見出し画像

カーニヴォアダイエット

カーニヴォアダイエットとは

アメリカを中心に人気がある carnivore diet について。
カーニヴォアというのは肉食動物のことで、動物性食品だけ食べる食事のことをカーニヴォアダイエット(痩せるための方法という意味ではなく、食事という意味)と呼んでいます。

5-6年くらい前から増えてきたように思いますが、今ではヴィーガンのようにダイエットの種類として確立しています。私も何度か挑戦しましたが継続するのが難しく数日で挫折しています。継続のしやすさではヴィーガンの方が簡単です。しかしヴィーガンが失速しつつあるのに対してカーニヴォアは人口が増えていて、ヴィーガンからカーニヴォアに転向する人も少なくありません。

カーニヴォアダイエットの利点

カーニヴォアダイエットのメリットはいくつもあり、まずは糖質がほとんどゼロになるので痩せやすい。タンパク質と脂質が多くなるため満腹感を得やすく、インスリンも出ないためです。食後に眠くなることもありません。糖質を少なく抑えるケトジェニックダイエットと同じです。減量のために始める人が1番多いと思います。

また、カーニヴォアダイエット愛好者が言うには、糖尿病が治った、IBS(過敏性腸症候群)が治った、橋本病などの自己免疫疾患が治った、筋肉がつきやすくなった、鬱が治った、関節炎や腰痛が治った、パーキンソン病が良くなった、体臭がなくなった、などの報告が非常に多いです。それゆえか宗教的なまでに熱狂的なファンが多いダイエットです。

カーニヴォアダイエットのやり方

食べて良いのは、肉とシーフードと卵と乳製品になりますが、主に牛肉などの反芻動物の肉を主食としている人が多いです。調味料で使って良いのは塩のみ。牛肉と塩と水のみのダイエットはライオンダイエットと呼ばれています。

カーニヴォアダイエットはエリミネーションダイエット(特定の食材を排除して何が自分の身体に合わないか見極める方法)の一つです。ライオンダイエットから始めて他の動物性食品を足していったり、植物性食品を再度取り入れる人もいます。

カーニヴォアダイエットコミュニティで避けるべきとされている主な原料(素材や物質)は以下のものです。

糖質
レクチン 
シュウ酸
グルテン
植物性油脂(オメガ6主体のシードオイル)
食品添加物全て
アルコール

糖質の害は糖質制限の理由と同じで、老化や炎症の原因になるため。ブドウ糖より果糖のほうが悪質だという意見もあります。糖質を忌避するカーニヴォアダイエット実践者は乳糖も避けるために乳製品はバターとハードチーズのみです。はちみつは糖質の塊なので食べません。カーニヴォアから言わせればはちみつは植物性食品でヴィーガンからすると動物性食品というどっちつかずの存在です。

レクチンとシュウ酸は植物が作り出す毒で、植物は動物のように逃げられないので毒を持つことで身を守っているという理由です。シュウ酸は結石の原因となり、レクチンはleaky gut syndrome リーキーガット症候群などを引き起こすと言われています。人によっては食物繊維も腸に刺激して良くないと言う人もいます。一般的には健康に良いとされる野菜や果物も実はこれらの毒がたっぷり入ったものもあります。
その他の植物性毒といえばグルテンで炎症やリーキーガットやアレルギーの原因になります。

植物性油脂はオメガ6主体のものが多く、オメガ6は炎症を引き起こすと言われています。また製造の過程や高温調理で酸化してしまいます。

食品添加物は物によっては発がん性が確認されていて、発がん性がなくても何らかの影響があるものが多いので、オムニヴォア(植物も肉も食べる雑食、日本人のほとんど)もヴィーガンも、食事に気を使う人は避けています。食品添加物は原料が動物性食品だけのものはほとんど存在しません。カーニヴォアダイエットは動物性食品のみに制限するため加工食品が全く食べられなくなり結果的に添加物フリーになります。ハムやベーコンなどの加工肉も当然食べられません。

アルコールは全て植物性です。そもそもアルコールの害は言わずもがなです。ケトジェニックでは糖質の少ないアルコールを飲む人もいますが肝臓を痛めては痩せるどころではありません。ちなみにコーヒーやお茶を飲むカーニヴォアもいますが植物性なので植物性の毒もあります。糖質がとれない代わりにカフェインに依存しているようにも見えます。

カーニヴォアの中で特に好ましいとされている食品は以下のものです。

グラスフェッドの反芻動物(牛やバイソンや羊)の肉
殺菌処理されていない乳製品
完全放牧の卵
天然の魚介類(小さいものに限る)

グラスフェッドというのは草を食べて育った家畜です。草食動物というには本来は草を食べるので、穀類で育てたグレインフェッドは不自然に太らせるのは不健康だという理由です。グラスフェッドの家畜の肉や乳製品の脂質はオメガ3の割合が多く、グレインフェッドの家畜の脂質はオメガ6が多いというデータもあります。実際は僅かな差であり、両者を比較した人間への影響のデータはないので気にしない人もいます。日本は健康よりも味重視なのでグレインフェッドの牛肉がほとんどです。ネットショップで外国産のグラスフェッドビーフが買えますが高価です。ちなみに豚肉や鶏肉はやはり餌に問題があると考える人が多く、牛肉をメインに食べている人が多いです。

