【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューLAD編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(29).ボビー・ミラー(Bobby Miller):RHP:右投左打;6-5/220:Louisville:$2.2M:$2.4M

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で99マイルをマーク。ムービングにも富んでおり、前に飛ばすのは至難のわざ。スライダー、チェンジアップ共にアウトピッチとして使い、いずれも90マイル近い球速。カタログスペックは文句なしだが、コントロールの不安定さとフルエフォートなデリバリーからリリーフ向きだと見るスカウトも。長い腕を使ったデリバリーはデセプションに優れる。

成績

 21年のプロデビューイヤー以降アマチュア時代に懸念されていたコントロール難は顔を潜めています。いずれのシーズンもBB%は1桁に収まっており、BB/9もキャリアワーストの数字でも3丁度とむしろコントロールがいいタイプに分類されるでしょう。
 一方で高い奪三振能力は失われておらず、マイナーでの通算のK%は30%超えています。
 これほどの好投を見せていただけあって23年にはメジャーデビューを果たし、5月から一度も欠けることなくローテーションを回しました。22試合に先発して防御率も3点台とメジャーでもマイナー時代と変わらず好投を続けましたが、新人王投票では1票も入らない憂き目に合いました。
 アマチュア時代とデリバリーが大きく変わっており、それがコントロール難の解消につながったのかもしれません。テークバックが小さくなり、1B方向へ倒れがちだった体をホームプレートへ真っすぐ向き直るようにしてアマチュア時代よりもデリバリーが安定しているように見えます。
 ただ、コマンドという話になるとまた別問題でしょう。ゾーン近辺のアバウトなコントロールに終始しているためか、メジャーではK%を大きく落とす原因となりました。
 コントロールの改善に成功したように、コマンドについても手を打てばエースクラスの投手になれるでしょう。


2(60).ランドン・ナック(Landon Knack):RHP:右投右打:6-2/220:East Tennessee State:$712.5K:$1.16M

90マイル中盤の速球とスライダー、カーブのコンビネーション。オフの間にトレーニングに励み球速アップに成功。現在は最速で98マイルをマークすることも、これにキレのあるスライダーとカーブを組み合わせ大量に三振を奪う。キャリアを通じてコントロールがよく、四球を出すことは滅多にない。大きな故障をすでに2回経験していることと、シニアであること、来シーズンも大学でプレーする可能性を示唆していることが懸念材料。

成績

 21~22年は故障の影響もあって実働数は少なかったのですが、23年はついにフルシーズンでローテーションを回すことに成功。AA/AAAで22試合に先発して100イニング以上を投げ、防御率も2点台と文句なしの好投を果たしますがついにメジャーに呼ばれることはありませんでした。
 オフシーズンには40人ロースターに入りましたが、メジャーへの道のりは険しそうです。チームは次々にSPを補強しており、その中に割って入るのは至難の業。誰かが故障した時の代役としてスポット的に先発する機会を与えられるのを待つことになりそうですが、ナック自身も故障が多く回ってきた機会を逃すことなくものにできるかは微妙なところでしょう。
 トレードなどでチームを変えない限りメジャーでは席の埋まっているスターターではなくリリーフとしての登板機会が多くなりそうです。


CBPB(66).クレイトン・ビーター(Clayton Beeter):RHP:右投右打:6-2/220:Texas Tech:$1.2M:$1M

90マイル中盤の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で98マイルをマーク。ノビのある4シーム系は空振りを奪える球種。カーブ、スライダー共にアウトピッチとして優秀なボール。チェンジアップのクオリティもまずまず。

成績

 プロデビューの21年からスターターとしての起用となりましたが、長くても4イニング目の途中で降板するショートスターターのような起用法でした。転機が訪れたのは22年。シーズン途中にジョーイ・ギャロとのトレードでNYYへと移籍。NYY傘下では徐々に投げるイニング数を増やしていきます。
 23年はショートスターターから完全に脱皮し、平均して5イニング以上投げるようになりました。
 LAD時代にショートスターターとして起用されていたのは、コントロールの悪さが原因でしょう。速球、変化球問わずゾーンを大きく外れることが多く、それにつれて四球も多くなってしまっています。今はそれが解消されたかというとそうではなく、四球を出しながらも圧倒的な三振数の多さで傷口を広げずに済ませています。
 既に40人ロースターに入っておりメジャー昇格も射程圏内ですが、上記の理由からメジャーではリリーフとしての起用になりそうです。


5(159).ギャビン・ストーン(Gavin Stone):RHP:右投右打:6-1/175:Central Arkansas:$97.5K:$327.2K

90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球はリリーフでなら最速で96マイルをマークすることもあるが、先発では最速は94マイル程度。元々はリリーフだったが、コントロールが安定していることもあり、大学最終年に先発に転向し見事成功した。奪三振能力が高くイニング以上の三振を奪うことが多い。小柄でスキニーな体格なためプロでも先発できるかは微妙なところ。

成績

 サイズを考慮してリリーフへの再転向も考えられましたが、プロでもスターターとして投げ続けています。22年はA+/AAAで25試合に先発し120イニング以上投げて防御率を1点台で終わる活躍を見せ、トッププロスペクトの仲間入りを果たしました。
 23年はトーンダウンとなりましたが、それでもメジャーデビューを果たしスポット的に先発する機会も与えられました。
 アマチュア時代はそれほど注目されていなかったチェンジアップが現在最大の武器となっています。スプリットのような握りでスピードを殺し最小限の変化量で空振りを誘う球種になりました。
 4シームは球速が上昇し、現在では最速で98マイルをマークするようになっています。ただ、スピードは上昇したもののムービングに欠けており、フラットな軌道になることが多いため狙い撃ちされやすくなっています。
 メジャーでも4シームの被打率が5割を超えており、カウントを作る前に打たれてしまったため奪三振数も落ち込むこととなりました。
 メジャーでの活躍するには速球をどうピッチングに織り込むかが重要なカギを握ることになりそうです。


総括

 1巡目のボビー・ミラーを始め、指名した大学生投手は全員40人ロースター入りを果たす快挙を達成。特にミラーは既にメジャーでローテーションを回す活躍を見せており、当初の期待以上の成果を挙げています。
 また、5巡目でボーナスプールの余剰を生み出すために指名されたギャビン・ストーンがミラーに次ぐ出世株となっておりLADとしては笑いが止まらない状況になっています。
 その余剰を持って指名した高校生野手のジェイク・ボーゲルは完全に伸び悩み、頭打ちに近い状態ですが大学生投手4人の活躍の前では些細なことでしょう。


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