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『EGGコンソール シルフィード』で味わった「3DスクロールSTG」という衝撃

過去のパソコンゲームを復刻するシリーズ「プロジェクトEGG」のコンシューマー版「EGGコンソール」として発売されたタイトル。

Nintendo Switch『EGGコンソール シルフィード PC-8801mkIISR

シルフィード』とは、当時のパソコンである「PC-8801mkIISR」向けのゲームとして、1986年にゲームアーツより発売されたシューティングゲーム(以下STG)。
宇宙を舞台に、地球連邦軍に反乱する組織のリーダー「ザカリテ」に立ち向かうべく、1機の戦闘機のみで戦艦「グロアール」の破壊を目指すというストーリー。3Dを駆使した映像と、弾を避けてショットを撃ち込むスピーディーなアクション要素を詰め込んだゲーム展開は、当時のパソコンゲーマーの心を掴み、現在でも名作の一つとして語り継がれている。


「新しい世界」を今発売すること

本作の発売は1986年12月。その年に発売されたゲームとして、アーケードのSTGでは『スクランブルフォーメーション』『サイドアーム』などスクロールタイプのものが多く、パソコンゲームでは『アルファ』『クルーズチェイサー ブラスティー』など、アニメーションを導入したり映像を見せるものが増えつつある時期だった。

ちなみにゲーム機では、ファミコンで「ディスクシステム」が発売された年で、『ゼルダの伝説』『悪魔城ドラキュラ』『メトロイド』、カートリッジでも『ドラゴンクエスト』という、現在でもシリーズが続く大作の初代がこの時期に登場している。

ただいずれも、その時代に「3D映像のSTG」というものは少なかった。
そもそも当時のコンピューターで3Dは高度な処理速度が要求されるため、ゲームに活かすのは難しく、速度を犠牲にして3Dを実現したキャリーラボの『ジェルダ』や、キャラクターで3Dを仮想的に描いたセガの『ザクソン』dB-SOFTの『ゼクサス光速2000光年』など工夫を凝らしたものがあった。

その中で、本作が見せてくれた3D映像は衝撃的だった。
斜め後方視点で奥行を描いた映像を用いることで、遠方の敵やターゲットに対する距離感と迫り来る緊張感を持たせる。それが高速に動くことで、弾避けやショットの撃ち込みなどスクロールSTGの要素を実現する。
このような「3DスクロールSTG」というスタイルは、全く新しいジャンルと言ってもいいものだった。しかもSTGを実現するにはアーケードやゲーム機より不利と思われていたパソコンで。

本作はそんな「映像と技術力で全く新しい世界を見せてくれた」という衝撃があった。

実現した「理想の環境」

その後『シルフィード』のタイトルとしては、後にメガドライブやPS2、Xbox360などのゲーム機で発売されているが、いずれも同作の流れを組んだ別作品となる。
パソコン版の純粋な移植は、書籍の添付CDとして発売されたものや、定額制のPCゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」のタイトルくらいしかなかった。しかも、パソコンゲームなので基本操作はテンキーという、STGには少々厳しい環境だった。
そのため、今回はコントローラーが標準操作のゲーム機に移植という、ついに理想的な環境で発売されたと言える。

再び味わった難易度、新たに味わう感動

ただ、私が当時所有していたパソコンは「PC-8801mkII」で「SR以降」と分類される機種に対応の『シルフィード』はプレイできなくて(※)、前述した書籍の添付CDで初めて本作に触れた。

※補足)「PC-8801」と、その後に発売された「PC-8801mkIISR」では性能が大きく異なる。EGGコンソールのタイトルでも「PC-8801」と「PC-8801mkIISR」と対応機種が異なるため、音楽などに大きな違いがある。

でもその時は、難易度がかなり高くて1ステージのクリアも難しかった。

道中に出現する敵はプレイヤーめがけて高速で突っ込んでくる、ボス戦では弾と正面からミサイルやレーザーが次々と撃たれる、それをダメージを受けずに避けるのは極めて難しい。
ただ、敵の動くパターンは全て決まっているので、それを把握して事前に回避すれば…そんな余裕がないくらい次々と出現して突っ込んでくるので、スピードにどこまでついて行けるかというプレイヤーの能力が問われる。

それに対して私は…、ついて行けなかった。

37年越しのクリア

でも今回の移植では、どの場面でもセーブして再開できる「どこでもセーブ機能」を使って各ステージの開始前にセーブ、ミスしても数秒前まで戻せる「巻き戻し機能」を使っていた。それでも「いくら巻き戻してもノーミス突破は不可能だろ…」という場面に何度か出くわしたが。

また、本作は5エリアごとに、画面いっぱいに惑星と時期が現れるデモを見ることができる。当時はそこまで到達できなくて見るのが叶わなかったものを味わう。

その結果、クリア。通常のプレイではなかったものの、発売当初は触れること自体が夢だった『シルフィード』を、実に37年ごしで全て体験することができた。

私にとって過去ゲームの移植は、当時できなかった「夢を叶える」機会でもあるかもしれない。


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