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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—

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『定本版 李箱全集』を日本で出版すべく、その重要過程である定本作業を記録するマガジン。
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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第九回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第九回〉

 韓国に来てもう一週間が経とうとしている。若干聴覚過敏気味だろうか。ずっと監視されていてるような、壁が迫ってくるような感じはある。相変わらず、抑うつ。今の部屋が私の安らぎの場所となることはなさそうだ。ドンマイがんばれ。

 昨日も今日も、帰ってきて布団に倒れ込んで5時間ほどうたた寝してしまうリズムになっている。今日はすごく疲れて何もできなかったが、昨日は少し「R I S S」を利用して調査を行った

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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第八回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第八回〉

 国立中央図書館まで自転車で1時間圏内の場所に家を借りたのに、なかなかどうして原本に触れられるまでの道のりは想像以上に長く、不可能性がもわわぁんと漂っている。国立中央図書館というのはわかりやすくいえば、韓国で一番大きい、何でもある図書館だ。

 滞在している良才駅付近のコシテルから国立中央図書館までは徒歩で1時間。歩ける距離なので下見調査のつもりで歩みを進めた。下見調査のつもりなのに鞄は重い。

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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第七回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第七回〉

 今日は論文を読みながら参考文献を抽出した。私は、テキストに関する解釈などは余程のことがない限り興味が湧かないので、読み飛ばすとあっと言う前に読み終えた。参考文献は、1930年代後半の文壇や詩、雑誌、作家に関するものが多く、李箱の活動期及び生存時期と重複しているかは怪しいが、過去を知るためにはその後を知るという手段もあり得るだろう。根気強く読んでいきたい。

 2023年10月8日、ゼミの担当教員

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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第六回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第六回〉

 昨日10日、韓国に到着して、換金しに明洞へ行き、内見に行き、ホテルにチェックインするだけだったが、どれも40キロほどの荷物を運搬して、韓国語で質問したり応答しなければならないので、疲労困憊だった。あれだけ身動きが取りづらく言葉もままならないと、外国人と障害者というマイノリティを一気に背負ったようだった。
20時に時間ほど一度寝て、風呂に入って、また0時くらいから7時半まで寝た。
 11日した作業

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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五回〉

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五回〉

 現在韓国で出版されている書籍のほとんどが横書きで印刷されている。万が一、原典では縦書きで印字されていたとしても今最も韓国で優れているのは『정본 이상 문학 점집』(주해 김주현,소명출판 ,2009)の全三巻であるということは日本国内からも想像に難くない。
 レイアウトの決定的違いはあっても、やはりこの定本全集の功績は凄まじく、世界のどこに出しても恥ずかしくない水準に位置していると言える(初出縦

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