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「一人称」 写真を組む009

そもそも組写真って?

 組写真とは、何枚かの写真を組み合わせることです。組むことでドラマを表現するものであって、一枚のなかにドラマを詰め込む単写真とは撮り方も違ってきます。テキストをつけないとストーリーと呼べるほど複雑な状況を説明しづらいですが、写真を組むことで状況の「流れ」は創れます。

一人称で語る

 今回は撮り手が「主人公」になって、あたかも一人称小説の様な語り口で組んでみましょう。

 とある隠れ家的な喫茶店に行って、珈琲を頼んで飲み終わるまで、ほんの30分くらいで撮ったなかから組んでみます。

 行きがけに薄暮の残光が美しかったので押さえておきました。どちらかというと、店を出たあとのラストに使えるかと思って撮っています。撮影した順番と組んだあとの並び順は、ノンフィクションのドキュメントでない限り前後が入れ替わっても問題ありません。

狩り組みしてみます

 店内の様子と、テーブル上の情景、カップのアップなど取り混ぜて50枚弱ありますが、適当に選んでダラダラと取り留めもなく並べてみます。

 注文した珈琲がサイフォンでつくられ、フラスコごとテーブルに出され、猫が描かれたカップを持ち上げると、ソーサーにも猫が描かれ、飲み終えたカップの内側にライオン(ネコ科)が描かれているという、猫づくしなのが面白みだと思って組みました。でも、長ったらしいですよね。

五枚で組みなおす

 五枚組であれば、この程度の写真でも飽きずに見て貰えるかと思います。一枚ごとに変化もあるし、時間経過を表現しようとしていることが、優れた読み手には御理解いただけるんじゃないかと思います。

 ただ、どう見られるかは読み手の感性と能力とに期待せざるを得ません。ようやく絵本を卒業したくらいの幼児は、コマ割りされたストーリー漫画の読み方がわかりません。コマが進むごとに時間が経過したり、場所の移動があったりする「変化」についていけません。なぜかというとフキダシの字が読めないので絵面ばかり見て、コマの順番も無視して、カッコイイと思ったコマに目が行ってしまうからです。

どう見られるかは読み手にもよる

 ギャラリー写真展で、特にテーマを掲げた個展の場合は、展示の順番にも工夫が凝らされており、あれも一種の組写真だと思います。

 あるいはアイドルの水着写真集でも、ちゃんと台割があって全体の流れがあるわけですが、多くの人が私服カットを飛ばして水着ばかりを見ていたりしますよね? そういう読み手にとっては、「流れ」も「繋がりも」あったもんじゃないんですよ。篠山紀信みたいな巨匠と呼ばれた人の写真集でも、飛ばし読みされちゃうんですから、ド素人の写真を順番どおりに十枚も見て貰えるわけないじゃないですか! だから五枚で組みました。

 ちゃんと流れや繋がりを酌み取れた読み手は、優れた感性を持っていると私は思いますね。

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