【今週のリフレクション】哲学シンキング(吉田幸司氏)

今週は友人から勧められた、吉田幸司さん著「哲学シンキング」を振り返ります。ざっくり3点で要約すると・・

1.哲学は、考え方/思考の総合学。長い歴史のなかで人類が開発してきた、問題解決のための道具箱。ものごとの「そもそも」を問うことで新しい問いや視点に気づくのが、哲学シンキングの真骨頂。知らないことを自覚し(無知の知)、他人も理解できるように妥協せず考え抜く。哲学シンキングは、批判的かつ創造的に思考することが哲学的な思考で、反自己啓発を通じた自己啓発。

2.具体的なSTEPは、①真因を見極めるために問いを集める。課題に対する意見や主張も問いにする。②問いをグループに分けて優先順位をつける。解決策から遠そうでも、モヤモヤ違和感を感じる問いをスタート地点にする。③思い込みを取り除き、隠れた前提をさかのぼる。哲学レコーディング=手を動かし、問いを整理する。④議論を反復して振り返る。新しい視点や洞察を発見する。

3.哲学シンキングは、コトバにならないホンネを引き出す問いの技法。他者の言葉に徹底的に耳を傾け、自分自身の内なる声に耳を傾ける。ホワイトボードやポストイットは敢えて使わない。傾聴の姿勢から情報を自由に取捨選択して、それぞれの関心やストーリーを尊重する。決まったシナリオ(仮説)はつくらず、直接的には無用な自由な思弁を重視する。創発は合理的に予見できない。思わぬ発想の転換を待ち望む。哲学シンキングは多数派からズレた人が主役。

変化の早い時代だからこそ教養が大切と言われて久しいですが、考え方/思考の総合学である哲学もその代表的なものの1つだと思います。

自己を批判的に見て論点を問い直し、妥協なく考え抜くアプローチはクリティカルシンキングに近いように感じましたが、哲学シンキングにはもっと東洋的な良い意味での曖昧さを感じました。

ビジネスの文脈では、根拠を積み上げて1つの結論を導く合理性が求められてきました。それは、結論をたくさんの人に納得してもらうために大切な1つの方法なのは間違いありません。

しかし、少しずつ、それだけでいいのか?という雰囲気が生まれてきています。根拠の積み上げによるアプローチでは結論に多様性が生まれにくく、乱暴に言えばイノベーションが生まれにくい、という風潮です。

哲学シンキングは根拠となる客観的な事実ではなく、主観的な個人の関心やストーリーを大切にしているようです。それはつまり「ゆらぎ」を生み出すアプローチと言えるのかもしれません。同じ事実から個々の解釈がゆらぎ、結論がゆらぎます。

正解のない本質的な問いに遡り、感じたことを話し、その発言から感じたことを手元の紙に書く。書いた内容を振り返ってまた新しい観点に気付く。今の時代のスピード感と全く違う、アナログで曖昧で中庸を求める東洋的なアプローチだと感じます。

これは、マスでのマーケティングで行き詰まった時に、カスタマージャーニーのように解像度高く個人を観察して示唆を得る、という方向転換に似ている気もしました。どちらが良い、ということではなくバランスなんだと思います。

「そもそも」から始まる思考トレーニング、思考体力がないとすぐに力尽きてしまいますが、これからのAI時代に必要なヒューマンスキルだと思うので、意識的に鍛えてみます。

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