【今週のリフレクション】オタク経済圏創世記(中山淳雄氏)

今週はFOTENITEとAmazonの闘争で話題になっているゲーム業界について考えるたく、中山淳雄さん著「オタク経済圏創世記」を振り返ります。ザックリ3点で要約すると・・

1.1960年代、利益度外視の作品量産体制があったから、他国では模倣困難なマンガ・アニメ産業が形成された。その後、エヴァンゲリオンのアニメ委員会で各メーカーで収益の割合配賦によりマネタイズを実現。マンガは普及が早いがマネタイズしにくい。アニメはライセンスでマネタイズしやすい。ゲームは日本が最初から世界一。ドラクエがゲームをキャラクターと物語を生み出すプラットフォームに変えた。ポケモンのアニメキャラのゲーム化によるメディアミックスが更なる転機。キャラクター経済圏の創造し、マネタイズ最大化だけでなく、プロモーション最大化が共に志向された。

2. デジタルでリアルの時代が終わるのは誤解。流行することの価値が下がり、維持することの難易度があがっている。集合化・社会化はライブ感でより高い体験価値を生む。アニメ→ゲーム→イベントとコンテンツが数珠つなぎにアップデートされ、2.5次元で物語を提供し続けることでコンテンツが生きる。量産しにくい2次元(高価・高作品性)を経済圏の基盤にしつつ、3次元(安価・高機動性)でコミュニティを形成する。5G時代はプラットフォームからコミュニティの群島が集合夢散する変化の時代。マスメディアが大多数に発信してトレンドを創り出す時代は終わり、共体験するロケーションビジネスが成長。主体を空白地帯に置いて集団性と対象を愛好するのがエンタメの主軸になりつつある。

3.海外では制約のあったマンガに代わりアニメが伝道者に。海外にはオタクと反社会性という葛藤がなく、今が20〜30年遅れて成長期。日本の海外進出は、狙ってないのになぜか国境の敷居を意識しないボーダレス商品を武器に、ローカルニッチ→グローバルニッチ→グローバルマスのポジショニングで勝負する。ただし、進出先にメインプラットフォームとサブプラットフォームの融合した、大きなメディアインフラ(文化コンソーシアム)が必要。日本は職人文化で、興行性<作品性。擦り合わせ技術による創発的なオペレーションエクセレンスがある。中小企業の群生によるネットワークによる非破壊的創造を武器にするのがポイント。

FOTENITEというゲームは世界で3億5,000万人以上がプレイするモンスターコンテンツですが、本の内容を踏まえるとやはり2.5次元の世界観が実現されていると思います。事例で言うと、米津玄師がゲームの中でライブを開催したり、他コンテンツのキャラクターとコラボしたり、ユニクロでアパレルが販売されたりしています。

私が実際にFOTENITEをプレーして感じる独自の特徴としては、①バーチャルなプラットフォームへのリアルの組み込み、②参加者同士での横方向のコミュニティ形成、があると思います。

本の中では、量産しやすい3次元と量産しにくい2次元を組み合わせることで2.5次元の実現を目指しています。FOTENITEでは3次元のコンテンツを、2次元のプラットフォームに融合する形で実現しています。2次元のコンテンツも少しずつ変化する工夫をしちまつ、定期的に3次元を組み込んだイベントが実施されることで、流行が維持できていると感じます。

もう1つは「ボイスチャット」という機能の存在です。2次元でありながら、声による会話ができることで、より3次元に近いコミュニティが形成されていると感じます。実際、うちの小学生の子供はFOTENITEのボイスチャットを通じてゲームと関係のない連絡を取り合ったりして、ゲームの領域を飛び出したインフラとして機能しています。文字よりもゲーム機との相性が良く、コミュニティ形成の効果は高いように感じます。

withコロナの時代、デジタルの入り口になるプラットフォームの構築に多くの企業がチャレンジしていると思います。任天堂のどうぶつの森もそうですが、ゲームが入り口になるケースもこれから増えてきそうです。メディアの定義が変わりつつある中、様々なビジネスモデルが構築できる可能性があると、改めて感じました。

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