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「繋がり」 写真を組む003

そもそも組写真って?

 組写真とは、何枚かの写真を組み合わせることです。組むことでドラマを表現するものであって、一枚のなかにドラマを詰め込む単写真とは撮り方も違ってきます。テキストをつけないとストーリーと呼べるほど複雑な状況を説明しづらいですが、写真を組むことで状況の「流れ」は創れます。

流れを創る「繋がり」

 水路が繋がっていないと水は流れません。繋がりがない写真は何枚か展示されていても、流れはありません。それぞれが一枚だけで完結しているので止まった水を溜める池のようなものです。

 写真を組むことは流れを創ることであり、流れを創るためには「繋がり」ということが大事になります。

ベストショットの羅列でなく

 この二枚は画像庫の2020年12月7日撮影分で、その日のベストショットを選び出したものです。同じ日に、さほど離れてはいない場所で撮りました。しかし、この二枚の変化は大きすぎて繋がりません。キャプションを添えて言葉の力で繋げることは出来ますが……

 写真は言葉を用いずに人の思いを伝えることが出来ます。

 撮った人の話す言葉が一言も理解できなくても、写真から伝わる情景には何故そこでシャッターを押したのか「意図するところ」が酌み取れますから無言のままの方が「写真らしい表現」だと思います。

写真で説明する

 上に掲げた二枚は、距離にして数百メートル、時間にして三時間くらいの隔たりがあります。それを判っているのは撮影した本人だけなので、写真を組むことで場所と時間の移動を表現してみましょう。

 まず「はじめ」の一枚は菜の花のアップです。一枚目と二枚目は菜の花で繋がって、二枚目で場所が遊園地であると説明されます。

 二枚目と三枚目とは観覧車で繋がり、日が落ちてきたことを説明します。

 三枚目と四枚目は夕陽で繋がり、水平線に日が沈みます。

 四枚目と五枚目は空の赤みで繋がります。

組むことで伝えたいこと

 天気の良い日に遊園地で半日を過ごし、帰りがてらに美しい残光を見て、単写真では時間の経過を表現しづらいので、歩き回った半日の様子を五枚の写真で表してみようというのが「組むこと」の目的です。

 真ん中に挟んだ三枚については、自分でも「たいして良くない」と思っておりますが、状況を繋ぐための「働き」があります。野球にたとえるなら、ノーアウトで出塁した走者を手堅くバントで送り、犠打で一点をとるような感じです。単写真でコンテスト入賞を狙える力量のある人は、全打席でフルスイングしてしまえば良いのですが、そこまでのパワーが無い非力な打線を抱えるチームは、工夫しないと点をとれません。

 そして、写真を組むことによって時間の経過を表現しやすくなるという、その利点を活かせれば、写真表現の幅はググッと広がります。

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