3年後...2018MLBドラフトレビューCHW

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ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
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1(4). ニック・マドリガル(Nick Madrigal):SS/2B:右投右打:5-7/165:Oregon State:$6.411.4M($6.411.4M)
今ドラフトでもトップクラスのヒッティングセンスが最大の魅力。コンパクトなスイングで、確実にコンタクトすることができる。ただ打ち返すだけでなく、状況によって打球の方向を変えることができるバットコントロールのよさも兼ね備えている。アプローチもよく、四球の数が三振の数を上回ることも。HRを量産するパワーはないが、ギャップを抜き二塁打/三塁打を打つことは可能。守備ではハンドリング、送球の正確さで高評価を得ているが、肩は平凡なため、大学時代と同じ2Bを本職とするのが無難だろう。スピードは平均以上で、盗塁には積極的。

成績

2年でマイナーを卒業し既にメジャーでレギュラークラスの活躍をしており、ここまでは文句なしの活躍でしょう。今年はシーズンアウトの故障をしたことに加えてチームが地区首位ということもあってトレードでCHCに放出ということになりましたが、交換相手がクレイグ・キンブレルであることを考えるとバリューの高さをうかがい知れます。アマチュア時代からここまでスタッツの内容が変わらない選手も珍しく、天賦の才とはこのとを言うのでしょう。惜しむらくは現代野球ではその才が軽んじられがちなところです。


2(46). スティール・ウォーカー(Steele Walker):OF:左投左打:5-11/190: Oklahoma:$2M($1.556.1M)
身体能力は高くないが、ヒッティングスキルの高さと「頭に火がついている」と表現されるアグレッシブさでカバー。常に全力プレーを心がけており、打席では常にフルスイング。かといって、大味なわけではなく、ボールの見極めやコンタクトスキルは非凡で簡単にはアウトにならない。パワーポテンシャルはそれほど高くないが、パンチ力はありシーズン15-20HRを打つことはできるだろう。スピード、肩の強さともに平凡であるため、主にLFを守るが打球反応の早さやルート取りは優秀で、RF/CFでもプレーは可能。

成績

好成績を残した19年のオフにノマー・マザーラとのトレードでTEXへ移籍。20年のシーズン中断をはさみ、TEX傘下1年目となった今年でしたが少しブレーキを踏むことになりました。持ち味だったピッチセレクションが機能せず三振は増えて四球は減るという結果に。また、一説では長打を狙おうとしすぎてアベレージを残せるスイングになっていないとも。エネルギッシュなプレースタイルとは裏腹にセールスポイントは地味な選手ですが、今はそのセールスポイントを見失っているようです。守備走塁でも大きくプラスの数値を残せる選手ではないだけに、打撃での復活に期待したいところです。



3(81). コナー・ピルキントン(Konnor Pilkington):LHP:左投左打:6-3/225: Mississippi State:$650K($726.7K)
速球の球速がドラフトイヤーに急激に低下。17年まで90マイル中盤を維持していたが、90マイル前半程度しか出なくなり評価を下げた。チェンジアップの評価が高く、右打者が相手でも苦にすることはない。スライダーも向上の一途をたどっており、先発としては球種のバリエーションに不足はない。狙ったコースに投げることができる優れたコマンドも有している。デリバリーは力感がなく、スムースで長いイニングを投げても崩れることがない。体格も申し分なく先発としての条件は満たしているため、低下した球速をどうやって取り戻すかが今後のカギ。

成績

今年のトレードデッドラインでシーザー・ヘルナンデスとのトレードでCLEへ移籍しました。19年に129イニング、今年は100.2イニングと20年の中断をはさんで2年連続で100イニング以上をクリアしている耐久性は証明済。内容もソリッドで既にAAに到達しており、メジャー昇格もそう遠くない話でしょう。問題は球速ですが、いまだにかつてのような球速は戻っておらず遅い速球でコーナーを狙うピッチングが続いているようです。そのためか、持ち前のコマンドの割には四球は少し多いように思います。ただ、たまに95マイル近いスピードも出ているようで、コンスタントにマークできるようになれば風向きも変わるでしょう。


4(108). レンシー・デルガド(Lency Delgado):SS:右投右打:6-3/215: Doral Academy:$525K($517.8K)
粗削りながらも身体能力の高さが随所に見られるタレント。打撃ではパワーポテンシャルが光り、引っ張った際の打球速度は素晴らしいものがある。一方でタイミングを取るのに苦労したり、空振りが多かったりと難点も多い。守備では肩の強さが見どころだが、体格的に将来は3Bに移るのではと予想されている。それでも、徐々にハンドリング等の評価を上げており、スピードを維持できれば、将来もSSとしてプレーできるだろう。

