見出し画像

日本物産が見せた驚異と快感『チューブパニック』

80~90年代に発売されたアーケードゲームを家庭用ゲーム機に移植するプロジェクト「アーケードアーカイブス」として、4月に発売されたタイトルが、日本物産のゲーム『チューブパニック』だ。

これは、3D映像を駆使したシューティングゲーム。内容は、敵をショットで破壊しながら、前方に突き進んでゴールを目指す。作はレバーで左右移動と加減速、ボタンでショット。とにかく進め、撃て。というシンプルなもの。

画像1

ゲーム開始直後の1ステージ目は、果てしなく広がる大地の前方から障害物が次々と近づいてくるのを撃ちまくる。それだけでも、スピード感と破壊の爽快感を味わえるが、本作の特徴は2ステージ目以降。その大地がチューブ状になり、地面も天井も360度繋がる。

レバーを左右に移動すると背景が高速に回転する。画面上方にいた敵がぐるりと回転して目の前に来る、そしてショットを撃ちまくって次々と破壊する。
それはまるで、ジェットコースターに乗ってアクロバット走行を味わうような感覚で、めまぐるしく動く映像に度肝を抜かれた覚えがある。

本作の発売は1984年。当時のコンピューターは性能的に、キャラクターなどを3D処理して映像に映し出すというのはかなり高度な技術、中でも画面が回転するものは、日本のゲームでは本作が初めてだったそうだ。
そんな映像が高速で滑らかに流れるのは、驚異的で夢のようだった。

と言っても、それまでにも82年の『ポールポジション』や83年の『ジャイラス』、翌年の85年には『スペースハリアー』が発売されるなど「驚異の3D映像」と言わんばかりのゲームはあった。
その中で本作は、ゲームセンターで見かける機会は少なかった、いささかマイナーな存在だったと記憶しているが、他の3Dゲームで味わえないものがあったと思っている。

映像だけではない、ゲームの魅力

本作で、プレイ中に高得点を得てハイスコアを目指すには「敵の破壊」か「突き進んでステージクリア」という2つしかないが、そこから面白さを引き出すために「パワー」という数値が影響する。
これはレースゲームなどの「残りタイム」に近いもので、ステージを開始してから時間とともに数値が減少し、クリアすると残りパワーがボーナスとして加算される。

画像3

だから、高得点を得るにはスピードを上げて短い時間でステージクリアする、もしくは出現する敵を次々と破壊していくこと。更にその両方、敵の出現パターンを覚えて自機を操作して「全速力で突っ切って敵を次々と破壊」が実現すれば、連続破壊の爽快感と高得点という2要素を得ることができる。

ただし、敵は休む暇もなくプレイヤーに突っ込んでくるので、深追いしすぎると正面衝突する。更に破壊できない障害物も出現するので「撃つ」だけでなく「避ける」ことも必要になる。ステージを進むと敵と障害物が混合され「撃って避ける」操作も要求される。更に進むと数が増えて様々なパターンでプレイヤーに襲いかかる。

つまり、ゲームで「爽快感」と「高得点」を得るには「危険」というリスクも増えていく。だが逆に、それが「スリル」にも直結する。
そんな、迫力・スピード・スリル・破壊・高得点の快感を兼ね備えている。それが本作の魅力だと思う。

私が思う、日本物産らしさ

画像2

アーケードアーカイブスのタイトルには「中断セーブ機能」という、どの場面であろうとゲームの状態をセーブして、ミスしてもまたやり直せる機能があるので、それを使って何とかクリアした(しかも形としてはノーミスになっている)。
そのようなプレイでも、後半や最終ステージの攻撃は凄まじくてスリルを味わえたり、当時のゲームセンターで実現できなかった夢を叶えることができて、感無量だった。

日本物産と言えば、80年代にアーケードゲームなどで活躍したメーカーの一つであり、主に麻雀ゲームでも有名だが、私にとっては、STGやアクションゲームのメーカーとして好きだった。

これは、あくまで私個人の印象に過ぎないが、日本物産のゲームは大きく分けて、80年代前半と中盤以降でスタイルが分かれていると思う。
前者は、1980年『ムーンクレスタ』『クレイジー・クライマー』など、全く新しいアイデアを盛り込んだゲーム。後者は、85年の『テラクレスタ』『マグマックス』など、スクロールSTGといった構築されたシステムを活かしたゲーム

私はそのどちらも好きだが、この『チューブパニック』は、3D STGというスタイルを使って、回転画面という新しい技術を投入したり、迫力やSTGとしての楽しさを大きく引き出してくれた、まさに後者の日本物産を見せるゲームだったと思う。

サポートは大変ありがたいですが、Twitterを始めとするSNSなどで記事をご紹介いただければ、それも大変嬉しいサポートです。