コミュニティが生み出す6つのビジネスアウトカム ー SPACESモデル from CMX のまとめ
「コミュニティに興味がある」という言葉をよく耳にするようになってきました。コミュニティを考え始めるときに要点になるのがその成果です。
私も最近、コミュニティを1から作る仕事を経験し「コミュニティって一体何のために作るのだっけ?」という問いに頭を悩ませた一人です。そのときに、米国に拠点を置くCMXが提唱する、コミュニティのビジネス成果の種類を定義した「SPACESモデル」が頭の整理に役立ち、参考になったのでご紹介します。
これからコミュニティを始めたいと考えている方や、すでにコミュニティに運営に携わっているけれど原点に立ち返ってみたい方のお役に立てれば幸いです。
SPACESモデルはそれぞれ「Support(支援)」「Product(製品やサービス)」「Acquisition(獲得)」「Contribution(貢献)」「Engagement(エンゲージメント)」「Success(成功)」の6つの頭文字をとってできた言葉です。
SPACESモデルではコミュニティのビジネスへの成果や価値は、この6つのうちのいずれか、もしくは複数の組み合わせによって成り立つと定義しています。詳しく見ていきましょう。
1. Support(支援、サポート)
製品やサービスに対する疑問質問を顧客同士で回答できるようコミュニティを設計することで、カスタマーサポートへの負荷を軽減します。
ヘルプセンターの記事でもカバーし切れない事象の多い、ITなどの複雑な製品やサービスに向いています。主にオンラインのグループやプラットフォームを用意することが多いようです。
(成果指標の例)コミュニティ内での質問に対する回答数や回答率、カスタマーサポートの削減コスト、コミュニティ利用メンバーのサービス継続率やLTV向上など
2. Product(プロダクトフィードバック)
イノベーションを速いサイクルで起こすため、コミュニティを通じてフィードバックやインサイトを集めます。コミュニティメンバーは積極的な愛用者なので頼もしい情報源になります。
より良いインスピレーションを得るために開発者がコミュニティに参加することもあります。
(成果指標の例)コミュニティから出たアイデアで実装された案件の数やそのインパクト、バグの報告/修正の回数など
3. Acquisition(獲得)
コミュニティを成長させることは、製品の利用者を増やす、市場を広げる、口コミを増やす、認知をあげるなど他にも様々な大きなビジネスインパクトが見込めます。
アンバサダープログラムのように、特に太いパイプラインを持ったメンバーに役割を持たせる手法もよく使われます。
(成果指標の例)新たな登録の増加数、ミートアップやイベントの数、口コミの数、削減できた広告費など
4. Contribution(貢献)
記事やコード、活動など、ビジネスの成功に役立つコミュニティへの貢献の数を増やします。
特にプラットフォーム事業者の場合、そのサービスの価値を提供しているクリエイターや売り手、開発者などに関与しドライブしていくことがサービスレベルをあげることに直接繋がります。
(成果指標の例)アクティブユーザーの数や率、投稿数、投稿への評価やコメント数、一人当たりの投稿数など
5. Engagement(エンゲージメント)
コミュニティプログラムを通じて、そのコミュニティへ所属意識やブランドへの信頼感を育てることが離脱を防ぎ、LTVを高めることに繋がります。もしかしたら、あらゆるコミュニティが担っている要素かもしれませんね。
(成果指標の例)NPS、継続率、LTV、イベントへの参加回数、オンラインコミュニティでのログイン回数、投稿数や滞在時間など
6. Success(成功)
製品やサービスを、より頻繁に、より高いレベルで使いこなしてもらうことで、顧客担当者のビジネスの成功を後押し。そのためスキルアップのためのトレーニングや勉強会もしばしば行われます。
(成果指標の例)プロダクトの売上、継続率、顧客ビジネスへのインパクト、勉強会の回数、参加者数など
以上、コミュニティから生まれる6つのビジネスアウトカムのご紹介でした。
実はこのSPACESモデル、Sが抜けたり、Sの代わりにIだったり他にも語り方があるようです。個人的にはSを入れるのが一番しっくりきたのですが、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
また、有料コミュニティの場合、その「収益」はどのカテゴリに入るのかというツッコミ所もなきにしろあらずなのですが、その点ご了承ください。
あなたのコミュニティがフォーカスするのはどれ?
まずは自分自身のコミュニティにあてて考えてみましょう。
多くの場合、コミュニティに期待するものはひとつに絞り切れません。まずは全てを洗い出してみて、最も優先すべきはどれか考えてみるのがおすすめです。
コミュニティを考え始めようとして、でもその内包しているものの範囲が広すぎて、どこから手をつけたら・・と悩み愕然としてしまうような時でも、この6つの要素をヒントにすれば考えやすくなるはずです。
また、コミュニティのアウトカムとして期待されるもの、その優先順位は、周囲の状況やコミュニティの習熟度によって変化することもあるでしょう。例えばコロナ渦では、それまでメンバーのエンゲージメントに注力していたコミュニティが、状況が大きく変わったために一時的にメンバーからのフィードバックやヒアリングに方針を切り替えた事例もありました。
常に「コミュニティにとって最適な成果は何か?」ということを頭に入れつつ、焦点に合わせた施策を打てるように。簡単ではないですが、一緒に頑張りましょう!
コミュニティの振り返りにも
コミュニティをこれから始める方だけでなく経験者も、これまで展開してきたコミュニティ運営を振り返る場合に、この6つの軸で成果を整理してみると理解が早く、言語化しやすくなるかもしれません。
例えばこんな表を埋めてみて、チーム内で共有、ディスカッションし、自分たちが目指す方向とのギャップを確認するのも手かもしれませんね。
全世界のコミュニティ運営実践者が集うCMX
「SPACESモデル」は2014年米国を発端に全世界に広がるコミュニティマネージャー、コミュニティマネジメント実践者の集いの場であるCMXで勉強したことをベースにしてご紹介しました。
CMX connect Tokyoのイベントに参加しよう
日本にもCMXのブランチ、CMX connect Tokyoがあり、不定期でコミュニティの勉強会を行っています。私も運営メンバーとしてお手伝いさせていただきます。アップデートはこちらをご覧ください。https://events.cmxhub.com/tokyo/