3年後...2018MLBドラフトレビューMIN

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
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成績
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1(20). トレバー・ラーナック(Trevor Larnach):OF:右投左打:6-4/210: Oregon State:$2.55M($3.12M)
豪快なスイングで長打を量産するスラッガー。かねてからブレーク候補に挙げられており、大学最終年に才能を開花させた。スイングは大振り気味で、慎重なアプローチとも相まって三振は多め。それでも、三振と同じ数ほどの四球を選ぶことができる。打撃以外のツールは平凡。守備・走塁では、目だった活躍は見せない。肩の強さについては意見が分かれるところで、RFよりもLF向きだという声もある。いずれにしろ、守備では大してチームに貢献できないだろう。

成績

デビューイヤーから自慢の打撃では常に好成績をマーク。三振は相変わらず多かったですが、その分四球をしかっり選ぶアプローチは健在で、それに加え18-19年は2シーズン連続で打率.300以上をクリアしていました。21年5月にはメジャーデビューも果たしました。昇格直後は低打率ながらもメジャー初HRを含めコンスタントに長打も出ていましたが、7月に息切れし8月には再度AAAにオプションされました。昇格直後に即大活躍とはなりませんでしたが、打球速度は非常に優秀でメジャーでもトップクラスの数字でした。問題はやはり空振りの多さでしょう。ボールゾーンに手を出す割合は平均と比べても大差はなく、むしろ若干いいくらいなのですが、空振りする割合が多くせっかく見極めてストライクゾーンのボールにスイングを仕掛けにいってもバットが空を切るということが多いようです。打率が.250に乗れば打撃でプラスが出る選手なので、なんとかこの点さえクリアできればといったところでしょう。課題だった守備では思いのほか健闘しているようで、いずれの守備指標もわずかにプラスと足を引っ張るようなプレーはしていないようです。


2(59). ライアン・ジェファーズ(Ryan Jeffers):C:右投右打:6-4/228: UNC Wilmington:$800K($1.140.6K)
巨体から生み出されるパワーが魅力。ツボに入った時の打球の飛距離は、メジャーリーガー顔負け。高い放物線を描く軌道は、美しさすらある。アプローチも雑ではなく、打つべきボールを見極める能力は高い。肩の強さは、平均以上だが、それを活かすスキルは併せ持っていない。Cとしての能力は低く、プロでもCとして出場できるかは厳しいところ。緊急の際に、マスクも守れる1B/OFに落ち着くだろう。

成績

デビューイヤーに好成績を残すと、19年はA+/AAで100試合以上に出場し2桁HRをクリアしました。20年にはメジャーデビューを果たし、少ない出場機会数ながらも自慢のパワーを披露し、OPS等もまずまずの成績で翌年に期待できるものでした。21年は開幕から25人ロースターに入りましたが、不調を極め、5月にマイナーに再降格。6月に再昇格後は低打率ながらもコンスタントに長打を打ち、確約されたレギュラーとまではいかずとも主にCを務めました。ラーナックと同じく、打球速度は優秀ですがバットにボールが当たらず低打率に苦しむことになっているようです。特に高めの速球に滅法弱くアウトピッチとして使われて三振が多くなっています。守備ではラーナックと同じく予想外にプラスの数字を出しています。特にフレーミングが優秀なようで、アマチュア時代の守備評価は当てにならないなと思うばかりです。


4(124). デショーン・キアシー(DaShawn Keirsey):OF:左投左打:6-2/195:Utah:$600K($442.6K)
打撃では、コンタクトスキルの高さが光り、ラインドライブの打球を広角に打ち分けることができる。積極的なアプローチのため、四球/三振共に少なめ。パワーツールの評価は高くないが、全くHRが打てないというわけではなく、二塁打/三塁打とのトータルで考えるとむしろ長打は多い部類に入る。身体能力が高くスピードが最大のウリだったが、17年に痛めた股関節を手術してから少しスピードが落ちたとも。それでもCFとして十分なレンジをカバーし、ルート取りも正確なため守備では輝きを失っていない。走塁は盗塁成功率の低さが気になるところ。

成績

プロ入り後も故障が多く、50試合以上出場したシーズンがなく本来の実力を発揮するに至っていません。それでも21年はA+でプロ初HRをマークするなど成績は徐々によい方向へと向かっているようです。ただ、やはりこれ以上故障が重なるとキャリアの岐路に立たされることになるかもしれません。