成績

2年間Rでプレーし、今年ようやくAデビューとなりましたが、2度のIL入りと打撃不振もありスタッツは過去最低となりました。過去最低といってもRでさえ目ぼしい打撃成績を残せておらず、前途多難であることは目に見えていたでしょう。打撃以外でも今年はSSでの出番なしと、苦境に立たされています。現時点では若さ以外の武器はない状況です。


5(138). ジョナサン・スティーバー(Jonathan Stiever):RHP:右投右打:6-2/205:Indiana:$386.8K($386.8K)
速球は常時90マイル前半程度だが、最速で96マイルをマークすることもある。また、速球を2シーム、シンカー気味に動かしたり、4シームとして回転数を上げたりと器用に投げ分けることができる。この速球のコマンドにも優れており、球速以上に打ちづらい。縦に鋭く割れるカーブとアームスピードの落ちないチェンジアップの評価が高い。スライダーも投げるがこちらは不安定。デリバリーは癖がなく力感も少ないため、故障のリスクは少なめか。ソリッドなイニングイーターとしての活躍が見込まれる。

成績

19年A+での好投を認められ20年いきなりメジャーデビューを果たしましたが、2試合目で4HRを喫するほろ苦い結果となりました。今年もメジャーでの登板のチャンスがありましたが、1アウトも取れずに失点を重ね汚名返上とはなりませんでした。さらに、8月にはシーズンエンドとなる手術を受けることになり、メジャーデビュー以降踏んだり蹴ったりな結果になっています。球速上昇などポジティブな情報もありますが、それ以上にCHWの早期昇格の犠牲になってしまったネガティブな面が大きく映ってしまいます。



6(168). コディ・ホイヤー(Codi Heuer):RHP:右投右打:6-5/195: Wichita State:$260K($290.2K)
最速97マイルの沈む速球とアームスピードを変えずに投げるチェンジアップで三振の山を築く。スライダーはまだまだ発展途上だが、ポテンシャルの高さを推す声もある。大学最終年に先発に転向した。体格は先発として文句なしだが、元々コントロールがいい方ではないため、短いイニングを全力で投げるリリーフの方が適任か。長い手足を上手く使ったデリバリー。

成績

プロ1年目は大学時代の延長でスターターとして投げていましたが、Rkでも打ち込まれスターターは断念。19年からはリリーフに回ると才能が開花。20年にはメジャーデビューを果たし、チームのポストシーズン進出に大きく貢献しました。アマチュア時代から大きく変わったのは球速でしょう。かつては最速で97マイルでしたが、現在は最速で99マイルをマークしておりパワーアップは明らか。課題だったスライダーも優秀な球種に成長しました。今年は20年のような好投を見せられず、マドリガルと共にトレードに出されましたが、CHCではまずまずのピッチングでした。K/9が著しく低下した点は気になりますが。


7(198). カベラ・ウィーバー(Caberea Weaver):OF:右投右打:6-3/180: South Gwinnett HS:$226.2K($226.2K)
短距離走のスーパースター、ウサイン・ボルトを引き合いに出すスカウトがいるほどのスピードスター。守備でもそのスピードを活かし、広いレンジをカバーすることができる。打撃では、パワーポテンシャルが評価されているが、まだ試合では発揮できていない。体重をつけて基礎的な体つくりから始めたいところ。アプローチも発展途上で、手を出すべきではないボールにまで、スイングしてしまうことも多い。

成績

1年半Rkで過ごし、今年は満を持してAでのプレーとなりましたが結果は散々。A+に昇格してももちろんスタッツが上向くことはありませんでした。ヒットの1/3が長打とパワーポテンシャルを感じさせる部分はありますが、そもそもバットに当たらないことが多く、パワーツールが目立ちづらくなっています。また、ピッチセレクションも相変わらずお粗末でスピードを活かすために出塁するということもできていません。唯一の武器であるスピードの一点張りで、テレンス・ゴアのような存在になる以外にメジャーデビューへの道は開いていないようにも見えます。



8(228). アンドリュー・ペレス(Andrew Perez):LHP:左投左打:6-2/196: South Florida:$150K($179.2K)
最速95マイルの速球と、カーブ、チェンジアップのコンビネーションで緩急をつけ空振りを奪うピッチングスタイル。大学ではリリーフに専念。17年までコントロールの悪さが深刻だったが、大学最終年はそれを克服。完全にコマンドできるようになったわけではないが、四球は大幅に減った。デセプションに優れたデリバリーで、特に左打者に対して有効。将来はシチュエーショナルレフティとして活躍することになるだろう。

成績

大学時代からのコントロールの悪さは完全に払しょくされたようで、プロでは安定してストライクを取れるようになっています。19年には41試合に登板しており、リリーフとして1シーズンを投げるスタミナも有しているようです。今年はAAでまずまずのピッチング。HRを打たれることが増えたのは気になるところですが、順調にいけば来年中にはメジャーデビューを果たしそうです。


