけ立て続けに嫌なことが起こっているのに、自分でも何がどうなってくれればいいと思ってるのかわからないなんて。
ただただ「何か」が変わって欲しくて、でも「何」が欲しいのかさえわからなくなっている。
自分の願望さえわからなくなってる自分が惨めで悔しい。悲しい。

ああ、もう。
何を願ったらいいのかもわからないなら、
何を願ったらいいのかわかるようになるために、

『ああ、神様、せめて誰か話せる人を…』

「2組の斎藤さん?」

はっと声をかけられて顔を上げる。

「神林先生」

「え、どうした? 何があった? 話聞くよ?」

どうやら泣いているらしき私の顔を見たからか、先生が続けて、私の横にそそくさと座る。

『え? 神様、聞こえた?』

祈願下手から、祈願上手へ



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