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自然教育園を歩いて、命の長さを考えた。

ようやく11月らしく冷え込んできたので、思い切り深呼吸したくて自然教育園に行ってきた。港区白金台にある貴重な森林緑地。四季折々の自然の変化が楽しく、たまに狸らしき動物が走り抜けたりもして、都会の真ん中なのにさまざまな命の営みを感じる場所だ。

室町時代には豪族の館があったというこの地、江戸時代には徳川光圀のお兄さまの下屋敷だったとかで、いまも当時の庭園の名残の立派な木々が残されている。そのうちの一つだった「大蛇(おろち)の松」が、去年10月に、台風19号を耐えたかに見えた直後、なんと倒伏してしまった。

それは樹齢350年ともいわれるクロマツで、高さ25メートル、幹の周りは4メートルという立派な姿だった。私が初めて見たのは雨の日で、樹皮が濡れて黒く光っている姿はまさに大蛇のよう。1979年に落雷を受けて先端が折れる前は33メートルの高さで、当時は山手線の車窓からよく見えたそうだ。今は、倒れた姿のままで、力強い根の様子を間近に見ることができる。

嬉しいことに、倒れた後で松ぼっくりから種がとれ、今年の春に芽を出したらしい。大切に育ててまた園内に植栽する予定ということなので、350年くらい経ったら、またあの雄姿が戻ってくるはず。うー、見たいなあ。

帰り道、老舗のお鮨屋さんの前を通ると「八十五年のご愛顧ありがとうございました。」という閉店のお知らせの張り紙があった。大正時代から続く店で、高齢のご主人が静かに握ってくれる美味しいお鮨と優しい接客でほっこり和める素敵なところだった。久しぶりに行きたいなあ、と思っていたのに、しばらく前を通っていなかったせいで閉店に気づかなかった。無念なり。

命は有限だし、時間は止まらない。失ったものは戻らない。自分が今できることに、全力で取り組もうと思った。

【追伸】上の写真は自然教育園にある大きなむくのき。ひそかに「象足のむく」と名付けてます。



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