【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューDET編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
コメント

1(1).スペンサー・トーケルソン(Spencer Torkelson):1B:6-1/220:Arizona:-:$8.42M

大学の先輩であるバリー・ボンズが持っていたFreshmanのシーズンHR記録を塗り替えた強烈なパワーの持ち主。左右関係なくフェンス越えの打球を飛ばすことができる点が強み。アプローチも成熟しており、コンタクトスキルも兼ね備え打撃では隙なし。守備と走塁は平凡。

成績

 マイナーリーグが中止となったドラフトイヤーを経た21年にプロデビュー。A+で好成績を残すと、とんとん拍子で昇格しAAAにまで到達しました。22年は開幕メジャー入りを勝ち取り、110試合に出場しました。
 昇格スピードだけ見るとさすがは全体1位指名の選手なだけはあると感じますが、成績は伴っていませんでした。
 一気にAAAまで昇格した21年はクラスが上がるにつれ露骨に打率が落ちており(A+では.312、AAでは.263、AAAでは.238)、開幕メジャーとなった22年は110試合と恵まれた出場機会にもかかわらず8HR&OPS.604のみに留まり400打席以上の野手の中ではメジャーワースト3位となるfwarをマークしました。これでは、新人王投票で無得票に終わるのも無理はありません。
 ただ、さすがは全体1位指名の選手なだけはあり、このままフェードアウトすることはなく今年はある程度のバウンスバックに成功。159試合の出場でチームトップとなる31HR&34二塁打&67四球をマーク。打球速度ではメジャーでもトップクラスの数字を残しており、パワーツールではメジャーでも通用することを証明しました。
 それでも物足りなく感じてしまうのはやはり打率の低さでしょう。今年は昨年からゴロの打球を減らしたものの、逆に打球を上げすぎてしまい弱いフライを打ち上げることが多くなってしまいました。
 角度を低くしすぎた1年と高くしすぎた1年を経て来年こそちょうどいいラインを見つけることができれば、大学時代のような完全無欠の成績を残すことも夢ではありません。
 守備はいわずもがな。3Bなんてもってのほかの動きの鈍さは健在です。


2(38).ディロン・ディングラー(Dilon Dingler):C:右投右打:6-3/210:Ohio State:-:$1.95M

CFからCへと転向した変わり種。センターラインの端から端へと移動しても、能力の高さを発揮。持ち前のアームの強さと身体能力の高さを活かし、Cとしても高い評価を得ている。シュアな打撃が持ち味で、状況に応じて広角に打ち分ける器用さとボールの見極めに長ける。パワーポテンシャルは低くないが、長打は少ない。ソフモアからキャプテンを任されるほどの人望の厚さもプラス。

成績

 大学時代はパワーレスな打撃がネックでしたが、プロ入り後は3年連続で2桁HRをマーク。大学時代からスイングも激変しており、よりバットからボールへと力を伝えるために大きく足を上げるようになっています。
 一方で長打に重きを置きすぎたのか、三振数が大幅に増加し打率も.256がキャリアハイと大学時代の確実性は失われているようです。
 守備では依然として高い評価を得ており、アームの強さも身体能力の高さも健在。気になるのは耐久性で、シーズン100試合以上の出場は1シーズンのみと1年を通して試合に出続けるタフネスさに欠けるように見えます。
 今後は、ルール5ドラフト前に40人ロースター入りし、シーズンではジェイク・ロジャースの控えとしてメジャーに定着するようになるのではないでしょうか。
 いっそ、身体能力の高さを活かしてスーパーユーティリティーとして起用するというのも面白い選択肢にはなりそうです。


CBB(62).ダニエル・カブレラ(Daniel Cabrera):OF:左投左打:6-1/187:LSU:-:$1.1M

スムーズなスイングでラインドライブの打球を飛ばすことができる。パワーも平均以上。打撃ではアプローチの拙さが玉に瑕だったが、今年は改善傾向にあることを見せていた。ずんぐりむっくりな体型の通りスピードはない。高校時代は投手もしていたということもあって、アームは平均以上。

