【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューMIA編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(3).マックス・マイヤー(Max Meyer):RHP:右投右打:6/170:Minnesota:-:$7.22M

90マイル中盤の速球と80マイル後半のスライダー、80マイル前半のチェンジアップのコンビネーション。Freshmanから絶対的クローザーとしてチームに君臨。今シーズン途中から先発へと転向し対応している。鋭く曲がるスライダーがアウトピッチでクオリティは非常に高い。コントロールも安定しており、隙を見せない。サードピッチであるチェンジアップのクオリティ向上がカギ。

成績

 21年にいきなりAAでデビューを果たすと、20試合に投げて防御率2.41と好投。終盤に昇格したAAAでも好投を続け全体3位は早すぎる指名ではないことを証明しました。
 アマチュア時代の課題であったチェンジアップのクオリティが大幅に向上しており、スライダー頼りだった投球から幅を広げることに成功しました。
 また、元々評価の高かったスライダーもさらに進化を遂げており明らかに外れているゾーンに投じても思わずスイングを仕掛けてしまうハイクオリティな球種となりました。
 22年もAAAで好投しいよいよメジャーデビューとなりましたが、そこに落とし穴がありました。メジャー2試合目の登板2アウトを取ったところで右肘を痛めて降板すると、その後の検査で靭帯が断裂していることが判明しトミー・ジョン手術となりました。
 今年はマイナーでも登板がなく終わり、来年からマイナーでのリハビリが始まると予想されます。一部ではスターターとしては体がもたないとも指摘されています。大学時代から球速が上がっており、100マイル近い球速も時折投じることができるようになったことから小柄な体にさらに負担がかかっているのかもしれません。
 ただ、MIAのメジャーチームはマイヤーの手術後もスターターに故障者が続出しているため、復帰すればとりあえずスターターとして起用されるのではないでしょうか。実力もマイナーでの実績も申し分ないため、復帰後の活躍に期待したいですが出力はある程度調整する必要はありそうです。



2(40).ダックス・フルトン(Dax Fulton):LHP:左投左打:6-6/220:Mustang HS:-:$1.86M

90マイル前半の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速でも93マイルと平凡だが、高身長を活かした投げ下ろすデリバリーのおかげで角度がつき球速以上に打ちづらい。アウトピッチのカーブはハイクオリティ。この2球種のコマンドも優秀。チェンジアップは発展途上。9月にトミー・ジョン手術を受けており、ドラフトイヤーのプレーは難しい。

成績

 ドラフト前年にトミー・ジョン手術を受けていましたが、ポテンシャルを買われてオーバースロットの契約を手に入れていました。ドラフトイヤーはマイナーのシーズンが中断していたため、結局他のドラフティーと同じ21年デビューとなったのは不幸中の幸いでした。
 デビューイヤーはA/A+で防御率4.6と振るいませんでしたが、2年間実戦でほとんど投げていなかったことを考えるとそれほど悪い数字ではありません。
 22年はA+/AAで防御率を3点台に収め、フルシーズンを投げ切り118.1イニングを消化する充実したシーズンとなりました。内容もよくイニング以上の三振数を奪い、BB/9も3.2と好投しました。
 高校時代から球速が3マイルほど上がり、現在は93マイルが平均球速となったことに加え、持ち前のコントロールとハイクオリティのカーブは健在でアマチュア時代から進歩を見せています。
 今年もAAスタートとなり、好投を続ければメジャーデビューも視野に入っていましたが、5月に肘を痛め手術が必要ということになりシーズンエンドしました。
 トミー・ジョン手術が必要なほどの故障ではなかったようですが、今回で2度目の肘の手術ということで選手生命がかなり削られていることは間違いないでしょう。MIAとしては来春からは投球を開始できると踏んでいるようですが、慎重なリハビリが必要になるでしょう。


CBB(61).カイル・ニコラス(Kyle Nicolas):RHP:右投右打:6-4/225:Ball State:-:$1.13M

90マイル後半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で100マイルをマークすることも。スピードだけでなく、スピンレートも高くノビがある。これにカット気味に変化するスライダーを組み合わせ大量の三振を奪う。他のブレーキングボールのクオリティはイマイチ。先発経験が少なくコントロールも不安定なため、リリーフに落ち着くだろう。

