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完・子どもへのまなざしを読んで

最近、思いめぐらすことがあります。
本を選び、好きに読める歳月は無尽蔵にあるのではない。
だからこそ、本との出逢いも、人との巡り会いのように
大事にしたい。そう思えるような一冊でした。

読了しました。
佐々木正美著(2011)『完 子どもへのまなざし』福音館書店
全3巻シリーズ最終巻。

書名は「子どもへの〜」ですが、「いのちへの、または人間まるごと」へのまなざしだと思いました。
人間関係が希薄になる社会で生きていく糧になる考え方。

著者の恩師エリク・H・エリクソンの「ライフサイクル・モデル」を基盤に人間の発達成熟過程の課題と、それらの対応が語られる。

知りたかったことが、諄々とした語り口で説かれる。

アイデンティティとは何か。
それはどのように育つのか。

興味深い記述がある。
「他者と深いまじわりをするには、自分のなかに取りこみたくなるようなイメージの人に、たくさん出会ってこなくてはいけない。p.122-3」
自分を知る人は、他者をよく知る。好ましい人のイメージを取り込むことで、自己概念ができていく、と。
自己の確立をしっかりしてから、他者と親密な関係を結ぶと、対等の関係でまじわることができる、と。

そこから壮年期、老年期の生き方へ続く。

後半では、発達障害・高機能自閉症の特性を詳しくほぐす。
著作を読むうちに芽生えた印象は、(率直であると同時に、なんて現場に密着した実態をよく理解した文章を書くのだろう!)というものだった。

世代性、日本特有のひきこもり、著者の米国留学のエピソードについての記述も印象的でした。


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