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虎の穴みたいな講座を受けた修業時代 その7

実質無料で最後まで御覧いただけます

 2003年3月から、月に一度ずつ、スパルタ式などという生易しい言葉では足りないくらいキビシイ講座に参加していました。

 その講座は、いきなり受講者に撮影させるところから始まります。

 それぞれの受講者は一人あたり3分の持ち時間でモデルを撮影し、直ちにパソコンで写真を選び出し、組み写真をつくったうえで講評を受けました。そこで散々ダメ出しを喰らうのです。

 虎の穴みたいな組み写真の講座について、恐れ入りますが「その1」から順番に読んでいただかないと、意味が通らないかと思います。面倒臭いなとお思いの皆様は、ココからUターンお願いします。

 もし「順番に読んでやるぜ」という奇特な方がおられましたら、コチラのマガジンから辿っていただくのが宜しいかと存じます。

講座5回目の作例

 写真の組み方がわかってくると、撮り方が変わってきました。組み写真はメインのほかに「はじまり」と「おわり」を現す写真が必要です。こうした考え方だと、最低でも三枚ないと「組み写真」と言えません。二枚で一対の写真は「組み写真」じゃなくて、なにか別の呼び方をしたいですね。

 このときから私は「はじまり」に使おうとか、これだったら「おわり」に使えそうとか、組むことを意識して撮るようになりました。撮ったあとで、組む段階になってから「はじまり」と「おわり」を入れ替えたりすることもあります。演繹法とか帰納法とかという、アレです。

 今回、御披露します組み写真の被写体は年齢不詳の役者さんで、撮影会のモデルとしても人気を博した人でした。ちょっとエキセントリックな部分を隠しもせず、そういう一面を撮らせてしまうのが特徴でした。

組めるようになって撮り方が変わった

 藪から出てきた登場シーンは、あらかじめ考えておいて撮りました。まず最初にソレを撮ってから、好きに暴れて貰ってます。シャボン玉セットは、いつの間にか手にしていた感じで、呆気にとられながら撮っていましたが、公園の売店で買っておいたのを「あとで遊ぼう」とスタッフに預けておき、それを不意に思い出して受け取ったのだそうです。

 衣装替えしましたが、同じシャボン玉セットを持ってもらって、前衣装の写真と繋がりをつけます。そして、満足そうな顔をしているところをヒキで撮ったのを「おわり」にしました。講座5回目にして、ようやくサックリと組めるようになったのでした。

持ち時間3分になった理由を邪推する

 つい先日、この講座の講師だった先生と久々に面談しました。私に撮影を依頼した人物から「1980年頃の自販機本みたいなテイストで」撮って欲しいということを言われたのがキッカケでした。先生は、即日売り切れたという伝説の自販機本を撮った人なのです。自販機に24冊のストックが入るけれど入れたら数時間で売り切れ、一日に何度も補充して周り、ついに36000冊をその日のうちに売り切ったのだそうです。

 自販機本は印刷の都合で必ず64頁と決まっています。大手出版社みたいに予算はかけられないけれど、さすがに35mmフイルムではグラビアの原稿に出来なくて、中判を使っていたそうです。ただし、64頁の写真集を作るのに渡されるフイルムは12枚撮り20本です。シャッター回数わずかに240回で、64頁分のOKカットを出せということで、キビシイ条件です。私が中判で撮るときは、12枚撮り一本のなかに使えるのが一枚あるかどうか。三枚も四枚も拾わなきゃならないというのは、プロでもキツイ条件だと思いますね。

 低予算ゆえにゲリラ撮影が多く、騒ぎになって通報される前にずらかろうというので、とにかく撮影の前後に走ってばかりいたそうです。ジックリは撮れないけれど、それでも「商品」として通用する写真を撮ってきた先生は受講生にも同様の試練を与えたのではないでしょうか。たぶんですが、先生御自身が短時間で撮らなければならない仕事を何度もこなしていくうちに、目を開くことがあったのだろうと想像します。

おわりに

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