虎の穴みたいな講座を受けた修業時代 その3
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2003年3月から、月に一度ずつ、スパルタ式などという生易しい言葉では足りないくらいキビシイ講座に参加していました。
その講座は、いきなり受講者に撮影させるところから始まります。
それぞれの受講者は一人あたり3分の持ち時間でモデルを撮影し、直ちにパソコンで写真を選び出し、組み写真をつくったうえで講評を受けました。そこで散々ダメ出しを喰らうのです。
虎の穴みたいな組み写真の講座について、恐れ入りますが「その1」から順番に読んでいただかないと、意味が通らないかと思います。面倒臭いなとお思いの皆様は、ココからUターンお願いします。
もし「順番に読んでやるぜ」という奇特な方がおられましたら、コチラのマガジンから辿っていただくのが宜しいかと存じます。
驚愕しかなかった初回
とあるネットアイドルが愛猫を亡くして意気消沈していたところ、彼女の個人サイトの掲示板に、彼女が元気に笑っている写真が一枚貼られました。投稿主のHNは「写真屋」で、貼られた写真はプロが撮ったとしか思えないクォリティーでした。
その一枚の写真から「元気を出せよ」というメッセージが伝わってきて、言葉で表せないほど胸に迫るものがありました。写真には「思いを伝える」力があることを、ハッキリ示していたのです。
その写真屋と名乗る人から「講座を開くことになった」と案内のメールが届いたので参加してみたのが、虎の穴みたいな講座だったのです。写真屋と名乗る人の正体は、かつて斉藤慶子さんの水着グラビアを撮った写真家で、斉藤慶子さんの水着姿は私の目に焼き付いているほど鮮明に覚えています。その写真を撮った先生と、ネットを介してではなく、オフラインで御尊顔を拝することが出来るだけでも光栄なことでした。
初回の受講者の顔ぶれもスゴイ。
参加者百人規模の大撮影会で、モデルに声掛けしてポーズを指示する様な古強者がゴロゴロいたし、各自持参したカメラもプロが使うようなフラッグシップがズラリと並んでいました。おそらく腕自慢でドヤ顔したくて講座に参加していた人もいただろうと思います。
しかし、この組み写真を学ぶ月に一度の講座は、そうした猛者たちでさえ面喰らうような内容でした。
最初に講師が「こう撮りましょう」と教えて、真似して撮るような講座を想定していたので、私も、いきなり「好きに撮りなさい」と言われたときは大いに驚愕しました。
組む以前の問題
有無を言わさず、いきなり「撮れるだけのバリエーションを撮れ」という課題が出されました。持ち時間は、たったの3分です。
他の受講者が撮っている脇から、邪魔にならないように撮るのは構わないというルールが示されたので脇撮りで撮ってみましたが、まるで大撮影会で撮ったかのような、しょうもないのが撮れました。
こんなのは組む以前の問題です。
あいにくの天候で、私の順番が回ってきた頃には雨になり、スタジオでの撮影になりました。組み写真を制作するためには、屋外とスタジオとで場面転換が必要になりますが、写真を組むことの意味さえわかっていない初回でソレは無理な話です。
バリエーションだけは考えていた
類似カットをズラズラ並べても見せられる側はツマラナイだけでしょう。かろうじて、ソレだけは当時の私も理解していました。スタジオの布背景で立ちポーズを無難に撮って「はい、講評お願いします」では済まされないと最初から察していたので、膝立ちだの座りだのを撮ってます。イヤ、それにしたところで、工夫は全然足りてません。面白くない。
得意のオヤジギャグで、営業スマイルじゃない表情を引き出そう努力してみましたが、たいして良い結果には繋がりませんでした。
巨大な面光源の脇に斜め向きに立って貰い、白飛ばしにして撮りました。表情も活き活きとしていて、オヤジギャグが通じたのですが、布背景からの場面転換をどうするかが思いつきませんでした。
この面光源はスタジオに常備されている、大型ストロボを仕込んだ特大のライトボックスなんですが、このときはストロボを発光させず、モデリングライトだけで撮りました。
ハタと思いついて、垂れ布を巻き上げて白背景に。スタジオで最も費用が嵩むのは白背景なのだそうです。少しでも汚れると再塗装しなければならず手間もかかります。そんなこととは露知らず、面光源脇で撮った白飛ばしに繋がるカットを撮ろうとしていたのでした。
講師は業を煮やして
私の持ち時間が残り1分というところで、講師が介入してきました。
アレよいう間にスタジオマンが籐椅子を運び込み、講師からモデルさんにポーズの指示が出ます。その間もタイマーは止まらなかったので、どんどん時間は過ぎていって、のこり10秒くらいで、とにかく工夫も考えもないまま撮ったのがコレでした。
組むとか組まないとか以前に、ツマラナイ写真ばかり撮っている参加者に業を煮やし、介入してきたのです。そこで、プロの手際の一端を垣間見て、なぜ座学をやらずに「好きに撮れ」というのかがわかりました。
教える側と、教わる側との力量が桁違いで、たとえ教えたところで猿真似にしかならないからでしょう。プロの手法を換骨奪胎して自家薬籠中の物にできる素人なんて、そこら辺にいるわけが無いのです。
単写真ならマグレということもあります。奇跡の一枚が撮れるチャンスは誰にでもありますからね。組み写真だとそうは行きません。
草野球に喩えると、全打席で考えなしに振り回し、ホームランだけを狙う打者ばかりというチームもありますが、それが単写真で奇跡の一枚ばかりを狙っているアマチュアとかぶります。
組み写真は、あるいは送りバントであったり、犠打を狙って高くフライを打ち上げたり、コツコツと点を稼いでいく感じです。ベストショットを順に並べたって組み写真にはなりませんからね。
そういう視野の違いもあれば、写真を組むことで何が表現出来るかということさえ、このとき集まった受講者にはわかっていませんでした。
私の個人撮影に割り込んでくることに
講師は、アマチュアとの力量の差や感覚の違いが、思った以上に大きいと感じたようでした。そして、なぜアマチュアが、こんなにショボい写真しか撮れないのか、現場を実見してやろうということで、私がネットアイドルを撮影するとき、一緒に撮らせて欲しいと申し入れてきました。
かつて斉藤慶子さんのほか、著名なアイドルの水着グラビアを撮っていて現在も現役バリバリのプロが、「一緒に撮ろう」なんて言ってくれるとは、人生に二度とは無いことでした。その話は、また別の記事で御披露します。
おわりに
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