5(154). コール・サンズ(Cole Sands):RHP:右投右打:6-3/215: Florida State:$600K($330.4K)
最速96マイルの動く速球と、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は球威もありムービングも悪くないが、コマンドに難を抱えており、ストライクに入らない、真ん中に集まるといった悪癖がある。カーブの扱い方が上手く、ストライクを取りに行ったり、空振りを狙ったり自在に操る。チェンジアップもブレーキが効いており、左打者に対して有効な球種。デリバリーは、スムーズなスリークォーター。持っているボールのクオリティ自体は悪くないため、あとはコマンド次第だろう。

成績

プロ入り後は課題だったコントロールが安定し、19年、21年とシーズンを通して好成績を残しています。大学時代に多投していたシンカーから4シームをメインにモデルチェンジ。シンカーよりも、持ち前の縦に割れるカーブをより活かせる4シームをメインにすることは悪いことではないでしょう。まだ、100イニング以上投げたシーズンはなく、耐久性に疑問はありますが、スペックはスターターとして申し分ないでしょう。


6(184). チャールズ・マック(Charles Mack):SS:右投左打:6/190: Williamsville East HS:$500K($253.7K)
大きく後ろにバットを引いてタメを作るスイングが特徴。そのため、パワーポテンシャルの高さに光るものがある。一方で空振りが多く、ヒッティングルールはイマイチ。高校時代はSSを主に守っていたが、スピードツールが平凡であり、崩れた体勢での送球に難があるため、プロでは他のポジションに転向する必要があるだろう。肩の強さも平凡なため、2B/LFが主戦場となりそう。

成績

打撃ではパワーポテンシャルの高さを感じる成績を残していますが、打率が上がらずトータルでは平凡な数字に終わっています。ただ、BB%は高くK%も極端に高い数字ではないため好転する可能性はあるでしょう。一番のサプライズはCへのコンバート。20年に準備を進め21年にはついにCをメインとしてプレー。C守備はそれなりに評価されているようです。


7(214). ジョシュ・ウィンダー(Josh Winder):RHP:右投右打:6-5/210: Virginia Military Institute:$198.7K($198.7K)
高校時代から球速を大幅に上昇させ、ドラフト候補と目されるまでになった。90マイル前半の動く速球と、カーブ、カッターのコンビネーション。カーブをカウント球やアウトピッチとして使う。カッターは左打者に有効なボール。いずれの球種でもストライクゾーンに投げ込めるコントロールを有している。一方で、簡単にストライクゾーンに投げすぎなのか、被本塁打が多い。シンプルで力感のないオーバースローのデリバリー。故障の少ない耐久性、1試合を投げ切ることもできるスタミナを有するストライクスロワーなので、将来はイニングイーターとしての活躍が見込まれる。契約金は全て貯金した。

成績

大学時代に伸び続けた球速がプロ入り後も留まることを知らず、現在は最速で98マイルをマーク。コンスタントに出せるわけではないが、92~3マイルの球速帯が今後上がる可能性もあるでしょう。それでいて、持ち前のコントロールは崩しておらず、投手として理想的な成長曲線を描いています。球威不足から課題だった、被本塁打の多さも過去のものです。プラスの評価となる変化球に欠けていましたが、現在はカーブをアウトピッチとして活用しているようです。既に上位で指名されたサンズを上回る評価を受けており、投手としてこの年のドラフトの出世頭となっています。


8(244). クリス・ウィリアムス(Chris Williams):C:右投右打:6-1/225:Clemson:$10K($162.1K)
17年のドラフトクラスだったが、肩の故障で評価を落とし大学に残留。大学最終年にキャリアハイの成績を残し、実力を見せた。最大の魅力は強烈なパワー。簡単にスタンドまで打球を飛ばすことができる。一方でヒッティングツールに難があり、大学時代打率.300クリアが0回と懸念材料。大学では肩の強さを活かしてCに入ることもあったが、プロでは完全に1Bに転向。身体能力は高く、1B守備もそつなくこなせるだろう。母親が日本人で、ミドルネームは「Kenichi」。

