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『BulletGarden』300種類の武器と「撃たない」操作、「異端」であり「正統派」でもあるSTG

白・黒・赤の3色のみで描かれるドット絵の映像、80年代ゲーム機を再現したサウンド。その中で、プレイヤーが装備できる武器は300種類という特徴を持つ、縦スクロールSTG『BulletGarden』。

Steamのストアページで概要とプロモーションムービーを見ると、滑らかに動くドット絵のアニメーションやバックに流れるリズミカルな音楽など、シンプルのようで細部にわたる作り込みと驚異的なボリュームが見える、そこに軽い驚きがあった。

だが、私が実際に触れたときの感想を、包み隠さずに言おう。

本作をプレイした第一印象は「意味が全く分からない」だった。

その理由として、私は本作を「縦スクロールSTGという認識で触れた」から、STGとはあまりにかけ離れた作りについて行けなかった。
それは逆に言えば、本作にはSTGの概念を大きく覆そうとする意図が見える。

過去に数多く発売されたスクロールタイプのSTG、その概念やスタイルを引き継いだものを「正当派」と呼ぶなら、本作はその真逆「異端」の位置にある、それが特徴と言える。

STGとして「異質」の姿

本作には数種類のゲームモードがあるが、メインとなるのはトップメニューの「NEW GAME」から「SELECT GEAR」を選んでスタートするもの。

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ゲームを始めると、画面上に数多くの敵、空中を浮遊しながら突然プレイヤーめがけて突っ込んでくるもの、円を描くように動きながら近づいてくるもの、攻撃してこないブロックなど様々なものが出現するが、その種類はランダムで、何が来るかは常に分からない。
ゲームの進行は、ステージのボスを倒してクリアといったものではなく、エンドレスでひたすら突き進むのみ。そして敵の攻撃を1回受けた時点で即ゲームオーバーとなる。

それに対して、プレイヤーが使用する兵器(ゲームでは武器を『兵器』と表現している)は、ショットだけでも弾道が異なるものが数十種類、他に誘導弾、レーザー、爆裂弾、ミサイルなどSTGで見かける定番のものから、レバーで「弓」を引いて矢を飛ばす、画面上に魚や虫が飛び交って敵を蹴散らしていく、画面上を「水」や「霧」で満たすなど、一見効果が不明なものまで300種類用意されている。
初期設定では、その中から2種類が「ランダムに装備」されるので、どんな攻撃ができるか分からない。

操作はレバーと移動と1ボタン、ショットは何もしなくても自動で撃ち続ける。ではボタンの役目は?というと、押す間だけ攻撃を停止する「撃たない」ためのもの。
ゲームとして、STGの「撃って敵を破壊」という爽快感はほとんどなく、ショットなどで敵を狙い撃ちする攻撃が主となる。

攻撃方法や操作など、あらゆる要素がSTGの概念とことごとく異なるため、初めて触れたときは意味が分からなかった。更にプレイを続けても、撃って破壊という感触が薄い、エンドレスでクリアがないなど、何が目的?何が魅力?というより、何をさせたい?それが全く分からない。

そのような状態に戸惑いながら、見えないものを手探りで追い求めていくと、ゲームの概要、そして「異端」の姿が少しずつ掴めてくる。

全ては「音楽」と「変化」に委ねられる

プレイを続けていくと見えてくる、本作で重要な要素の一つは「音楽」。バックに流れる音楽は、ゲームのあらゆる要素と密接に繋がっていること。

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敵の攻撃は、音楽がちょうど16小節流れるたびに切り替わって難易度も少しずつ上がる。ゲームではそれを「WAVE」と、ステージの意味で表記されている。
また、プレイヤーが自動で撃ち続けるショットも全て音楽のテンポに合わせて放たれる。更に「撃たないボタン」は、兵器によっては音楽のテンポに合わせて押すと発動するという「発動タイミング」の役目も兼ねている。
それを利用して、発射のタイミングに合わせて敵の前に移動するなど「聴きながら攻撃」することが攻略の一つとなる。

そして兵器のシステムと攻略方法。

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敵を倒すと「パワーアップアイテム」が出現することがあるので、それを一定数取るたびに、一度に装備する兵器の数が3・4・5種類まで増える、それがパワーアップに相当する。
敵の攻撃は時間、というより音楽と共に激しくなるので、プレイヤーも攻撃力を上げて対抗していく、それが基本的な進め方となる。