乳製品は乳糖を避ける人は食べませんが、殺菌処理されていない牛乳やチーズは人間に有益な酵素があるという人もいます。日本では殺菌処理されていない乳製品はおそらく違法なので出回っていません。

完全放牧の卵というのは、pasture raised eggs を私が勝手に訳したものですが、平飼い(cage free)よりも一羽あたりのスペースが広く確保されているものです。またとうもろこしや大豆などの餌を与えるとオメガ6が多くなるので、幼虫など本来鳥が食べるものを食べて育った鶏の卵が良しとされています。こちらも日本では見たことがありません。

魚介類はオメガ3が豊富ですが、養殖のものは抗生物質などで汚染されているため避けて、天然でも重金属等の汚染が少ない小型の魚が安全とされています。天然と養殖ではオメガ3と6の割合が違います。特に人気の魚は天然の鮭ですが、こちらも日本ではまず見ないです。

オメガ3と6の話が多かったですが、オメガ3の効果は証明されているためカーニヴォア以外の人でも意識して取り入れたい栄養素です。魚介類に豊富ですが、魚介類はそもそも海の中の藻類からオメガ3を取り入れています。なのでヴィーガンの人はこの藻類のサプリメントで摂取することもできます。

その他、カーニヴォアに限らず健康を気にするコミュニティではマイクロプラスチックが嫌われています。加工食品はプラスチック容器に入っていることが多く、さらにインスタント食品をそのまま電子レンジで温めるなどすると大量に溶け出します。
また、ビタミンDが重要視されているので適度な日光浴も推奨しています。ビタミンDはビタミンというよりもホルモンです。日本では美白や皮膚がんを気にして太陽を恐れる人が多いですが、ビタミンD不足による骨粗鬆症や癌や鬱病のリスクの方がはるかに大きいです。ほとんどの人はその土地の紫外線量にあったメラニン量を持っています。例えばオーストラリアは紫外線が強いので、昔から住んでいるアボリジニの人たちは大丈夫ですが、後から移り住んだ白人には紫外線が強すぎるため日焼け対策が必要です。しかし日本の場合はアジア人ならば神経質にならなくても皮膚がんになる危険性は少ないはずです。

カーニヴォアダイエットの問題点

最初の問題はどこでビタミンCを取り入れるのかということ。糖質を摂らないカーニヴォアではビタミンCは要らないという人もいれば、壊血病になるため生レバーをたまに食べるべきだという人もいます。動物の内臓には僅かながらビタミンCが入っているためです。イヌイットの伝統的な食事はほぼ動物性食品ですが、ドキュメンタリーではたしかに生レバーを食べていました。その他の栄養素としてはミネラル類のサプリメントを摂取している人がいますが必須ではありません。モンゴルの遊牧民やマサイ族の伝統的な食事もカーニヴォアなので、人間はカーニヴォアでも生きていけるようです。それが人間の健康にとって最適かは別ですが。

その他の問題点としては、コレステロール値が上がるということです。カーニヴォアの人たちの言い分は、健康診断で高すぎとされる数値には根拠がなく、高めの方が免疫力も高まり鬱病にもなりにくいのだそうです。

また赤身肉は癌のリスクを高める可能性があるとされていますが、それは調査のときにソーセージなどの加工肉を赤身肉としてカウントしていたり、肉を多く食べる人たちはアルコールなどその他の健康に悪い習慣を持っている人が多いので赤身肉そのものに危険があるわけではないということです。

タンパク質のとりすぎが腎臓に悪いこともよく言われますが、カーニヴォア推奨者が言うにはそのような事実はないということです。しかしタンパク質と脂質のバランスは重要で、どちらかに極端に偏るのは良くありません。

カーニヴォアダイエットのインフルエンサー

カーニヴォアダイエットが広まった理由の一つとして医師でカーニヴォアダイエットを推奨する人が多いというのがあります。以下、カーニヴォアコミュニティで有名な医師たちです。

shawn baker
youtube中心に活動、ベストセラー本も書いており、joe roganともカーニヴォアについて対談しています。

paul saladino
元ヴィーガンで現在はカーニヴォアに果物を足したダイエットを推奨。人間は適度な糖質が必要だが、野菜と穀物は害がある、果物と動物性食品で必要な栄養素は摂れるというスタンス。本も出していてjoe roganとも対談しています。