成績

 プロ入り後もスターターとしての起用が続き、2年連続で20試合以上先発しました。ただ、いずれも100イニング越えにならなかったのはチーム方針もあるとは思いますが、四球の多さも関係しているでしょう。一塁側に大きく流れるデリバリーのためか、コントロールは安定せず無駄に球数を要することになっています。
 ただ、これでも幾分かアマチュア時代よりもコントロールが改善されていることも事実。無理に100マイルを出そうとせずに、上手くスピンをかけてよりノビのあつ4シームを投じることに意識を置いているようです。
 21年シーズン後にジェイコブ・スターリングスとのトレードにPITに移り、今年はメジャーデビューを果たしました。
 基本的にはスターターメインでの起用でしたが、今年はAAAでついにリリーフがメインとなりメジャーでの登板も全てリリーフとなりました。
 やはり、影を落とすのはコントロールの悪さで、四球の数を大幅に減らさなければハイレバレッジな場面での登板はもちろんなく、メジャーに留まることも難しくなるでしょう。また、ニコラスのもう1つの欠点として被本塁打の多さが挙げられます。高めの4シームを多投することが原因かと思われますが、なまじコマンドも安定しないため痛打をくらうことが多いようです。


4(104). ジェイク・エダー(Jake Eder):LHP:左投左打:6-4/210:Vanderbilt:-:$560K

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。高校時代からコントロールが悪く大学でブルペン転向。それが功を奏したのかコントロールが改善された。速球は最速で97マイルをマーク。アウトピッチはスライダーだが、高校時代評価が高かったチェンジアップも高いクオリティにある。ケープコードでは先発に再チャレンジしており、先発復帰も視野に入れている。

成績

 デビューイヤーの21年は1巡目指名のマックス・マイヤー同様にAAでデビュー。すると、マイヤー以上の好投を見せ15試合に先発して防御率1点台と上々のデビューを果たしましたが、その年の途中にマイヤーより一足先にトミー・ジョン手術を受けることとなりました。
 22年の全休を挟み今年はAスタート。シーズン途中にジェイク・バーガーとのトレードでCHWへと移籍しました。
 今年こそ手術からの復帰ということでコントロールが荒れてしまい成績を落としてしまいましたが、実力は本物と見ていいでしょう。
 指名順位が4巡目となったのも大学時代にスターターとしての実績が少なかったからですが、シーズンが中断していなければスターターとして投げていたことは間違いなくより早く指名されていた可能性が高いでしょう。
 いずれもハイクオリティな3球種を優秀なコマンドで投げることができる実力が完全に復活すればメジャーデビューもそう遠くない話だと思われます。


5(134).カイル・ハート(Kyle Hurt):RHP:右投右打:6-3/215:Southern California:-:$418.2K

90マイル中盤の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は日によってバラつきはあるが、調子がいい日は最速で97マイルをマーク。変化球はカット気味に鋭く曲がるスライダーとチェンジアップが主力。特にチェンジアップはよく沈み、容易に空振りを奪えるボール。カーブはカウント球にも使えておらず、投げない方がいいだろう。コントロールが悪く、カタログスペック通りの実力を発揮できていない。

成績

 21年シーズン前にLADへとトレードされたため、MIA傘下では1イニングも投げることなくチームを去ることとなりました。
 21年はRk/Aで12試合の登板に終わりましたが、22年はA+/AAでフルシーズンを経験。A+では防御率2点台と好投しましたが、AAではBB%が21.9%と異様に高くなるほどコントロールが荒れてしまい全体的に数字を落とすこととなりました。
 AAスタートとなった今年は昨年ほどのコントロールに苦しまずにまずまずの成績を残すと、ドラフティーが入団するタイミングでAAAに昇格。9月には1試合ながらもメジャーデビューを果たしました。
 徐々にコントロール改善されつつありますが、それでもまだ四球が多い方でメジャーレベルでスターターとして起用するには二の足を踏む数字です。
 ただ、球速は安定しつつあり、ドラフト時は使えないと評したカーブも改善の一途をたどっておりレパートリーは豊富と、コントロール以外のツールはスターターとして申し分ないレベルにあります。
 層の厚いLADのメジャーチームですが、スターターは故障者に加えフリオ・ウリアスがDVで離脱。エースのクレイトン・カーショウもFAという状況のためひょっとするとスターターとしての役回りをもらえるかもしれません。


総括

 1巡目のマックス・マイヤーはオーバーピックかと思っていましたが、マイナーでの好投を見ると間違いであったことを認めざるを得ません。19年に日米大学野球で見た日本のバッターに粘られてなかなか三振が取れなかった投手とは別人のように成長しました。
 1巡目以降の投手もポテンシャルの高さをマイナーでは見せつつも、故障やコントロール難でなかなか好成績を残せずにいます。ただ、既にメジャーデビューしている選手が3人とスカウティングの慧眼は光りました。
 コントロールは安定しなくとも球速でバリューを見出せるリーフタイプの投手ををいずれもトレードチップに使っており、戦略面でも成功していると言えるでしょう。

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