成績

デビューイヤーこそ好成績を残しましたが、その後は停滞。大学時代から指摘されていた低打率が、プロでは顕著となり2シーズン連続で打率が.200以下という厳しい結果になっています。ポジションについては、19年、21年とCメインで出場。1Bでは完全にバリューがないのでなんとかCとして活路を見出す他ありません。


9(274). ウィリー・ジョー・ギャリーJr.(Willie Joe Garry Jr.):OF:左投左打:6-1/170: Pascagoula HS:$225K($146.5K)
バランスの取れたスイングで、ラインドライブの打球を量産することができる。線が細く、現時点ではパワーに欠けるが、今後体格が大きくなれば平均レベルにまで成長するだろう。守備ではスムーズなフットワークとグラブの扱い方の上手さが光る。肩はそれほど強くないが、送球は正確。

成績

プロ3シーズンで未だにOPS.700超えは0とかなり厳しい状況です。最大の原因は三振の多さ。21年はK%が30%を越えており、バットに当たらない状態になっています。また、バットに当たってもGB%が50%を越えており、長打も出にくくなっています。まだ、21歳と若いですがそろそろブレークしないとこのままの成績をずるずると続けることになりそうです。


10(304). レイジー・グレース(Regi Grace):RHP:右投左打:6-1/215: Madison Central HS:$350K($138.4K)
春先に速球のスピードが5マイルほど上昇し注目を集めた。常時90マイル前半の速球と、カーブのコンビネーション。カーブの評価も高く、相手のタイミングを外すには有効なボール。ゆったりとしたスリークォーター気味のデリバリーが特徴。

成績

故障が多く、プロ入り後シーズン10試合以上の登板はありません。21年は少ない登板機会ながらも好成績を残していますが、果たして。


11(334). マイケル・ヘルマン(Michael Helman):2B:右投右打:6-1/190:Texas A&M:$220K
コンタクトスキルに長けた小兵。スイングは当てるだけのものでなく、しっかりと捉えてギャップを抜く打球を飛ばすことができる。積極的に打ちに行くアプローチのため、四球も三振も少ない。スピードツールの評価が高く、盗塁成功率も高い。そのスピードを活かした広いレンジをカバーする2B守備も高評価を得る。肩が平凡なためSSを守るのは厳しいか。冬でも室内で簡易版の野球をするほどの野球好き。

成績

19年に大スランプに陥りましたが、21年は復活。特に長打数が特段に増え、大学時代の姿から考えると意外な結果です。また、21年になってからは三振も四球も多くなり大学時代とは正反対の成績になっています。一方で守備は2Bも追いやられ現在はOFがメイン。プチブレークを果たしとはいえ25歳でようやくAA到達となかなか厳しい状況です。


総括(2018)
野手に注目すると、パワーツールに長けた選手が多く占めることとなった。1巡目のトレバー・ラーナックらを筆頭に、飛距離が魅力のスラッガーが顔を揃える。パワーツールがウリではない野手でも、最低限のものは備えており、非力さが目立つ選手はいない。また、守備に疑問が残る選手を多く獲得。他球団がこぞって指名するSSの選手はチャールズ・マックのみ。そのマックも、SSに残ることは難しいとされている。この戦略が続くのかどうかは気になるところ。投手は上位10人中3人のみ。速球でゴリ押しする投手はおらず、指名した選手の中で最速はコール・サンズの96マイルに留まった。

総括(2021)
1巡目と2巡目のラーナック、ジェファーズが既にメジャーデビュー済と上位指名は成功となりましたが、下位指名は厳しい状況。守備に難有りだと目されていた選手が多かったのですが、斬新なコンバートがあったり、予想外にセンターラインに残ったり、守備でプラスを出したりとアマチュア選手の守備の評価の難しさを実感します。ラーナック、ジェファーズ共にメジャーの壁に阻まれている感もありますが、純粋な打球速度などはトップクラスできっかけさえ掴めば跳ねる可能性もあるでしょう。
当時小粒な印象だった投手はサンズとウィンダーがブレーク。サンズはシンカーボーラーから4シーマーへとモデルチェンジし、現代的な投手へと変貌を遂げ、ウィンダーは大学時代の球速上昇の勢いをそのままに100マイル近く投げるようになりました。パワーピッチャー不足と評した当時の総括は、既に過去のものとなっています。


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