9(258). ガンナー・トラウトワイン(Gunnar Troutwine):C:右投右打:6-1/230: Wichita State:$10K($153.2K)
大学最終年にアプローチを大幅に改善。四球を大量に選びかつ三振を減らすことに成功し、評価を一気に上げた。体格は立派だがパワーはいま一つ。全く長打が打てないわけではないが、コンスタントに打てるほどのパワーはない。守備では肩の強さが光るが、特筆すべきほどでもない。フットワークの拙さが守備の低評価につながっているが、徐々に改善されている。赤い髭がトレードマークで、コンディショナーやワックスをつける日もある。

成績

アンダースロット要員での指名でしたが、大きくつまずくことはなく今年はAAに到達。打撃成績もキャリアハイで、相変わらず出塁率の高さを誇っています。守備に関してはCに留まることができており、アマチュア時代よりも評価を上げているのかもしれません。数年後にはソリッドな控えCとしてメジャーで球団を転々としている選手になるのではないかと思います。


10(288). ベネット・スーザ(Bennett Sousa):LHP:左投左打:6-3/185: Virginia:$10K($142.3K)
速球の最速は94マイル程度だがよく沈み、低めに決まった時の球威は素晴らしいものがある。これに鋭く曲がるスライダー、右打者対策としてのチェンジアップを組み合わせるピッチングスタイル。ボールをストライクゾーンに投げることができれば大量の三振を奪い、打者を圧倒するピッチングを見せるが、ストライクゾーンにボールを投げ込むことに苦労するほどコントロールが悪い。チェンジアップの使い方が上手く右打者も苦にしないため、コントロールさえ改善できればブルペンの一角として活躍できるだろう。

成績

不安だったコントロールはプロ入り後、矯正されつつあります。今年は若干四球が増えましたが、AAA昇格後はそれもおさまったようです。奪三振能力の高さはずば抜けており、アウトピッチのスライダーのキレは相変わらずハイレベルなため、ぜひともメジャーで見てみたい選手です。


+1
14(408). デービス・マーティン(Davis Martin):RHP:右投左打:6-2/200:Texas Tech:$130K
多彩な球種を駆使するジャンクボーラー。速球は90マイル前半の2シームと90マイル中盤の4シームを投げ分け、それにスライダー、チェンジアップを組み合わせる。いずれの球種もそれほど高い評価を得ていないが、全ての球種でストライクを取ることができるコントロールのよさでカバーする。投球術にも長け、不意にクイックで投げるなど、打者を打ち取るためなら手段を選ばない。大学最終年にリーダーシップの高さを見せたことは評価に値する。

成績

20年のシーズン中断をはさんで2年連続20先発をクリア。19年には140イニング以上投げており、シーズンを通してスターターとして投げることができることを証明しました。一方で、内容は伴っておらず大学最終年も含めると3年連続で防御率4点台後半と失点の多さが目立ちます。K/9やBB/9などは悪くないためシンプルに力不足なのかもしれません。とはいえ、それでもAAにまで到達しており、内容はどうあれローテーションに空きができればスポットで昇格できるかもしれません。


総括(2018)
OAK以上に1巡目大学生に固執する傾向があったが、今年もそれは変わらず。それでも従来のパワー重視から切り替えたのか、パワーツール・速球の評価が高い選手の指名は控えめだった。基本的には大学生偏重で、高校生は上位10名中2名のみ。大学生は投手・野手問わず、シーリングよりも高いフロアーが重視されていたように見受けられる。将来の首位打者候補のニック・マドリガルもさることながら、試合内外で存在感を放つスティール・ウォーカーにも注目したい。高校生の2人は粗削りなアスリートタイプで、マイナーのクラスを上げるのに、長い時間がかかるかもしれない。大量に指名した大学生投手だが圧倒的なボールを投げる選手はおらず、フロアー重視の傾向が最も顕著だった。それでも、大学最終年に評価を下げてしまったコナー・ピルキントン、デービス・マーティンの2人が復調すればそれなりの陣容にはなるだろう。

総括(2021)
 上位10人中3人が既にメジャーデビューを果たし、さらには4人が他球団へトレードと早期昇格と異動が激しくなっています。早期昇格が望める大学生を固めて指名し、バリューを上げてトレードチップにするという動き自体は悪くないので、当初の思惑通りかは分かりませんが成功と言えるでしょう。
 将来の首位打者候補だったマドリガルですが、故障でシーズンアウトとなってしまいやむなくトレードとなりました。粗削りなパワーバットが多いCHWにとってマドリガルのようなコンタクトヒッターは貴重な存在でしたが、対価のでかさを考えると仕方ないでしょう。
 高校生2人は現時点で外れの可能性が高く、早くも大きな壁にぶち当たっているようです。一方で、アンダースロット要員の2人は予想以上の活躍を見せており、いい買い物になったかもしれません。

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