『天国、それともラスベガス』の音楽制作:KORG Minilogueがやってきた
世界に向き合い、世界の風を感じるためにあつらえた、ガジェット多めの自宅デスク・名付けて『天国、それともラスベガス』。最初に組み上げてからおよそ3年に時が流れ、少しずつガジェットの集積度が上がっています。どうしても引き算にならない。残念ながら、これが習い性です。
そんなデスクで最近どっぷりはまってるのが、音楽制作です。
いままでAbleton LiveというDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション=音楽制作ソフト)とソフトウェアシンセでハウスミュージックを作ってきましたが、今回、あらたに物理物体のシンセサイザー、KORG Minilogueを導入しました。まだ足すのかガジェットを。ええ、足します。以下のようにです。
1. Push 2 が押した背中
話は去年(2022年)の3月末に遡ります。何年も前からAbleton Liveを持ってはいても全然使いこなせてなかった僕は、一念発起してベルリンに本社のある同Ableton社のPush 2という専用のコントローラーを買いました。ソフトウェア開発でもUIの重要性が叫ばれる昨今、物理コントローラーが僕を変えてくれるかもしれない。
これが大正解。急に音楽制作のワークフローがさらさらと流れるようになり、去年1年間で出来た楽曲のプロジェクトファイルは88。仕事からの帰宅後や休日には、だいたい週に2曲のペースで大好きなハウスミュージック作りに没頭していました。
これだけ数を作れば中には良い感じに出来たものもあって、ためしに海外のハウス系インディーズレーベルにいくつかデモを送っていたところ、フランス・リールにあるOHMELYA Musicというレーベルに拾ってもらえて、デジタルながら自分のepがリリースされました。僕もだいぶいい年なのに、この年で海外レーベルからデビューとか、人生わからないものですね。
それでは聴いてください。Spinnage(スピナージ/僕のアーティストネームです)で、「Calling」です。こんな感じの曲を作っていました。
2. 物理シンセが欲しい!
こうして楽曲制作に没頭していたら、だんだん物理物体としてのシンセが欲しくなってきました。マウスで値を調整するのもいいけど、物理のノブを回したり物理スイッチを押して音作りしたい。
物理コントローラーPush 2が僕の背中を押してくれたように、物理シンセがさらに僕を遠くにつれてってくれるかもしれないじゃないですか。
ガジェット好きの血が騒ぎ、あれこれ様々いろいろ調べた結果、辿り着いた機種が、東京の稲城に本社のあるKORG(コルグ)の「Minilogue(ミニローグ)」でした。
この機種に決めたのは、僕が大好きなアーティスト3人がこぞって使っていたのが大きな理由です。まず一人目が砂原良徳。彼はKORGのサイトでこの機種の魅力を語っています。
つづいて、Midnight Grand Orchestraとして星街すいせいとユニットを組んでる、イノタクこと井上拓。以下のライブ映像でも、彼の手元にある機種がMinilogueです。
そして、ロンドンを拠点に素晴らしいハウスミュージックを作り続けている、Freerange Recordsを率いるJimpster。ライブセットをざーっと写した映像に、Minilogueが映り込んでいます。
よりによってこの3人が使ってるのを見ちゃったら、もー欲しくてたまらない。がんばってお金をためて、年明け最初の週末、ついに手に入れました。
3. ようこそMinilogue
ということでごらんください、このシルバーの素敵ボディ。どうどう、超かっこいいでしょ!!
…と物理物体は届きましたが、問題はこれを僕のデスクにどうマウントするかでした。部屋の都合でキーボードスタンドは常設できないので、デスクの上に置くしかない。ですがもうデスク上には、幅50cm×奥行き30cmもの広大な余裕はありません。
検討の末、岡山県岡山市に本社のあるサンワサプライのノートPC用デスクアームを使うことにしました。
このアームがあれば、演奏したいときはMinilogueを手元に引き寄せ、使わないときは外に追いやることができます。マクロスにでてくるバルキリーの腕くらいの可変機構(わかりにくい例えでしょうか)で、僕の『天国、それともラスベガス』の集積度はまだ上げられるんだ!!
ということで、ノートPCアームを設置。デスクの右端から中央に向かってアームを伸ばします。ちょうどマウスの上空にトレーが浮いている形。デスク空間を縦に使います。
そしてトレーの上にMinilogueを置きます。これがデスク上にMinilogueをしまっている状態。バルキリーで例えるとファイター形態です。
演奏するときは、このアームをずらして手元に引き寄せます。バルキリーで例えるとガウォーク形態ですね。
そしてデスク上を広く使いたいときは、こんな感じでMinilogueをデスクの外に追いやります。バルキリーで例えるとバトロイド形態です。
アームについたスチール製のトレーの幅がMinilogueの幅より狭く、そのまま載せただけだとずり落ちて危ないので、東京都中央区に本社のある龍田化学の耐震マットで固定。Minilogueは2.8kgと軽量なので、びくともしない感じで固定できました。
ガジェットが増えるということは、ケーブルが増えるという意味でもあります。電源・USB・音声の3本のケーブルは、サンワサプライのベルクロのケーブルタイでまとめて、なるべくスッキリさせます。こういう小さな積み重ね、大事なんです。
音声のケーブルには、線材が柔らかくてとりまわしやすく音質的にも好みな、独ノイマン社のケーブルを使いました。ケーブルはいつものようにプロケーブルさんにオーダー。
こうして、自宅デスクにあらたなガジェットの仲間が加わりました。早速DAWを立ち上げて、この年末に遊びで作っていたマドンナ「Into The Groove」の自分用リミックスのシンセベースに、Minilogueを使ってみたりして。楽しーい!
(注:実際はMinilogue単体ではなく、ソフトシンセのJUNO-106のシンセベースと重ねてます)
4. ハウスで世界につながってくぞ
これはハウスに限ったことではなく、テクノやエレクトロニカをはじめいろんな音楽にも当てはまる話だとは思いますが、ハウスは世界共通の「競技」の色彩が強い音楽です。インスト主体だから言葉の壁がないこともあり、世界中のプロデューサーが、同じBPM118~128近辺のテンポのいろんな四つ打ちの音楽を作っていて、それが世界中のクラブやフェスで聴かれています。
こうした構造はサッカーにも似ています。サッカーは世界中のいろんな国と地域で同じルールの下に親しまれ、少年も少女も世界を夢見て練習に明け暮れ、試合に出て勝ったり負けたりしつつ、その中からステップアップして世界的なプレーヤーが登場します。そして世界にはたくさんのチームとスタープレーヤーがいて、それぞれのプレイスタイルで活躍し、スタジアムで人々を熱狂させています。
去年2022年は僕がハウス制作を始めた年になりました。おかげさまでリリースもできて、サッカー選手としてデビューできました。そしてこのデスクで作った曲が(Spotify for Artistの統計によれば)65カ国で聴かれたのです。え、なにそれ、ちょっと嬉しいんですけど…。
とはいえ上の画像の通りで、僕の音楽にはそれほど多くのリスナーがいるわけではありません。正直、僕はまだまだ全然しょぼいサッカーしか出来ないです。今年はもっと成長できたらいいな。いつか華麗にシュートを決めて、カズダンスとか踊りたい。心からそう思う。
世界とつながるデスク『天国、それともラスベガス』。この場所から、世界に向けて引き続き音楽を作っていきたいと思います。
今年はどこまで行けるかな。とりゃー!
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