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今週のリフレクション【気持ちよく人を動かす(高橋浩一氏)】

今週は高橋浩一さん著「気持ちよく人を動かす」を振り返ります。ザックリ3点で要約すると・・

1.結論の正しさを競うと、①相手の抵抗を誘発し、②隙のない準備が議論を殺し、③勝てないほうの心が折れてしまう。疑問や反論を結論の質を高めてくれるチャンスと捉え、正しさに縛られず、相手と共創するスタンスが大切。共に創るディスカッションでは、思い切って場に身を委ね、自分の弱いところもさらけ出し、フラットに相手と議論する。共に創るディスカッションには「7つのスキル」がある。①想定する力=ゴールを設定し、発生する壁(関係性の壁/情報整理の壁/思い込みの壁/損得勘定の壁)を洗い出し、対応をシミュレーションする力。誰からどんな台詞が出たら成功か?がゴールになる。

2.②段取りする力=資料やアジェンダの組み立てに落とし込むスキル。前半は相手に耳を傾け→軽くまとめ→後半はポイントを絞って議論→最後はまとめる、という流れ。初期情報と追加情報を分ける。早い段階で相手にボールを渡す。③理解を深める力=お互いの理解を通じて関係を深めていくスキル。自己一致+無条件の肯定的関心+共感的理解。感情混じりのサイン、想定外の反応は深掘りのチャンス。④見える化する力=その場に出た情報をビジュアルで整理して相手と確認することで場を前進させるスキル。ピラミッド構造で整理し、比較/変化/プロセス/ポジション/マトリックス/列挙で提示する。

3.⑤思い込みを外す力(速効性の思考)=先入観や固定観念があるとき、原因を特定して認知の枠組みを再定義するスキル。人は現状維持で保留したい、異なる意見は認めたくない、自分に説得されたい。言動→解釈/価値観→過去の事実。インパクトある情報で結論は変わる。⑥軸を動かす力(遅効性の思考)=選択肢を増やしたり判断基準を問いかけたりして、意思決定の軸に影響を与えるスキル。⑦巻き込む力=決めたアクションが着実に実行されるよう、相手と一体になって推進するスキル。共に動くための合言葉をつくり、動かすためのメモを残す。

相手に気持ちよく動いてもらうためには、4つの壁=関係性の壁/情報整理の壁/思い込みの壁/損得勘定の壁、の「順番」が大切なのだと感じました。人としてのラポール(信頼関係)を構築することから始まり、情報を整理して、多面的な観点を示し、アクションを進めるサポートをする。これは営業シーンだけでなく、人材育成のシーンでも全く同じことが言えると思います。

人材育成のシーンに捉え直した時の難所は、育成を促す側が「どれだけコントロールを手放すことができるか」だと感じました。特に、思い込みの壁を越える時です。別の選択肢を示したり、価値観を問う質問をする時に、コントロールをしようという意図があると、受け手は敏感に感じとって防衛してしまうように思います。そうすると、結果的に壁は越えられません。つまり、相手は気持ちよく動いてくれず、結果的に人材育成は失敗してしまいます。企業の人材育成には「経営に資する人材を育成する」というゴールがあります。そうすると、つい人材の成長をコントロールしようとしてしまいます。ここに、ジレンマがあるように思います。

経営に資する人材を育成しつつ、コントロールを手放すには、「時間軸」がキーワードになるように思います。例えば、研修の1日で変化を促そうとすると、コントロールしたい気持ちが生まれてしまいます。そこで、研修のゴールはあくまで「問いを残すこと」として、メッセージをあくまで観点の1つとして提示して、受け取るタイミングは相手に委ねる。そうすることで、コントロールを手放すことができるのかもしれません。

もちろん、実際の研修で実装するのはケースバイケースだと思います。ただ、研修中に「変化させる」という意図を手放すことが、結果的に変化を促すという構造は人材育成をデザインする時に大切な観点になるような気がしました。

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