コロナ禍で表面化した、興行ビジネスのリスク

2020年春、コロナウイルスの影響によって、私たちはいろいろな楽しみを奪われました。特に「観る」系のイベントはほとんど全てキャンセルとなり、ほぼ強制的に自粛生活に突入することになりました。

観劇、コンサート、ライブ、スポーツ観戦、、、時間の感覚もなくなるくらい、観るものがないということがこんなにストレスなのかと思いましたね。

オリンピックの延期、高校野球の中止など、予選で参加選手の選出を行うスケジュール上、間に合わない競技も出てしまいました。

5月下旬、緊急事態宣言の解除に伴い各種競技が再開を発表しました。(J1:7月4日、プロ野球:6月24日 などなど)

しかし、各団体は頭の痛い問題に悩まされています。それは、「興行を行っても儲からない」、という問題です。

無観客では儲からないというのはなんとなく頭ではわかっているんですが、なぜ儲からないのでしょうか。プロスポーツビジネスの収益構造を分析してみます。

・入場料

・グッズ

・放映権収入

・飲食

・スポンサー料/自治体補助金

・ベッティング収入

いろいろあることがわかりましたが、入場料・グッズ・飲食はお客さんがスタジアムに行くことによって発生します。だから無観客開催はスポーツを主催する側としては避けたい状況なのです。

それぞれの競技によって収益構造は異なり、コロナ禍の中開催するかどうかの判断に大きな影響を与えました。

たとえば大相撲は、3月場所の無観客開催を選択しました。これは放映権収入が無観客でも変わらず得ることができるからです。15日間の本場所期間、NHKによってテレビ、ラジオ等々で放送され、収益を得ることができます。(5月場所は力士間での感染拡大もあり、中止となりました)

一方でプロ野球は無観客開催の判断は大変難しいということです。プロ野球は軽く1万人以上のお客さんを動員することができ、飲食、グッズを含め1試合で1億円以上の収益を得ることができるそうです。逆に言うと無観客開催であると1億円以上の収益機会を失うことになります。

スポーツというのはその日、その場所で見るということがとても大事で、現場で得る感動は後で見る感動の比ではありません。だから高めの入場料を設定できることができます。海外のボクシングで数千万円のチケットが流通するのはすごいですよねえ。。

コロナ後の世界では、感染の状況によって開催・中止・無観客を迅速に変更しないといけないことが頻繁に起きるのだろうと思います。その日その場所に来てもらうことがスポーツビジネスの絶対条件になっているので、リスクが昔とは段違いなのです。昔はリスク要因といえば悪天候ぐらいでしたし、保険も整備されていますね。

そんな中競馬をはじめとする公営競技は、無観客とはいえ開催を継続できています。また収益をそれほど落とすことなくレースを実施できているようです。コロナ禍で外出ができない中、競馬という楽しみがあって大変救われた思いがしました。

公営競技の収益構造は特殊です。ベッティング収入が9割以上を占めています。JRA2019年の損益計算書を見ると、2兆9000億円の勝馬投票券に対し、178億円の事業収益(入場料など)となっており、圧倒的に馬券を売ることで事業が成り立っていることがわかります。

他の競技でも投票券事業をやればいいのに、とシンプルに思いました。なぜそれはできないのか、次の記事にまとめたいと思います。

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