【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューATL編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(25).ジャレド・シュスター(Jared Shuster):LHP:左投左打:6-3/210:Wake Forest:$2.2M:$2.74M

90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で97マイルをマーク。以前は2シームを主に投げていたが、現在はノビのある4シームを主体としている。ベストピッチはチェンジアップ。落差が大きく、ブレーキもきいているため容易に空振りを奪うことができる。スライダーもアウトピッチとしても使える優秀なボール。コントロールが不安定な点と大学でのスタッツがイマイチな点が気になるところ。

成績

 21年のプロデビューはAAの3試合でかなり打ち込まれて全体の数字を落としたものの、17試合に先発しイニングを大きく上回る奪三振数もマーク。コントロール、コマンド共に安定しアマチュア時代から一皮むけた姿を見せました。
 翌22年は前年苦戦したAAで好投し、AAAにまで昇格。フルシーズンを離脱することなく投げ切り、139.1イニングを消化して耐久性の高さも証明しました。
 22年の好投を認められて23年は強豪のATLにおいて開幕メジャーの座を勝ち取る偉業を達成。華々しいキャリアが続くかと思われましたが、肝心の年にスランプとなりメジャーとAAAを往復することになりました。AAAでも苦しい内容のピッチングが続き、40人ロースターの整理のためにかオフにはアーロン・バマーとのトレードでCHWへと放出されました。
 アマチュア時代から球速帯はそれほど変わっていませんが、長いシーズンを投げ切るためか最大出力が落ちてしまっており現在では97マイルをマークすることはありません。球威のない速球をゾーンに投げ込むからか、被本塁打はマイナー時代から多く長打を多く許す原因となっています。
 23年はコントロール/コマンドにも苦しみましたが、22年まではそこで四苦八苦していた投手ではないため23年がキャリアワーストの年だったと考えることもできるでしょう。奪三振数が回復せず支配的なピッチングは取り戻せなくとも、しぶとく投げ続けるイニングイーターとしてローテーションを回す役割を任されそうです。


3(97).ジェシー・フランクリン(Jesse Franklin):OF:左投左打:6-1/215:Michigan:$497.5K:$599.1K

打撃ではパワーポテンシャルが魅力。豪快なスイングでハードヒットを飛ばす。じっくりとボールを見るアプローチに変えてからは四球数が大幅に増えたが、元々コンタクトスキルに不安があるため三振も増えアベレージも落ちた。プラスのスピードを有しているが走塁でも守備でも活かしきれていない。アームも平凡なためCFよりもLF向き。オフのスキー中の事故による負傷で今年は出場試合が0。

成績

 21年のプロデビューイヤーにいきなり24HRをマークし、持ち前のパワーポテンシャルの高さを披露。22年はトミー・ジョン手術を受けたため15試合のみの出場に留まりましたが、復帰した23年はAAで15HRをマークしパワーがさび付いていないことを証明しました。
 ただ、やはり不安なのはコンタクトスキルでしょう。毎シーズン30%近いK%をマークしており、それに伴い打率も低空飛行となっています。アマチュア時代並みに四球を選べていれば低打率も大きな問題とはならないのですが、BB%は平均レベルに留まっており出塁率も落ち込んでいます。
 現状打撃でプラスのツールはパワーしかなく、メジャーで使ってもらうには厳しい現状です。
 スピードは衰えておりませんがトミー・ジョン手術を受けたこともあってウィークポイントのアームにさらに不安を抱えることになってしまい、LF以外のポジションをメインに据えるのが難しくなっている点もバリューを下げる一因になるでしょう。

4(126).スペンサー・ストライダー(Spencer Strider):RHP:右投右打:6/195:Clemson:$449.3K:$451.8K


成績

 ドラフト当時はトミー・ジョン手術から復帰直後であり大学のシーズンがキャンセルされたこともあってほとんど情報がありませんでしたが、ATLどころか20年のドラフトクラスの中でも一番の出世株となりました。
 100マイル超えの4シームと抜群の切れ味を誇るスライダーを武器に1年でマイナーを卒業すると、2年目の22年には前年のワールドチャンピオンであるATLのローテーションに定着しエース級の成績を残し新人王投票でも2位に入りました。
 続く23年はキャリア初となるフルシーズンでのスターターとしての起用でしたが、見事期待に応えサイヤング賞投票でも4位となり今では誰もが認める球界のエースとなりつつあります。
 驚異的なのはやはり4シーム。クローザーが1イニングを全力で投げ切っているかのようなノビとスピードのある4シームをイニングを跨いでも投げ続けることができ、現時点でキャリアで最も三振を奪っている球種になっています。
 それに加え、第2のアウトピッチであるスライダー、時折挟まれるチェンジアップもハイクオリティとあっては打者は手も足も出ません。
 一方で、深いカウントまでもっていくことが多く球数がかさむためか、四球も被安打も少ないにも関わらず5~6回でマウンドを降りてしまうこともしばしばあり、23年は故障なくローテーションを回しきったにも関わらず200イニングには到達しませんでした。
 分業制となっている今長いイニングを投げることにこだわる必要はないかもしれませんが、質に加えて量も伴えば今度こそ誰にケチをつけられることなくサイヤング賞を受賞することになるでしょう。


5(156).ブライス・エルダー(Bryce Elder):RHP:右投右打:6-2/220:Texas:$847.5K:$336.6K

90マイル前半の速球とカッター、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で95マイルをマーク。シンカー系のボールでゴロを打たせる。アウトピッチはキレのあるカッター。どのカウントからでも投げられる点が強み。スピンのきいたカーブにも高評価を得る。チェンジアップもまずまず。コントロールがよく、無駄にランナーを出すことは少ない。

成績

 21年のプロデビューイヤーにいきなりフルシーズンをスターターとして投げ切り、137.2イニングを消化するワークホースっぷりを発揮。続く22年もAAAで100イニング以上を消費する傍ら、メジャーでもスポット的にスターターとして起用され50イニング以上を消化します。そのうえ、メジャーで完封勝利をマークし、量をこなしているだけではない点も見せました。
 23年は開幕1試合のみAAAで投げた以降は1度も欠けることなくメジャーチームに帯同してローテーションを回し、オールスターにも選出されました。
 アマチュア時代から大きくモデルチェンジはしれおらず、今もシンカーでゴロを打たせるピッチングを続けており毎年50%近いGB%をマークしています。クラスがあがるにつれ奪三振数は減り、ハードヒットもリーグの平均よりも多く許していますが打球角度を上げさせないことでいずれも大きな痛手とはなっていません。
 プロ3シーズンで既に477.1イニングも消化しており、キャリアワーストでさえ130イニング以上消化している耐久性もピッチングの内容以上に目を見張るものがあります。
 肘や肩に負担がかかるような球速帯でもなくデリバリーもシンプルなため、今後も故障とは縁遠いキャリアを過ごすことになりそうです。

総括

 1巡目のジャレッド・シュスターはメジャーまで到達しましたが、そこでつまずきトレードで放出。3巡目のジェシー・フランクリンも大きな故障と拙いコンタクトスキルで伸び悩んでいますが、上位2人が戦力にならなかったことを加味してもおつりが返ってくるくらい下位の2人が活躍しています。
 サイヤング賞候補筆頭の奪三振王のスペンサー・ストライダーに加え、故障のリスクが少ないイニングイーターのブライス・エルダーの二枚看板は強力。長らくATLの王朝を支える2人を手にしただけで十分満点以上のドラフトとなったでしょう。


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