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優雅な夏休みのための、読書リスト②天国から、地獄を覗く。

たとえば、自分が一流ホテルに宿泊しているとします。
もしくは、南の島に遊びに来ているか・・・まあ、どちらでもいいです。
そして、ホテルの屋外プール、もしくは海で、泳ぎたくなります。
これからひと泳ぎして、それで、ちょっと飽きたら休んで、そしてまた泳いで・・・本を、持っていこうか?何がいいかな?と、
考えます。
明るく楽しいもの・・・ではなくて、ちょっと、重いものが読みたい。暗くて、怖くて、ちょっと、寒気がするようなもの。残酷なものでも、いいな。青い空の下でそういったものを読むのも、いいんじゃないかな・・・。などと、あれこれと。

ということで今回は、こんなときのための読書リストをつくってみました。
「こんなとき」とはどんなときかというと、「天国にいながら、ちょっと地獄を覗き見したくなったとき」です。

そもそも、重いものは、心が健康なときでないと読めないのではないでしょうか。
・・・いえ、でも、落ち込んでいるときこそ、重いものを読んでさらに落ち込んで逆に元気が出るときもありますね。
どちらにしても、やはり、「明るく楽しいもの」だけでなく、「暗く重いもの」も、心を開放するのに必要なものであることは、間違いありません。

では、まずは、ダフネ・デュ・モーリアの小説をリストの筆頭にあげておきましょう。
「写真家」「真夜中になる前に」「美少年」の三篇。
「写真家」・・・退屈している人妻が、リゾート地で小さな写真屋の若い青年を相手に火遊びをします。しかし、それは大きな悲劇のはじまりでした。ラスト近く、読んでいるこちらまで、ヒロインと同じように汗だくになってしまいます。
「真夜中になる前に」・・・教師の職を辞して、クレタ島へやってきたイギリス人男性。現地でアメリカ人夫婦と知り合いになりますが、彼らはなんだかいかがわしい雰囲気で・・・。
夜、主人公の部屋の外部から何者かが侵入しようとして鎧戸をがちゃがちゃ言わせるシーンが不気味で、読後も頭を離れません。
「美少年」・・・ベニスにやってきた学者が美しいウェイターの少年に心惹かれますが、そこから運命の歯車が狂ってゆきます。
天使のように美しい少年の親戚や家族が醜くいやしい人物たちばかりで、ぞっとします。

「裏面」アルフレート・クピーン。
ある大富豪によって中央アジアに建設された、「夢の国」。
その国に招かれた夫婦が体験する、地獄のような世界。

「氷」アンナ・カヴァン。
気象変動によって、氷に覆いつくされてゆく世界。
「私」と少女の逃避行。

「双頭のバビロン」皆川博子。
上海。ウィーン。双生児。ハリウッド。映画。
こう書いているだけで、わくわくしてきます。
皆川博子なので、おもしろくないわけがありません。
長い長い小説。
話の流れを頭の中できれいにまとめようなどと、そんな真面目に考えず、ただお楽しみください。

「別荘」ホセ・ドノソ。

「悪徳の栄え」マルキ・ド・サド。
これは、青い空の下で笑いながら読むのが正解だと思います。
ジュリエットが、夫の死によって転がり込んだ財産でイタリア旅行をするところが、大好きです。

「天国にいながら、ちょっと地獄を覗き見したくなったとき」にぴったりの本はまだまだありそうですが、今回は、ここまで。




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