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北窓開く

昔から陽射しがたっぷり入る部屋が好き。自分で選べる時は、多少不便でも少しくらい家賃が高くても、出来るだけ頑張って、大きな南向きの窓のあるところに住もうとしてきたワタシ。

でもこないだ、黛まどかさんのコラムに「北窓開く」という気になる言葉をみつけた。

それは春の季語。寒風を防ぐため冬に閉ざしていた北側の窓を、春になって開けることをいうのだそうだ。黛さんの亡きお父様の部屋に北窓があって、その窓を開けるたびに「北窓は景色が南向きで暖かいから、いいものだよ」とおっしゃっていたことを思い出すという話だった。

確かにそうだ。南向きの窓からは明るい光が入ってくるけれど、その窓から見える景色は北向きなのだ。逆に、北向きの窓から見えるのは、南からの陽射しを受け止めている暖かい眺め。言われてみれば、そりゃあ当たり前のことだけど、なるほどー、と思った。

コロナに日々の暮らしを封じ込められて、早くも1年以上経つ。生活のリズムが変わり、あったはずのものがなくなった代わりに、見えていなかった景色に気付いたりもしている。

環境が大きく変わったことは間違いないけれど、たぶん一番変化したのは自分の心持ちだと思う。だから、今はこれまで見過ごしていた景色を眺めながら、人生の目的を見直している。

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