【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューSD編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(6).ロバート・ハッセル(Robert Hassell):OF/LHP:左投左打:6-1/172:Independence HS:-:$5.18M

ヒッティングスキルの高さが魅力のピュアヒッター。パワーツールも兼ね備えているが、長打を意識しすぎるあまりアッパースイングになり調子を崩すことも。スピードは平凡だが、アームは強いため、CFよりもRF向き。投手としてマウンドに上がることもあり、90マイル前半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。

成績

 デビューイヤーの21年はAながらも92試合に出場して打率
.323と好成績を残します。長打の数は伸びませんでしたが、健全なBB/Kをマーク。大学上がりの一回り年上の選手が多い環境であったことも加味すると十分な成績でした。
 続く22年もA+で変わらずヒットを打ち続けているとシーズン途中でフアン・ソトとのトレードでWSHへと移籍します。ここからハッセルの苦難の道のり始まります。
 WSHへと移籍すると突如当たりが止まってしまいます。AAへと昇格しますが、環境を変えたからと言って打てるはずもなく不調を引きずったままシーズンエンド。オフに参加したAFLでは有鈎骨を骨折と災難が続きます。
 今年は巻き返しを図る年になりましたが、手首の故障にも悩まされAAで殻を破ることができず、ほぼ全てのカテゴリーでキャリアワーストの数字を残すことになってしまいました。
 SD時代とWSH時代で別人のようになってしまった原因としてよく指摘されるのが、ハードヒットを意識しすぎている点です。パワー不足を補おうと引っ張って強い当たりを狙うスイングに変えたことが逆効果となり、ヒットの数が減りそれに伴って長打も少なくなってしまっています。
 空振りも多くなっており、K%はSD時代は20%を切っていましたが、WSH移籍以降は25%以上となり今年は30%を超えています。
 SD時代からGB%が高く、長打数が伸び悩んでいた点を改善しようとした結果泥沼にはまってしまっているという印象を受けます。それに加え有鈎骨や手首といった打撃に悪影響を及ぼしやすい箇所のケガもあり、輪をかけて成績が悪化する結果になりました。
 長打増路線を貫くか、本来の打撃スタイルに戻すのかは分かりませんが、OFのプロスペクトが充実しつつある今、再度トレードの駒となる可能性も大いにあり得るでしょう。


CBA(34).ジャスティン・ラング(Justin Lange):RHP:右投右打:6-4/185:Liano HS:-:$2.15M

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。昨春までは90マイル出すのがやっとだったが、日を追うごとに自己最速を更新し、今では最速100マイルをマーク。キレのいいスライダーとのコンビネーションで奪三振の山を築く。チェンジアップのクオリティは平均レベル。

成績

 ドラフト時はずば抜けたカタログペックが目を引き、1巡目指名と高額の契約金を手に入れましたが、今の時点ではそれに見合う活躍ができていません。
 デビューイヤーの21年は故障に悩まされRkでわずか9試合の登板に留まります。22年は開幕前にルーク・ボイトとのトレードでNYYに移籍しますが、2年目にもかかわらずRkでしか投げられず、そこでもコントロールが定まらずに打ち込まれてしまう始末。特に、球速がアマチュア時代ほど出なかった点は不安になる要素でした。
 今年は3年目にしてようやくフルシーズンとなりましたが、相変わらずコントロールは定まらず防御率も4点台後半に終始しました。球速がアマチュア時代と遜色ないレベルに戻っていたことだけが明るい要素でした。
 とにもかくにもまずはストライクゾーンにボールを集めないと話にならないでしょう。マイナー通算143.2イニングで108四球ととんでもないペースで四球を出しています。
 また、頼れる変化球がスライダーを高速化させたカッターしかなく、上記のようなコントロールではピッチングの幅はかなり制限されています。
 使える変化球を増やすか、まともにストライクを投げれるようになるかをしないとこの先はジリ貧でしょう。


