昨日ちょっと私がSNSで叩かれた話

私が1月で卒部した某演劇サークルの夏公演が今月頭に行われた。前回に比べると格段に面白くなっていると思ったし、後輩達も「甘やかされたい」と言っていたので求められていない余計な指摘は書かずにアンケート用紙を提出した。

しかし後日、後輩から「あのアンケートだけで済むと思ってないですよね???個別の感想ください」と催促された。指摘する点も書いた方が演劇に誠実なのではという考えとあまり批判されると部員たちの今後のモチベーションに影響するのではという考えを天秤に掛けた結果、「具体的に褒めたい点」をひとりひとりについて詳しく書いてみた。
役者としてとても良い演技をしていたと思った、しかし本人は脚本家志望の子を褒める時その子には不本意に思ってほしくなくて「君の演技のこういうところが私はとても好きだしこの演技の経験が今後の脚本に活きたら素敵だとも思う」みたいなことを書いた。すると昨日Twitter上の私と繋がっていない方のその子のアカウントで

「役者としての俺が好きなんじゃなくて俺が役者でいてくれる方が都合いいってちゃんと言え
俺が誇れるのはアンタに認められる俺じゃなくて俺が誇れると思った俺なんだよ勘違いだけはするな」

と言われているのが流れてきてしまった。部員数名のいいねとともに。鍵をつけろ鍵を。
後輩に対して私は「私が認めてあげるからそれを誇れ」なんて偉そうなことを言ったことも思ったことも一度もない。偉そうにするようなプライドも自尊心も何も無い。2つ下の後輩からフルネーム呼び捨てで命令されて恐くても黙って言うことを聞いた。敬語なんか使ってもらえなくても文句を言ったことは無い。夜中に呼び出されてもメイクして会いに行った。本番の日だって後輩のオーダー通りの差し入れを事前に予約し朝からお店で受け取り持って行き観劇後は役者が着替えている間にバラシもやった。卒部した先輩にできることはそれくらいだと思ったから。偉そうというか、威厳のある先輩だった瞬間は少なくとも1秒もない。卒部しているので都合も何も無いのだが、私は何か勘違いなどしていたのだろうか。
何よりも、私はその子を誰よりも振り幅があって本番に強い役者だと本気で思っていたのでかなりショックを受けた。しかしその苦しみを打ち明ける相手も居ないのでこんな所に書いている。また公開範囲を狭めて。

彼がそう曲解する理由があるとするなら、彼の創作脚本に対する気持ちがきっかけだろう。そもそもうちのサークルは創作脚本について大きな問題を抱えていた。
発端は昨年の夏公演に遡る。
昨年の夏公演の脚本提出で、ある演劇未経験の後輩(Aとする)が突然脚本を書いてきた。しかし恐らくプロットもまともに作っていないようで登場人物のキャラはブレまくり、設定にも無理があり場転も異常な量、話の流れも急でセリフはアニメチック、無理やりな恋愛展開、でもジャンルはホラーという正直めちゃくちゃで脚本と呼びたい出来ではなかった。どうして書いてみようと思ったのか聞いてみると、「いやあ、なんかいけるかなって。」と。それなのに投票の結果数少ない高校演劇経験者だけが既成脚本に手を上げ、それ以外の皆は「せっかく書いてきてくれたから」とAの脚本を選んでしまった。その結果、脚本の不出来具合をカバーすることに演劇経験者が全力を注いで何とか形にしただけの舞台が完成した。
特に私は高校演劇時代に一度脚本を書くことの難しさに挫折した経験があったので、観劇経験ゼロの後輩が軽い気持ちで手を出し書いた初脚本の尻拭いを必死に行い、結果的にギリギリ形にできた所で「脚本頑張ったねー!」と褒められる後輩Aを見てどうしようもない気持ちになった。脚本なんて書くだけで大変なのは分かってるし、Aは労われて然るべきなんだけど。
思い出したくもない消化試合、1番の黒歴史公演だった。

昨年の夏公演。セーラー服はもう二度と着ません。



その過程の苦労がトラウマになり、それ以降サークルで高校演劇の経験がある者や観劇好きな者は未経験者の創作脚本に対して神経質になった。と同時に、その公演を成功体験と捉えた後輩達(高校演劇も観劇もしたことが無い)の中で創作脚本に挑戦することへのハードルはぐっと下がった。書いてみること自体を私が否定したことは一度も無い。ただ上演するならお金も労力も時間もかかるのだから、たかがサークルとはいえ書く時多少なりとも演劇経験のある人に相談するとかちゃんと資料集めをするとか観劇経験を積むとか、それに対する責任感を持ってほしかった。ということを反省会で話した。

