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今週のリフレクション【研修評価の教科書(中原 淳・関根 雅泰・島村 公俊・林 博之)】

今週は、中原 淳さん・関根 雅泰さん・島村 公俊さん・林 博之さん共著「研修評価の教科書」を振り返ります。ざっくり3点で要約すると・・

1.人材開発にとっての「学び」は手段。人材開発の目的は、経営・現場の改善に資すること。研修とは、仕事場以外の場所で人々に学んでもらい、学んだことを仕事場で実践してもらうこと(転移)を通して、経営・現場にインパクトをもたらす営み。経営・現場へのインパクトが本懐。研修は日常から切り離され、失敗しやすく、試行錯誤しやすく、普段考えないことを考えられる。だからこそ、現場での実践が難しい。研修評価は、現場での実践(研修転移)を測定する。研修評価の機能は、①形成的評価機能(研修をより良く)、②総括的評価機能(研修効果を見える化)、③リマインド効果(研修転移を促進)。

2.カークパトリック(+フィリップス)5レベル評価モデル=反応→学習→行動→成果→ROI(測定困難)。成果を生み出すのは行動、行動に関係するのは研修直後の自己効力感、研修直後の満足度は行動を予測しない。だから、①成果につながる行動を明確化→②行動の測定→③学習目標の設定→④関連度・有用度・自己効力感の評価、が大切。①ミニマムコース=研修直後アンケートで関連度・有用度・自己効力感+リマインドメール。②スタンダードコース=3〜6ヶ月後に簡易アンケートで活用×結果+事前アンケート。③プレミアムコース=生声ヒアリング。データの種類(定量/定性)とタイミングのブリコラージュ。

3.現場マネージャーの支援は、研修転移の重要な要因。①課題となる行動を正確につかみ、②社内施策との連動を訴求し、③協力的な現場マネージャーの声を集めて巻き込む。①研修の学びを実践する場を設け、②目標設定に関与してもらい、③目標設定までの継続的な支援を得るのが理想。経営層は、4タイプで巻き込む。①関心なし/接点なし=研修の必要性や成果の裏付けデータで守る。②関心なし/接点あり=教育の意義、現場トップ、他社事例でソフトに引っ張る。③関心あり/接点なし=人事担当役員と目的の合意、経営課題の情報をもらう、他社事例/根拠データ/理論的背景。④関心あり/接点あり=研修への期待、目的の合意、教育スタッフの熱意で攻める。

研修アンケートで満足度を聞かないことのほうが少ないのではないでしょうか。では、なぜ必ず聞くのでしょうか?それは、「満足度の平均は5段階で4.8でした」と、社内で研修の報告をするために座りの良い(一見、納得感のある)項目だからではないでしょうか?

しかし、書籍にある通り「行動変容」と「満足度」に相関関係はないようです。経営に資するという人材育成の目的のためには、現場での行動変容が必須であり、それは研修直後のアンケートでは測定できないようです(期待値は測定できますが)。数ヶ月後のアンケートにより、活用したかどうかを聞くことが必須になります。

ここから人事へのメッセージを私なりに読み解くと、「研修評価にリソースを割くこと」が最大のメッセージだと感じます。そもそも、研修の結果を報告する際に満足度を使うのは、「お手軽だから」に他なりません。だからこそ、まずは研修の目的は経営に資することだと再確認し、そのためには効果測定が必須なことを理解し、リソースを割く覚悟を持つ必要があるのだと思います。

上から指示された研修をこなしてお手軽な数字で体裁ベースの報告をするのはやはり本質からは遠い。人事育成の専門化として、研修に真摯に向き合う姿勢を持ちたいと感じました。自戒を込めて・・。

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