【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューKC編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(4).エイサ・レイシー(Asa Lacy):LHP:6-4/215:Texas A&M:-:$6.66M

90マイル中盤の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。全ての球種でストライクを取れるコマンドの持ち主。速球は最速で97マイルをマーク。チェンジアップ頼りだったがスライダーとカーブの向上が著しく、現在ではチェンジアップよりも後者2球種を好んで投げる。実力、ポテンシャル共に高くエースの器。

成績

 ドラフト当時はMIAに全体3位で指名されたマックス・マイヤー以上の実力者であり、No.1のピッチングプロスペクトであったことは間違いありません。ただ、そんな期待の新星も度重なる故障に苦しんでいます。
 21年にA+でプロデビューとなりましたが、52イニングで41個とかなりのハイペースで四球を出すコントロール難に苦しみます。改善される気配もなくシーズン途中に肩の故障で離脱します。
 翌年もRk/AAでイニング以上の四球を出すと、背中の故障でシーズンアウトとなりました。
 元々コントロールがいい方ではありませんでしたが、やたらめったらに四球を出すタイプでもなくプロ入り後ストライクゾーンにボールを入れることさえ苦労することになるとは予想だにしませんでした。
 復活が期待された今年はリハビリに1年を費やすこととなり実戦での登板は0。ついにMLB公式のマイナー全体のトップ100どころか球団のトップ30のリストからも名前が消えてしまいました。
 信じられない量の四球の数のため復活は厳しいようにも見えますが、1年間の休養を挟み故障のない万全の状態であればと期待したくなるほどのポテンシャルことがあることも確かで、好調時の投球はやはり目を見張るものがあります。
 1年間の休養を挟んで万全の状態でもコントロールが一向に改善されないのであれば、さすがに諦めの時かもしれませんがレイシーならと思いたくなるのです。


CBA(32).ニック・ロフティン(Nick Loftin):SS:右投右打:6-1/180:Baylor:-:$2.26M

内外野ほぼ全てのポジションを守れる汎用性が最大の武器。スペックが高く、器用さも相まってどこを守っても平均以上の動きを見せる。打撃ではコンタクト重視で、状況に応じたバッティングができる。パワーレスというわけでもなく、長打が全く打てないわけではない。

成績

 21年のプロデビュー以来どのクラスでも安定した打撃成績を残し続けることに成功しています。短期的なスランプとなった22年のAAA以外のクラスでは打率.270以上をマーク。BB/Kも高水準で安定しており、こちらも22年のAAA以外のクラスでは0.7以上をマークしつづけています。
 アマチュア時代コンタクト重視のスタイルを取っていた選手は得てしてコンタクトを意識しすぎてハードヒットを飛ばせないことも多いのですが、ロフティンの場合はプロ入り後スイングを改造してコンタクトを意識しつつ積極的に長打を狙うスタイルに変更したようです。
 3シーズン連続で2桁HRをマークしており、アマチュア時代は隠れていたローパワーがプロでは発揮されています。
 今年はメジャーデビューも果たし、19試合のみの出場ながらも打率.323をマーク。来年に期待を持たせる好感触を得てシーズンを終えました。
 プロでSSとして使えるほどのスペックではなかったようですが、IFはSS以外の3ポジションをこなしいずれもマイナスにはならないレベルにはあるはずです。臨時でOFに入ることもでき、持ち前の打撃も相まって高いwarを残せる選手になりそうです。


3(76).タイラー・ジェントリー(Tyler Gentry):OF:右投右打:6-2/210:Alabama

パワーとアベレージを兼ね備えた打撃が持ち味。昨年、短大からNCAAディビジョンⅠに挑戦し見事に対応。チームでトップクラスの成績を残した。非常に早打ちなタイプで、四球も三振も少ない。身体能力は低くなく、スピードもアームも平均以上。主に守っているのはRFだが、状況に応じてOF3ポジション全てを守ることができる。スピードはあるが盗塁スキルはイマイチ。

