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フィクションシリーズ

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ようこそフィクションの世界へ。短文のおはなしシリーズ
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記事一覧

【フィクション】わたしだけの秘密

彼の腕の中へもぐり込んで眠りにつこうとしたら、左脇の下にほくろを見つけた。 「こんなとこ…

スミス
4年前
5

【フィクション】ぼくの卑怯な心

文章、というものを生業にして、もう何年が経っただろう。ぼくは主に、「お話」を編みながら生…

スミス
4年前
11

【フィクション】ねこの模様

ブチにミケに、くつした、ハチワレ。 いろんな色、いろんな模様のねこがいる。 彼らがどうや…

スミス
4年前
5

【フィクション】植物と愛

無印で買った多肉植物を、2週間ほどでダメにしてしまったことがある。育てやすく人気、という…

スミス
4年前
6

【フィクション】彼女の指

鍵盤の上をしなやかに踊る彼女の指を、ずっと眺めていた。華麗なステップを踏んだり、感情のま…

スミス
4年前
6

【フィクション】雨宿り

「なんか雨の匂いがする。もうすぐ降るかもね」 隣で彼がつぶやいたら、本当に雨が降り出した…

スミス
4年前
2

【フィクション】ムダ毛からの(しなやかな)逃走

「ムダ毛って生えてくんの早すぎない?」とアヤが自分の腕を触りながら言う。剃ったばかりなのにもうちくちくする、と口をすぼめている。 とある日曜日。アヤの広い家に集まったわたしたちは、女4人でぴーちくぱーちくとしゃべくっていた。 「ムダ毛なんてものは本来はないよ。毛は等しく生えてくるもんでしょ? 必要な毛かムダな毛かは、人間が勝手に決めているだけ。これって明らかな毛差別だよね」 新井が主張する。 「毛からしたら差別かもしれないけど、人間はやっぱり美を追求する生き物じゃん。自

【フィクション】焼肉女子会

じうじうと音を立てながら肉が焼き上がっていく。適当に火が入ったところで私が肉を裏返し、互…

スミス
4年前
3

【フィクション】前転おじさん

ある日マキが散歩をしていると、信じられないものを目撃した。前転で道を進んでいるおじさんが…

スミス
4年前
4

【フィクション】別れ話

「別れよう」と告げた瞬間、彼はおどろきすぎて声を失っていた。まばたきひとつせずに目を見開…

スミス
4年前
3

【フィクション】世界が終わる春に。

雲ひとつない青空に、新緑が光って映る。 うっすらと吹いてくるあたたかい風は初夏の香りがし…

スミス
4年前
9

【フィクション】街角と彼女

イヤホンをつけて、ポケットに手を入れて、ぼくは街を歩く。黙々と。 「ちょっと待ってよ、歩…

スミス
4年前
4

【フィクション】お役立ち

そんなもの、なんの役に立つの? 暴力に近いことばだ、と浴びせられるたびに思う。 しかしな…

スミス
4年前
3

【フィクション】早起き組と夜ふかし組

夜ふかしの人と早起きの人が交差する時間。 あの人はどちら側の人だろう? Twitterのタイムラインを眺めて、チーム分けをしてみる。 あの人は早起き。この人は夜ふかし。早起き、夜ふかし。 わたし? わたしは大の夜ふかし野郎だ。 一周して超早起きマンになれそう。無理だけど。 昔から、早起きはきらいだった。 もっとも苦痛だったのは夏休みのラジオ体操だ。近隣の公園で、朝も早くからみんなが集うアレだ。 母親にせっつかれて行ってみるものの、任意とはそれすなわちなんの責任もないという