成績

 プロデビュー後の3年間AAで跳ね返されつづけています。打撃以外でプラスツールがなく、打たないとバリューを見出せない選手なのですがAAではOPS.700超えさえ果たせずにいます。
 GB%が非常に高く今年に至っては50%以上がゴロと足の遅い選手にとっては何もプラスに働かない数字となっています。デビューイヤーから年々GB%が高くなっており、改善の兆しどころか悪化の一途をたどっています。
 いいところに目を向けるとBB/Kの数字は年々よくなっており、今年は44四球に対して40三振とBB>Kを達成。打球を上げることさえできればまだワンチャンスありそうです。


3(73).トレイ・クルーズ(Trei Cruz):SS:右投両打:6-2/200:Rice:-:$857.4K

かつてはコンタクト重視のアプローチをとっていたが、パワーポテンシャルを発揮させるためハードヒット狙いへとシフトチェンジ。一時期四球が減り三振数が増えたが改善傾向にある。スピードが平凡でカバーできるレンジも限られているため、SSに留まるのは難しいだろう。

成績

 大学時代は徐々にパワータイプへとシフトチェンジを図っていましたが、プロ入り後は出塁重視の粘り強いタイプへと変貌しています。
 プロデビューした21年から3年連続で15%以上のBB%をマーク。打率は.250を上回ったことはありませんが、出塁率は.330を下回ったことがありません。
 とはいえ、全体的に見ると低打率でそれほど長打力があるわけでもないのでレギュラーとして使うには厳しいでしょう。
 そんな立ち位置を本人もチームも知ってか、SS以外にも2B/3B/CFと比較的難しいポジションに入ることでユーティリティーとして立ち回ろうとしています。いずれのポジションでの評価も悪くなく、もう少し打撃で進歩を見せることができればベンチプレイヤーとしてメジャーデビューを果たせるかもしれません。


5(132).コルト・キース(Colt Keith):SS/RHP:右投左打:6-3/195:Bollpxi HS:-:$426.6K

打撃ではアップサイドの高さが光る。細身な体はまだ大きくする余地があり、スイングも力強く今後の成長次第ではパワーポテンシャルもうなぎ上りとなる可能性も。守備ではアームの強さに依存気味でフットワークに課題を残す。投手としては、90マイル前半の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーションを見せる。

成績

 過去2年間故障のため100試合未満の出場に留まっていましたが、フルシーズン健康で過ごした今年は持っているポテンシャルを余すところなく発揮しました。
 故障前も出場すれば好成績を残していたもののサンプル数が少なく信用に足るか判断が難しくなっていましたが、今年の活躍でそんな疑問を払拭しました。
 魅力は何といってもパワーとアベレージを両立させた打撃。流れるようなスムーズで鋭く、両手でフォロースルーをするスイングはコリー・シーガー(TEX)を彷彿とさせます。アマチュア時代から体重を増やしており、力強さも増しています。おそらく来年は満を持してのメジャーデビューとなりますが、出場機会に恵まれれば新人王候補にも名前が挙がるでしょう。
 打撃では特に何の心配もいらないとは思いますが、心配なのは守備と走塁。今年で22歳になったばかりと若いにも関わらずスピードは平均以下で、ポジションもSSに留まるのは難しいと厳しい意見が目立ちます。IFすら怪しいとの見立てもあり、ポジション探しに苦労することになりそうです。


総括

 スペンサー・トーケルソンは全体1位にふさわしい選手だったのか。この3年間で残した数字だけで判断することはできませんが、個人的にはやはり全体1位で指名するには物足りない選手になるのではないかと思います。
 今年は来年に向けて希望の持てる数字を残しましたが、逆に今後もこの程度の数字、30HR~35HR、OPS.780~.800程度に収まってもおかしくはありません。せめてポジションが3Bで大きなマイナスにならなければ、上記の数字でも満足のいくものになるのでしょうが、来年からはミゲル・カブレラが居座っていたDHに鎮座することになると思うと若くして晩年のアルバート・プホルスのようになるのではないでしょうか。
 20年のDETの指名の大当たりは全体1位指名ではなく、5位指名のコルト・キースでしょう。打撃では本当に隙がなく、早くメジャーで見れないものかとワクワクする選手です。問題はトーケルソン同様にポジションとなるでしょう。もしかすると玉突き的にキースが1Bに収まる可能性もありますが、キースがトーケルソンより守備が上手い保障は一切ありません。
 もう1人メジャーで戦力になりそうなのは、ディロン・ディングラーですが打撃で過度な期待は禁物でしょう。故障の多さを考えると別のレギュラークラスのCを据えたうえで控えに回すのが最適解のようにも見えます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?