その中で、ショットを撃つ動作、ステージと敵の変化、パワーアップに至るまで、あらゆるものがプレイヤーの意思に関係なく自動的に行われる。そのめまぐるしい変化に対して、いかに適応できるかが攻略であり、更にそれを越えて「変化を楽しむ」ことができるか、それがプレイ継続に繋がる。

変化の更なる方向性

本作の特徴となる、あらゆる要素がめまぐるしく移り変わる「変化」について、更に追求した要素が3つ設けられている。

変化を征する「カスタマイズ」

初期設定ではプレイヤーの兵器がランダムに選択されるが、これを自分でコントロールすることもできる。

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ゲーム中に敵を破壊すると、パワーアップアイテムだけではなく「シード(種)ポイント」が出現する。それを溜めて、メニューの「PLANTER」で兵器を生成し「カスタマイズ」で組み合わせを選ぶ。
ただし、生成される兵器の種類もランダム。例えるなら「お金を貯めて兵器生成ガチャを引く」という感覚。

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カスタマイズはスタート時の2種類装備、パワーアップして3・4・5種類装備した時とそれぞれ組むことができるが、300種類の中から選ぶのは容易ではない。
最初はランダムに切り替わる兵器を使いながら機能を把握し、無限とも言える組み合わせを考えて試していく。何度もプレイして、兵器の装備とプレイ感覚を構築していくことがカスタマイズの楽しみ方だ。

更なる変化を楽しむ「QUICK START」

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トップメニューには「QUICK START」という項目がある。これはパワーアップのレベルに関係なく、一定時間ごと(敵が切り替わるタイミングと同時)に兵器が無条件で切り替わるモードだ。
次々と変化する敵と兵器、それにどこまで適応できるかに挑戦すると共に、300種類の兵器を一度に数多く体感し、更にその変化を楽しむ、そんな追求ができる。

「変化しない」という壁に挑む「MISSION MODE」

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「MISSION MODE」は、各ステージごとに設けられたミッションを遂行する、このモードのみ「クリア」の要素と、その先に「ボス戦」も存在する。
そのミッションは、例えば「ツインショットのみでスコア5000点を取れ」「兵器は無し(つまり攻撃できない)、避けるだけでWAVE 5になるまで耐えろ」など、決められた兵器のみで挑戦する。
中には「シードポイントを4つ取得せよ、ただし装備する兵器は、それすら破壊してしまう強力ショット」という、かなり意地悪なものもあるが、ここで「撃たない」ボタンをいかに使いこなすかがポイントとなる。

「変化」に対して、プレイヤー自身の手で征する、更に追求する、しないという壁、その3つの方向性が更なる楽しみ方だ。

異端は「正当」から作られる

それらの要素から見えてくること。
本作のシステムはどれも特殊ではあるが、STGの要素とかけ離れているのではない。むしろ、正統派と言えるSTGの要素を組み込んだゲームであることだ。

先に挙げたとおり、STGにおける「ステージ」は音楽と時間の経過で決まる、ボタン操作は「撃たない」と「タイミング」と2つの役目がある、「パワーアップ」は兵器の装備数によって成立するなど、これらはSTGの要素を別のものに置き換える「代替」として設けられている。

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またゲーム中、画面の中央に飛んできて制止・方向を変えてまた飛んでいく敵、トンボが飛び交う兵器など『エグゼドエグゼス』に見られたものが出現する。更に兵器には『バトルガレッガ』の複葉機や、カスタマイズメニューのアイコンに『グラディウス』に似たデザインがあるなど、過去のSTGをモチーフにしたものが随所に見られる
本作にはシステムから細部に至るまで、そんなSTGとしての要素が詰め込まれている。

「異端」とは正当から外れた、全く異なるものとして呼ばれるが、それは正当を知るからこそ外れることができる。そして「敵を撃って破壊する」と「プレイヤーの意思と操作がゲームに反映される」それがSTGの正当、最も基礎でもある。
本作はSTGの要素を引き継ぎながら、その正当をあえて外すという、基礎から壊していこうとする意図が見える
それが本作から見える「異端」の姿であり、魅力と言える。

追記:Steamレビュー

この記事の編集版を、Steamレビューにアップしました。


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