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『科学技術の失敗から学ぶということ』過去の大きな失敗を知り、考える本

読んだ本。

科学技術の失敗から学ぶということ
(寿楽 浩太 著/オーム社)

過去に作られた建造物や機械などから、大事故など「失敗」の事例を取り上げ「なぜ起こったのか?」を詳しく解説した技術書。
中には20世紀前半のものから、昭和の後半~平成にかけて起こった、列車の脱線、原発のメルトダウン、スペースシャトル大破など、私の記憶に残る事例も数多くある。

失敗には必ず「原因」がある

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冒頭で語られる事例は、1930年代にアメリカで建設された「タコマ橋」。1940年の開通後、わずか4ヶ月で風にあおられ大破、見るからに設計ミスと思えるものだが「当時としては」間違っていなかった
そのメカニズムと原因を解説し「その失敗があるから今の建築技術がある」という話に繋がる。

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他の事例として、1986年にアメリカでスペースシャトルが打ち上げ直後に爆破した事故について、当時のNASAという「組織」にあった問題を解説しながら「別に、組織に『悪玉』がいたわけではなく、全ての人が全力を尽くしていた。でも起こったのはなぜか?それを起こさないためにはどうするべきか?」を語る。

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1997年、ジャンボジェット機の事故で乗務員1名が亡くなる事故が起こり、原因の一つに「パイロットの習熟が不十分」と機長が罪に問われたことについて、ヒューマンエラーを罪に問うべきか?だからといって、人が亡くなっているのに「誰も悪くない」で済ませられるのか?その問題に対して考えるべきことは何か?と解説する。

失敗にはメカニズム・人と組織・規則や法律など様々なものが、場合よっては複数もしくは全てが関係する、それに対してどうするべきか?まで語られる。

失敗を知ることと、考えること

本書で挙げられた事例の中には、私も当時のニュース等で見たので覚えているものも多かったが、その詳細を改めて知る機会となった。

その上で感じたことは、失敗には全て「原因」が必ずあるということ、その原因には必ず「人」が関わっていること、でもその原因や問題を全て解決するような完全な正解はないこと(あれば事故がなくなるわけで)。
その原因を詳しく解説し、人が関わるからこそどう捉えるべきか、どう考えるべきか、どう解決するべきかという、正解に近づけるための見方や方向性を唱えている。

失敗を知る、そして考える機会となった、実に読み応えのある本だった。

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