希望

希望的な展望が見えているのというのに、
心は相変わらず鬱々としていく。
人が皆去っていき、
後には思い出だけが残る。
苦く、緑色のくぐもったざらざらした布のような思い出だけ。

手にはまだ感触が残っていて、それを感じようと手を手で触る。

あっという間に歳をとっていて、眺める景色は新鮮としていて、自分と世界の間に隔たりを感じる。

美しい生き物がそこにも、あそこにもいて、
生命力を輝かせている。

自分はくすんでいる。

音楽が流れる。音を聞く。音に刻まれた記憶が掘り起こされる。柔らかい白い幾重にも重なった新生児の皮膚のようなものが傷ついて赤い血が流れる。

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