2(45).オーウェン・ケイシー(Owen Caissie):OF:右投左打:6-4/190:Notre Dame HS:-:$1.65M

パワーツールとヒッティングツールを兼ね備えており、確実に仕留めつつハードヒットも飛ばすことができる。高校生にしては辛抱強いアプローチを見せ、ピッチセレクションも優秀。スピードは平凡だが、RFでの動きは悪くない。アームは優秀な部類に入る。

成績

 SD傘下でプロデビューする前にダルビッシュ有らとのトレードでCHCへと移籍します。21年にRkでデビューすると打ちまくり、すぐにAへと昇格。翌年はA+スタートで初のフルシーズンとなりますが、11HR&OPS.751と可もなく不可もなくな成績に終わりました。
 AAスタートの今年は120試合に出場して22HR&OPS.918と大ブレーク。公式のマイナー全体のトップ100にもランクインし、大出世となりました。
 パワーツールで高い評価を得ており、打球速度の速さはマイナーでもトップクラス。プロ3年目にしてようやくドラフト前から評価の高かったパワーをアウトプットすることに成功しています。
 また、高校時代と変わらず四球を多く選ぶことができており、BB%はどのクラスでも10%を下回ったことがありません。
 一方で、コンタクトスキルの低さは懸念材料。今年は打率.289とはいえ4割を超えるBABIPに助けられたことも事実。マイナーを通してK%は30%を前後で推移しており、メジャーに昇格したはいいものの三振の山を築くこともあり得るでしょう。
 守備ではスピード不足に加えルートランもよろしくないようで、アーム以外で目立つことが少ないようです。


3(80).コール・ウィルコックス(Cole Wilcox):RHP:右投右打:6-5/232:Georgia:-:$767.8K

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は2シーム気味に動き、最速で100マイルをマークする。スライダー、チェンジアップ共に高い評価を得ており、カタログスペックだけならエマーソン・ハンコックに負けず劣らず。壊滅的だったコントロールは4試合のみながらも、劇的に改善。フルエフォートのデリバリーも少しばかし力感が抜け、リリーフ転向の不安を払拭した。

成績

 プロでデビューする前にブレイク・スネルとのトレードでTBへと移籍。21年にTB傘下のAでデビューとなりました。デビューイヤーはシーズン途中でトミー・ジョン手術を受けることとなり、わずか10試合の登板に終わりましたが、イニング以上の三振を奪い四球はわずか2個だけと好投し復帰後に期待が持てる成績でした。
 22年のシーズン途中に復帰という異例のスピードでマウンドに戻り7試合のリハビリ登板をこなすと、今年はいよいよフルシーズンデビューとなりました。
 21年の時のようなセンセーショナルな成績が期待されましたが、AAで25試合に投げて防御率は5点台。奪三振数も伸び悩みました。
 復帰後はアマチュア時代のようなスピードが出ず、90マイル前半で推移したまに96マイルが出るレベルに落ちてしまっているようです。球威不足もあってか、長打を打たれることが多く今年の被長打率は4割を超えていました。
 ドラフト前年時のようにスピードを出そうと躍起になってコントロールを乱すことがなくなったのはいいことなのですが、コントロールを重視して出力を抑えて投げていたところに手術の影響による球速低下が重なり球威が落ちてしまった印象を受けます。
 球速が戻りさえすればすぐにでもメジャーでリリーフとして使えそうですが、アマチュア時代の球速を取り戻すことができなければ4~5番手のスターターに収まりそうです。



総括

 ここに名前が出ている選手は全員トレードで他球団に移籍しており、昨今のSDの動きの多さを象徴しています。1巡目のロバート・ハッセルを始め、ジャスティン・ラング、コール・ウィルコックスと契約金の高さの割にはマイナーで苦戦しておりバリューのあるうちにトレードで放出したのは間違いではなかったでしょう。
 1人気を吐いているオーウェン・ケイシーは来年中のメジャー昇格も見込めるところまで来ていますが、CHCはメジャーチーム、プロスペクト共にOFが充実しているためこの中に割って入るのは難易度が高そうです。
 伸び悩んでいるプロスペクトもポテンシャルがあることだけは間違いないので、どこかのタイミングで大きく跳ねるかもしれません。

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