【今週のリフレクション】10秒で新人を伸ばす質問術(島村公俊氏)

著者とお話する機会に恵まれたため、今週は島村公俊さん著「10秒で新人を伸ばす質問術」を振り返ります。ざっくり3点で要約すると・・

1.現在の経営環境では、指導する時間を最小限にして、新人を最速で一人前に育てる必要がある。実践アプローチ/講義アプローチを新人に決めさせることがスタート。実践アプローチでは目的と全体像を伝えること、講義アプローチでは安心感を与えつつ7割しか教えないことがポイント。論理重視か気持ち重視か見極めも大事。業務を分解して分けて教え、手本はみどころを伝えてから見せる。ティーチングしてからコーチングする。上司から2〜3分相談してコミュニケーションし、メールは5文字でいいから当日中に返信する。なるべく多くの人が関わり、新人のアイドリング時間を減らすことが大切。

2.人が教えたくなるような教わり方とは、メモ/感謝/挨拶。育成スピードを上げ、指導の負荷軽減のために5W1Hのメモが大切。報告は頻繁に起こるので新人に変化を起こしやすい。論点→結論→根拠がポイント。上司や先輩の指示は瞬時にポジティブに答え、期待値や要望を確認すべきで、仮説を持った確認こそ大切。丸投げの相談は堂々と却下していい。自力で考えることで成長が早まる。3秒で質問→7秒待つのがフォーマット。10秒したら立ち去っていい。タイムプレッシャーに慣れることが早期育成に大切。依頼と同時に今日やるべき作業をクリアにして、スタートダッシュさせる。SOSはチーム貢献。

3.自分でPDCAを回すことが独り立ち。評価を自分で取りに行かせる。振り返りを仕組み化する。叱ります宣言をしておき、知識/行動/スタンスを分けて周囲への影響度を伝える。行動の背景を聞く。ポジティブ表現と自己開示で攻める。ほめるときは、評価を挟まず事実を伝える。凹んでる新人には間髪おかずに単純作業をさせ、小さな達成感。無理ですを鵜呑みにせず、ちょっと先の見えていない世界を見せる。足下ではなく、前を向かせる。新人のわかったを鵜呑みにせず、任せる時は強制的に確認させ、自分の言葉でポイントを復唱させる。

「自分でPDCAを回すことが独り立ち」というところに非常に共感しました。働き方改革の文脈で、新人へのOJTは手薄になる傾向がある中で、コロナ禍でますます傾向は加速すると思います。そんな中で、新人にとっての最重要なスキルは、まさに自分でPDCAを回せるスキルではないでしょうか。

では、新人が自分でPDCAを回せるようになるには何が必要でしょうか?それが、質問によるアプローチだと著者は言っています。育成担当者が質問をすることで、新人が自分の頭で考える経験をする。このことが、2年目の独り立ちに向けた助走期間になります。もちろん、指示が必要なシーンもありますが、バランス問題ですね。

では、現場の育成担当者に質問によるアプローチが有効なことをどう理解してもらうか?これが難所になるように思います。現場は忙しく、人事のように育成が主業務ではありません。その立場の方からすると「質問なんてするより指示したほうが早い(=主業務の時間を削られない)」と思うのは当たり前のことだと思います。

この難所を越えるには、本人が「質問によるアプローチを受けて有益だった」という経験を持つことがポイントになるように思います。自分が受けた教育を部下や後輩にするというのも自然なことですよね。だとすれば、短時間でも全員と問いを中心にした面談する等、新人研修で「問い」によるコミュニケーションが有効だと新人が感じる施策が必要になると思います。

ここでの問いとは「今の自分は理想を100点とすると何点ですか?」といった所謂コーチングような抽象度の高い問いではなく、「今日の研修で重要だと思ったことを3つ挙げるならなに?」といったような、抽象度の低い問いのイメージです。もちろんどちらが良い問いという話ではなく、目的による手段の違いですね。

こんな取り組みを繰り返していけば、新人が先輩になった時に問いを投げかけるようになり、その指導を受けた新人がまた後輩に投げかけ、と少しずつ遺伝が広がっていくように思います。人材育成は時間がかかりますが、諦めずに1歩1歩進めたいと改めて思えた1週間でした。

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