深海

暗い暗い海の底
深い深い闇の中
ゆらりただよう深海魚
圧力に負けず
暗闇にも負けない

 気がつくと僕は
 銀行の窓口にいて 自分の順番を待っていた
 お金をおろす為に 番号札を持ってね

波もなく
海草もない海の底
ふたつの目は必要ない
いびつな世界をさらけ出す
光がとどかないから
かたくなな自分はいらない
圧力にたえられないから

 いつまで待っても呼ばれない事に
 いらだちを覚えながら
 少し古びた婦人週刊誌を見てる
 そう ぼんやりと見ているだけ
 どうだっていいことばかり書かれているんだから

 それでも呼ばれないんだ
 番号


言葉は必要ない
伝えられないのなら
名前も必要ない
呼ばれることがないのなら

 誰もがいつも何らかの
 番号札を持って生きている
 どこかの窓口に行く為のね
 めんどうだとは思いつつも
 捨てられない自分の名前

 呼ばれるのを待っているのさ

 どこかの窓口で
 番号ではなく
 自分の名前が呼ばれるのを

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