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実用的な循環器内科のおすすめ参考書まとめ

初期研修医の先生から、おすすめの循環器書籍などを聞かれることがあり、初学者向けの循環器内科おすすめ書籍と学習に関してまとめておきます。


循環器病ガイドラインシリーズ


日本循環器学会が公式ホームページで公開しているガイドラインです。
なんとすべて無料で読めます。

循環器学会はガイドラインを全文無料で公開している数少ない学会のひとつであり、これを利用しない手はありません。私が後期研修医になってまずやったことは、すべてのガイドラインのダウンロードでした。

ディスカッションにおける前提知識は基本的にガイドラインとなります。まずは該当箇所を読んだうえでディスカッションに参加すれば間違いなく優秀な研修医です。

後期研修医であれば、ESC, AHAのガイドラインアプリもおすすめです。


循環器内科総論


初学者の先生にどれか1冊薦めるとすれば、極論で語る循環器内科を選びます。
循環器内科という領域をざっくりわかりやすく切り取って解説しており、概要を学ぶうえで貴重な一冊です。

もし循環器内科に興味があれば、循環器疾患の典型症例と非典型症例をまとめた白カルテ黒カルテが良書です。一つ一つの症例が細かく書かれており、勉強になります。疾患に対するイメージとして持っておくと、症例を経験したときの理解がより一層深まります。


心電図関連

心電図の学習方法

心電図に関しては、勉強をしようと思ってもどうやって学習すればわからず苦手意識のみ残ってしまう先生も多いかと思われますが、私はまず心電図所見はおおざっぱに2つに分けて読むよう説明しています。

  1.   洞調律下での心電図所見
    R波増高不良、異常Q波、ST変化などを所見です。これは身体所見と似ていて、循環器内医であれば細かく覚えることは大事なのですが、非専門医なら極論をいえば機械判定でも十分な気がします。
    緊急性を示唆するST変化所見(と可能であれば3束ブロック)を習得できれば最低限はクリアだと思います。

  2.  不整脈の心電図所見
    心房細動や発作性上室性頻拍、房室ブロックなどの洞調律でない不整脈全般です。心電図検査の真骨頂で得意分野であり、こちらは是非習得してほしい心電図所見です。

全部の心電図所見をマスターしようとするとゲンナリしてしまうと思うので、まずは下記の順番に学習するのがおすすめです。
① 洞調律とはなにか
② 心筋梗塞の心電図所見
③ 不整脈全般の心電図所見

そのうえで、余力があれば細かい心電図所見に手を付けるのが良いのではないでしょうか。

おすすめの書籍

心電図関連の書籍は極めて多いですが、心電図の読み方パーフェクトマニュアルは辞書的な一冊としておすすめです。古い本になってしまいましたが、基本的な考え方は昔からほぼ変わっていません。

ただ心電図の読み方パーフェクトマニュアルは分厚いため通読には向いていません。初学者向けの入り口になるような書籍は長らく適度な書籍がありませんでしたが、最近新しくEP大学から心電図の本が出版されました。新進気鋭の先生方の書籍だけあり、大変おすすめな内容になっています。


ほか初心者向けの実践的な心電図書籍としては、杉山先生の熱血講義! 心電図: 匠が教える実践的判読法、香坂先生のもしも心電図で循環器を語るならもおすすめです。実臨床に即した考え方で心電図をわかりやすく解説してくれます。

最近は不整脈学会主催の心電図検定などもあり、学習の成果を試す場として活用するのはありかもしれません。
ただ私は初期研修のときに1級を受験し合格しましたが、後期研修になっていかに心電図が読めないか思い知り打ちのめされました。。
あくまで腕試し程度と思っておくのがよいかもしれません。


生理学


もし循環器内科・循環に関与する診療科の先生方であれば、循環生理は勉強しておくとその後の理解が深まります。
勉強してもアウトカムに直結することが少ないため読まなくてもやっていけますが、生理学の知識があるといろいろな場面で応用が利きます。

しっかりやるのであれば、臨床にダイレクトにつながる循環生理が良書ですが、眠くなるのが難点です。田中竜馬先生も循環生理に関する本を出していますが、難しくなりがちなテーマをとても分かりやすく解説しており、初学者にとってとても参考になる本だと思います。

また古川先生の循環器のギモンは単純に読み物としても面白く、実際に疑問に思うところを基礎の視点から重点的に解説してくれるので、おすすめです。


抗不整脈薬関連


抗不整脈薬に関しては必ずしも循環器内科医だけでなく、非専門医でも例えば外勤などでも処方することがあると思いますが、心理的ハードルは高いのではないでしょうか。非専門医であれば、極論ビソプロロールさえ使えればよいとも思いますが、ある程度知識をつけたい場合は不整脈治療薬ファイルが実臨床に即してわかりやすく解説しており、村川先生の味わいある文章も楽しめ、おすすめです。

抗不整脈薬の薬理学はとっつきにくく眠くなりますが、比較的わかりやすいのが古川先生の本で、合わせて紹介しておきます。


まとめ


循環器のおすすめの書籍に関して紹介させていただきました。
カテーテル分野や心エコー分野もいい本はあるのですが、これらは経験の要素が大きく、実臨床で詳しい先生方から学んでからのほうが効果的かと思います。

あなたの研修が実りのあるものになれば幸いです。

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