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「ハリウッド・ロリータ」と、ジョディ・フォスター

「ハリウッド・ロリータ」(マリアンヌ・シンクレア著 JICC出版局)という本がある。
ハリウッドにおいて、幼くしてデビューした少女たちが、この世界でどのように扱われ、そして、搾取されてきたかを書いたものである。
「少女版ハリウッド・バビロン」といってもいいかもしれないが、ただスキャンダラスな書き方をしているわけではなく、少女たちを取り巻くハリウッドという社会、ひいては社会全体について、深い考察がなされている。

とりあげられているのはリリアン・ギッシュにはじまって、シャーリー・テンプル、ジュディ・ガーランド、スー・リオン、リンダ・ブレアにテイタム・オニール、ナスターシャ・キンスキー・・・そして最後の章は、ジョディ・フォスターとブルック・シールズの2人でしめくくられている。

彼女たちについて書く、となると当然、その周囲の大人たち、それも、「うんと年上」の、監督や俳優たちについても書かれなくてはならない。ということで、チャップリンやロマン・ポランスキーについての、要するに、彼らの、少女たちとの関わりに関しての詳しい記述もある。

彼女たちの家庭環境はたいてい、似たり寄ったりである。
両親の離婚、または死別による父親の不在、そのために幼いうちに子役としてデビューしたため、おそろしいステージママの監督のもと、厳しい世界を生きなければならなかった。
そして、大半の少女たちが途中でハリウッドから脱落していったわけだが、この本に書かれている少女全員が、そうなったわけではなく、例外もある。
その、「例外」の1人が、最終章でとりあげられているジョデイ・フォスターである。

著者は、ブルック・シールズがまだ赤ん坊の頃、街で、「スウェーデンなまり」の「老映画スター」が近寄ってきて乳母車の中を見て、「その子はすばらしいわ!きっと伸びるわよ」と言った・・・という「伝説」を紹介し、そのあとでジョディ・フォスターについて、こう書いている。

「(彼女については)その美しさに気がついた老スターはいなかった。これからもずっといないだろう。彼女は美しくないのだ。

この本ではジョディ・フォスターが「告発の行方」に出演しただけはことは記されているが、アカデミー賞主演女優賞を2度も受賞するほど活躍することになるとは、予想できなかったのだろう。
グレタ・ガルボに気づかれなくても(あくまでも伝説なのだが)、その、もっとずっと後に、ジョディ・フォスターは、真の美しさを手に入れるのだ。

ジョディ・フォスター自身、あるインタビューで、「ハリウッドでは本当に外見だけが重要で、自分がこの国の人たちが求めているようなかわいさ綺麗さを持っていないということはよくわかっていた」という内容のことを話していた。
しかし、私には、ジョデイ・フォスターはいつも堂々としていた、という印象がある。
たとえば、「ホテル・ニューハンプシャー」。
私はこの映画を、知人から、ジョディ・フォスターの体形の悪口を聞かされたあとで見てみたのだけど、私はむしろ、何も気にしていなさそうなジョディ・フォスターに好感を持った。
たしかにこの頃の彼女は、大学で勉強したあとピザを注文して友達と一緒に食べるという生活をしていたということで、世間一般の基準にあてはめると「スタイルがいい」とは言えないのだけど、それでも、自信満々に見えた。

体形のことに関してもそうだが、ジョディ・フォスターという人は、言葉よりも先に、その存在感や自信で周囲を圧倒し、人々を納得させてしまうようなところがある、と思う。

そういえば以前、彼女の伝記を読んでいて、「子役と仕事をしていると大変だ」という発言をしていたのを思い出した。
「子どもと一緒だと落ち着かないの。もちろん、彼らだってセリフは早く覚えるけど、タイミングがかなりずれるのよ。大人と一緒のほうが、うまい演技ができるわ」、と。
では、この発言をしたのがいつなのか、というと、13歳のときなのだから、世間から見れば「あなたも子役でしょ」ということなのだろうけど・・・周囲の「子供」にうんざりしているのはジョデイ・フォスターだけではないと思うのだけど、なかなか、こういうことが言えなくて苦しい思いをする子供のほうが多いはずだ。

タイトル画像は、「ハリウッド・ロリータ」に掲載されている10代前半くらいのジョディ・フォスター。
とても賢そうだし、「美しくない」どころか、成長したら、ぐんと綺麗になる顔だと思うのだけど?










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