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『Moon Dancer』ロックオンレーザーが魅せる「スピードと破壊」のSTG

『Moon Dancer』は「ロックオンレーザー」を主体とした、縦スクロールシューティングゲーム(以下STG)だ。

Steamストアページ『Moon Dancer』
公式サイト「Moon Dancer」 - TERARIN GAMES

画面上に膨大な数のレーザーを放ち、瞬時に敵を大量破壊する。破壊のエフェクトと共に、立て続けに鳴り響くロック音・発射音・破壊音が鳴り響き、スコアが跳ね上がっていく。そこで味わう絶大な爽快感、それがSTGにおける「ロックオン」攻撃。
本作は、そんなロックオンの魅力を存分に味わうことができる。

本作のデベロッパーは「TERARIN」氏。個人制作の元、これまでに数本のSTGをリリースしている。

Steamデベロッパー『TERARIN GAMES』

作品の多くで、ファミコンの色彩を再現したドット絵の映像(後に発売されたNintendo Switch版は大幅に強化されている)、ゲームの随所に過去のSTGをモチーフとした場面を挿入するなどの特徴がある。

中でも『MissileDancer』は本作と同じ「ロックオン」によるミサイル攻撃を主体としたゲーム。タイトルも『MissileDancer』に対して本作は『Moon Dancer』と、繋がりがあるようなネーミングとなっている。

あえてロックオンを主体としたゲームを再びリリースする。そこで見せた独自の魅力、そしてSTGの魅力とは何か。

スピードを味わい、乗り越え、スピードを制する

プレイヤーの武器は「ショット」と「ロックオンレーザー」。ショットは前方と斜め4方向に撃つ5WAY、レーザーはターゲットに照準を合わせて発射、自動追尾してダメージを与える。

レーザーは3種類、高速かつ軌跡でもダメージを与える「スピナー」、攻撃力が高い「ナパーム」、360度全方向にロックできる「マルチ」は、ゲーム中に出現するアイテム取得で切り替えできる。
他にも、パワーアップアイテムを取得することでショットのみ4段階まで強化する。

操作はレバーと1ボタン。コントローラーでどのボタン・トリガーでも、押しっぱなしでショットを撃ち続け、ロックオン時に「押す」「離す」「2つ以上押す」でレーザーを発射する。
例えば、ショットを撃ちながらロック時に「ボタンを離す」もしくは「ボタンを2つ以上押す」でレーザーを発射、ショットを撃たずにロックして「ボタンを押す」でも発射する。

つまり、ショットとレーザーを「1ボタンで」「2ボタンで両方」、また「レーザーのみ1ボタン」の全てが可能になる。

ステージは、月を背景にした宇宙空間の戦闘から始まり、土星では無数の岩石が飛び交うアステロイド地帯、地球の大気圏を突破して雲の間を突き進む、太陽では炎が舞うなど、太陽系の惑星を舞台に、あらゆる場面を超えながら敵の本拠地へ進む。

それらが高速に、ステージを駆け抜けるように突き進み、敵が次々と出現して攻撃を仕掛ける、それを連続でロックオンして次々と破壊する。
スピーディーかつスマートに破壊する爽快感、この「スピード」が大きな魅力だ。

だが、そのスピードが逆に「壁」でもある

ボス戦などでは動きの中で突然制止してレーザーを放つ、流れに逆らう動作でフェイントをかけるなど、スピードを逆に利用した攻撃も多い。しかもミスすると直前の位置まで戻ってやり直し。残機やコンティニューでゴリ押しはできないので、難易度は少々高いと言えるだろう。

そのスピードに対する攻略は、いかに武器を使いこなすかだ。

レーザーは「マルチ」を使えば真横や後ろから攻撃したり、ボス戦では「ナパーム」の攻撃力を利用するなど、場面に応じたものがある。武器が出現する場面と種類は全て決まっているので、まずは特性とパターンを知る
敵の攻撃に対しても、誘導ミサイルなどはショットで破壊できるので、撃てば道は開ける
敵を倒せば撃ってきた弾と共にポイントターゲット「クリスタル」に変わる、先制攻撃で敵の攻撃を抑えることにもなる。

知る・撃つ・攻める。まさに「攻撃は最大の防御」、それがスピードを制する手段だ。

前作『MissileDancer』は、360度全方向から来る敵をロックオンのみで破壊する戦略を求められたが、本作は攻めてスピードを制する、そこで味わえる魅力がある。

STGが持つ、もう一つのスタイル

その中で、本作はもう一つの姿がある。画面右側で常に表示されている「スコア」で限りなく高い数値を目指す「ハイスコア」を求めれば進行が大きく変わることだ。
これは本作に限らず、STGそのものの魅力とも言える。

ロックオンレーザーによる攻撃は、途切れることなく(約2~3秒間。画面左にメーターで表示)連続で行うとチェインボーナスとして、加算されるスコアが×2、×3…と次々と上昇してスコアが跳ね上がる。ただし、ショットを撃ち続ければレーザーを当てる前に破壊してしまうので成り立たない。
更にポイントターゲット「クリスタル」は、ステージクリアするとスコアとして加算されるが、途中でミスすると取得数がゼロに戻される。

だからハイスコアを目指すなら、ショットを最小限にとどめて多くの敵をロックオンレーザーのみで、チェインが途切れないようにタイミングを合わせて破壊する。ショットを撃たないから敵の攻撃は避けるしかない、それをノーミスで行わないといけない。
プレイヤーが何を目指すか、その意識だけで限りなくストイックで高難易度のプレイスタイルに変わる。それがSTGにおける楽しみ方の一つでもある。

本作はその楽しみ方を、ショットボタンの「押しっぱなし」から「タイミング押し」に変えるだけ。「スピードと破壊」の爽快プレイと「ストイックに高得点」の高難易度プレイ、2つのスタイルを1ボタンの押し方だけで味わえる

本作は更に、ハイスコアを追求した「キャラバンモード」も搭載されている。

制限時間は3分、その間に本編よりも遙かに多くの敵が襲いかかる、何度ミスしてもいいが時間とボーナスをロスする、その中でいかに高得点をマークできるかを競う。ネットランキングにも対応しているので、本作の「全プレイヤーの中で1位」を狙うことも一つの楽しみだ。

本作に限らず、TERARIN氏のゲームでは常にこのモードがある、常に2種類の楽しみ方が備わっている。

「あえて」で構成されたプレイスタイル

本作は、主に次の特徴がある。

  • あえて色数が限られたドット絵で描く。

  • あえてロックオンのスタイルを持つSTGを再びリリースする。

それに加えて、

  • あえて5WAYショットとロックオンレーザーという、攻撃力の高い武器を2つ装備する

  • あえて2種類の武器を1ボタンで操作する。

  • あえてミスすれば戻されるゲームシステムを採用する。

と、様々な「あえて」があるが、それが独自の戦略と自由なプレイスタイルに繋がっている。
「あえて」の理由、そして前作との違いはそこにある。

「撃って破壊」に対する楽しさ、「攻略」に対する挑戦、「スコア」に対する追求、それがSTGの魅力だが、本作はその全てが備わっている。
まさに、STGらしさを引き出したゲームだ。

追記・Steamレビュー

同様の記事を、Steamレビューにアップしました。本記事の短縮版となります。


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