ken berry
YouTube中心に活動しており本もベストセラーになっています。

anthony chaffee
YouTubeを中心に活動

Paul mason
YouTubeを中心に活動

どんな食事が健康に良いのかは医師でも意見が別れるところですが、現在長寿のお年寄りはオムニヴォアがほとんどのためバランスの取れた食事をすすめる医師が多いのではないでしょうか。
特に日本では完全に動物性食品のみの食事は受け入れられるとは思えません。日本の伝統的な食事を完全否定するので、ヴィーガン以上に強い反発を招くのではないでしょうか。また、人間の歯の形状や腸の長さから察するに、人間はオムニヴォアとして進化していると思います。食事の楽しみという点でも、カーニヴォアダイエットはあまりにも選択肢が少なくストレスがたまります。カーニヴォアの人たちが言うには現代人は糖質中毒ということですが、脳はエネルギー源としてグルコースを好むので脳が糖質を美味しいと感じるのは当然です。人間の肥満が一般的な問題となっているのは戦後のことで、ホモサピエンス(とそれ以前の歴史全て)は長らく飢餓との闘いでした。なので脂肪を蓄えることが重要であり、効率よく脂肪を蓄える糖質と脂質の組み合わせを美味しく感じるようにできています。今後どのように人間が進化するかは分かりませんが、現代ではクリーンオムニヴォア(加工食品などを避けた健康的な雑食)が現実的だと思います。

ヴィーガンとの対立

当然ながら、動物性食品を一切食べない使わないヴィーガンとは意見が対立します。
宗教上の理由や健康にために菜食をしている人たちは他人が何を食べようと気にしませんが、動物愛護と環境保護のために菜食をしている人たちは、他の人たちも菜食にならなければ自然も動物も救えないので当然カーニヴォアには反対します。

まずはヴィーガンの主張から。家畜の餌用の穀類を育てるために森林破壊がされている。家畜の餌になる穀物を人間が食べれば飢餓が減る。牛のゲップは温室効果ガス。家畜の飼育環境は劣悪で動物虐待になる。肉や乳製品は健康に悪い。などです。

カーニヴォア側の反論はこうです。グラスフェッドならば環境破壊しない。牛の糞も肥料になる。完全放牧で最後は苦痛を最小限にすれば飼育環境は悪くない。人間の健康にとって肉は必需品なので命を奪うことは悪ではない。農作物を作るために虫や小動物が犠牲になっており犠牲になる動物の数はヴィーガンのほうが多い、農薬が環境に悪影響を与えている。牛のゲップの影響は過大評価されている。肉が健康に悪いというのは、食品会社などが自社製品を売るために広めた、糖尿病などの病気が減れば医師と製薬会社は儲からなくなる、本当は肉食の方が健康に良い。などです。

どちらの意見も詳しく納得できるものです。お金が絡んでいるのはどっちもどっちで、健康面に関しては体質の違いもあり評価するのは難しい。
動物愛護と環境保護に関しては、たしかに全てに家畜を完全放牧にして家畜のために穀類を生産するのをやめれば現状よりもよくなります。しかし効率が悪いため値段は上がるのは間違いありません。人類全員がカーニヴォアになれば米も小麦も野菜も果物もいらないので、それらの土地で反芻動物を飼育すれば土地も足りるのかもしれませんが、現実的には無理です。

私の経験から

もしカーニヴォアが健康面で1番優れていたとして植物が身体に悪かったとしても、多くの人は嗜好品として炭水化物や果物を食べたいと思うでしょう。砂糖は麻薬よりも強い中毒性があると言われています。糖質制限ならば低糖質のお菓子も作れますが、甘いものが全く食べられないカーニヴォアは私には無理でした。食にあまり興味がないとか、ステーキさえあれば何もいらないという人に向いています。

また、日本に住んでいるとカーニヴォアダイエットですすめられる食材は簡単に手に入らないので不安を抱くこともありました。そしてヴィーガンでもカーニヴォアでも外食できないという点が致命的です。欧米ならばヴィーガンの選択肢はありますが、それでも店は限られるので社交生活に制限がかかります。カーニヴォアは世界のどこでもまだ一般的でないため(マサイ族などを除いて)、やはり社交生活に支障が出ます。人に説明するのも面倒、言っても反発を招くことがあるので言いにくい、家族に反対される、というのもあります。同調圧力が強い日本でこのような極端なダイエットは受け入れられません。私の考えでは、何を食べるかは基本的に個人の自由なので、他人に強制したり迷惑をかけない限りは批判すべきでないと思います。

以上、カーニヴォアについて書きました。非常に長くなりましたが、カーニヴォアを試してみたい方の参考になれば幸いです。
結果的に挫折してしまっても、色々なダイエットを試すのは自分の体質を知るのに役立ちます。興味を持ったら数日だけ、自炊の時だけ、など試してみるのも良いと思います。
どの食材に自分の身体がどんな反応をするか、アレルギー検査だけでは分からないことを知るためにエリミネーションダイエットは有効で、私は自分に合わない野菜やスパイスを特定できました。
しかし私が1番大切にしているのは、美味しい食事を楽しむことです。健康に1番悪いのはストレスです。自分の身体が何を必要としているか、身体の声を聞きながら食事を楽しんでください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?