で、その次の冬公演。脚本家志望当時1年生のB(私のことをTwitterに書いた後輩)が初めてサークルに脚本を提出してきた。元々お話を考えるのが好きとのことでAよりは脚本らしく見えるものだったが、主人公の冴えない男子高校生が転校先の高校でクラスのマドンナ(公式設定では顔面偏差値86)の隣の席になり都合良く話しかけられちゃうという、なろう系小説にしても褒められた出来ではないものだった。内容の系統で批判するのはちょっと、とも思ったがセリフもオタク向けアニメそのもので3次元に落とし込むにはあまりにも無理があり、キャラもブレまくりただでかい声を出すだけのくどいパートが無限に続きいらないキャラも無駄に多く主人公は後半にかけて存在感を失いラストには全然関係ないキャラ達による謎の百合展開が待っている90分もの。誰も追いつけない。あろうことか部分的にAの脚本をオマージュしていた。あとAもBも、「脚本にはなんかとりあえずJK出しとけば映えるだろ」感が否めなかった。読んだ時間を返してほしいと思うレベルだった。これを上演するとなると……と、演劇経験者が顔を見合わせ困ったのをよく覚えている。

なろう系小説やオタク向けアニメを否定したいわけではない。アニメは私も見る。でももしこれが脚本選考に通ったらまずい。夏公演みたいにまた苦労したくない。マイナスをゼロに近づけるのではなく、ゼロからプラスしていくことに労力を使いたい。夏公演の反省会で何を聞いていたんだ後輩。会場もかなり背伸びしたとこでやるし、我々なんて引退公演なのに。その危機感に背中を押され、既成脚本じゃ情に勝てないのなら私の方がましだろうと思い提出しようか迷っていた自作の脚本をカウンターとして提出して部員の投票で上演を勝ち取った。よくない動機だとは思っていたし、私の脚本だってそんな完成度の高いものじゃなかったかもしれないし、劇団の方々から見ればどんぐりの背比べ……とまではいかなくてもどんぐりと甘栗の背丈程度の差しか無いのかもしれないけど。

で、冬公演の反省会で私は再度創作脚本の扱いに気をつけるよう話した。情だけで決めたら苦労するのはそれをカバーする側だし、我々の代が卒部して演劇経験者も激減するからより丁寧に選ぶべきだと。そして別の場でBの脚本への具体的な指摘もちゃんと行った。彼はそれが「自分が脚本に挑戦すること」自体を否定されたように感じて嫌だったのではないだろうか。そしてそういう私が偉そうに見えたのかもしれない。複数彼の作品を読んだ上で発想力だけは逐一褒めていたが、その程度の褒め言葉では傷が癒えなかったのかもしれない。きつく言いすぎていたとしたら申し訳ないという気持ちと、脚本を書きたがるわりに観劇も資料集めもろくにせず知見を積もうとしてくれない無責任な彼への不満が私の中でもせめぎ合い、それ以降彼のやることに口を挟むことはやめた。どのみち卒部してるし。


冬公演で珍しく人前で泣いて桃子さんに慰められる入江


そして止める人が居なくなった今年の春公演でめでたく彼は自身の作品の上演を実現した。完成度についてはもう何も言わない。彼の脚本を直接批判した私が悪者に映ったのか、現役部員たちはその春公演の脚本についてBに直接言うことはせず影で色々文句を言っていたようだが。しかしその後に入ってきた新入部員たちは全員が演劇経験者で、夏公演(今回)の脚本会議で彼の新作はその後輩達から痛烈な批判を受けボツになったらしい。そういった複数の経験から彼は自分の脚本への批判に敏感になり、「本当にただ褒めただけ」の感想さえ曲解してしまったのではと思う。まして一度は本当に自分の脚本をあれこれ指摘してきた先輩(私)から出た言葉だったわけだし。

責任の一端は私にある。でもどうすれば正解だったんだろうか。彼もその他の脚本を書く子も高校演劇や外部の舞台に触れたことが無いのに何故か自分の作品に自信があるらしく、指摘をしても「なんやねんこいつ」という扱いを受けるのは目に見えていたし「良すぎて語彙失ったわ〜」と感想を書くことから逃げても追い詰められただろう。褒める言葉しか求めていない上、褒め方の指定もあるのか。まじでどうすれば正解だったんだ。口出しされたくないならしないけど、それなら最初から感想なんか求めてこないでほしい。

自分達の舞台の完成度を振り返ることも知らず井の中の蛙で謎の自信を持つ風潮に現在の会長は困っているらしく、頼ってくれるので私は度々話を聞いてこっそり手助けしている。他の部員から何を言われるか分からないのでもう表立って協力することはできない。どうやら会長は次の冬公演が不安で仕方無いらしい。

それを打開するためにも、今後とも演劇人の方々はうちのサークルの舞台を見る機会があったらアンケートに容赦の無い評価を付けてやってほしいです。本当は先輩の仕事なのに、私の言葉では説得力に欠けるらしく悔しくて仕方ないですが……
見に来て頂くならもう私が交通費と観劇料金500円を負担すべきなのかもしれないとさえ思います。「来てください」とまでは言えません。

でも今回演劇人の方々が来てくださったことで脚本志望の子達がやっと観劇をする気になったらしいからそれは良かったな。「だから言っただろうが」と一言言ってやりたいけど我慢する。特にBは発想力に関しては優れた後輩だと個人的に思っているので、今後彼の脚本で良い作品が見られたらいいな。


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