成績

 21年のプロデビューイヤーはA+で好成績を残しながらも膝の故障で44試合に留まりました。初のフルシーズンとなった22年はA+/AAで108試合に出場し、21HR&OPS.965と大ブレークを果たしました。
 ただ、昨年はできすぎだったようで今年はトーンダウン。AAAで129試合とキャリアハイの出場試合数となりましたが、打撃成績は軒並み悪化してしまいました。
 さすがに毎年OPS.900超をマークするようなスーパースターレベルの選手ではないと思いますが、ポジティブな要素は多いように見えます。
 大学時代はじっくりボールを選ぶタイプではありませんでしたが、プロ入り後は毎シーズン12%以上のBB%をマークしており、一方でK%は20%前後と深いカウントになっても三振を避けることができています。
 また、パワーツールも発揮できており、シーズン途中で離脱した21年以外は2年続けて15HR以上をマーク。二塁打も2年連続で20本以上とコンスタントに長打を打てる点は大きなアピールポイントです。
 プロではCFを守るスペックではないようですが、RFなら自慢のアームを活かしてプラスの数字を残せると思うのでソリッドな打撃を続けることができればレギュラーの座を狙えるでしょう。


4(105).クリスチャン・チャンバーレイン(Christian Chamberlain):LHP:左投左打:5-10/173:Oregon State:-:$554.3K

90マイル前半の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で95マイルをマーク。ノビのある4シーム系をテンポよく投げ込む。アウトピッチは縦に割れるカーブ。速球との緩急は打者にとって脅威で、このボールで三振を大量に奪う。チェンジアップは平均レベル。コントロールが悪い点と小柄な点からプロでもリリーフに落ち着くだろう。

成績

 デビューイヤーの21年は故障もあって2試合の登板に終わりましたが、以降は2年連続で30試合に登板しています。ただ、通用しているとは言い難く、リリーフとしても扱いづらい存在になっています。
 やはり気になるのはコントロールの悪さ。BB/9は2年連続で8以上とイニングに迫る数の四球を出しています。
 速球はスピードアップに成功し有効に使えないチェンジアップを封印し90マイル近いスライダーをレパートリーに加えたりと投げるボール自体は進化を遂げているため、もう少しだけストライクを稼げさえすればメジャーでも活躍できるかもしれません。


5(135).ウィル・クライン(Will Klein):RHP:右投右打:6-5/230:Eastern illinois:-:$414.4K

90マイル中盤の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。ソフモアまで成績はボロボロだったが、昨夏に100マイル近い球速をマークしてから頭角を現したハードスロワー。速球はスピードに優れるが、フラットな軌道になりがちなのが懸念材料。変化球もそれほど高い評価を得有れておらず、コントロールは不安が残る。ドラフト初日で指名されると思っていた自信家な点はクローザー向きか。

成績

 21年のデビューイヤーはA+でまずまずの成績を残しましたが、22年はAAで30試合に登板して防御率10点台と大スランプに陥りました。失点も四球もイニングを大きく上回る数字となりました。
 ただ、今年はAA/AAAでキャリアハイとなる49試合に登板し、防御率は4点台といくらか持ち直すことに成功。
 昨年よく投げていたチェンジアップを封印し、スライダーの割合を増やすことで復活した筋書きは上述のチャンバーレインとほぼ同じです。
 100マイルボーラーなため故障も心配されますが今年の9月のIL入りがプロ入り後初と故障は少なく、最短の7日で復帰しておりシーズンを通して健康で投げられるタフネスさは大きく評価できる点です。


総括

 20年当時はドラフトクラスNo.1ピッチングプロスペクトであったエイサ・レイシーがまさかの大コケ。故障による影響はもちろん大きいとは思いますが、それにしても多すぎる四球の数に頭を抱えずにはいられません。トレードチップにできるどころか、ルール5対策でプロテクトする必要すらないのは寂しい限りです。
 1年間の休養を経て完全復活できなければこのままフェードアウトしていくのもやむなしでしょう。
 以降のピッチングプロスペクトもコントロールに悩んでいますが、なんだかんだでAAAまで昇格しています。クリスチャン・チャンバーレインはともかく、ウィル・クラインはルール5対策として40人ロースター入りを果たすでしょう。
 仮に、プロテクトされないとなるとルール5ドラフトの早い段階で名前が挙がることになることは容易に予想できます。
 野手は大学生2人が躍動。特にロフティンは打撃ではニッキー・ロペスの上位互換となりそうで、今後のKCを陰から支える大黒柱となりそうです。
 タイラー・ジェントリーはレギュラークラスの当落線上にいますが、早打ちな選手が多くチームBB%がメジャーワースト2位となったKCにとっては貴重な四球を選べるタイプの選手のため重宝されるのではないでしょうか。


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