お父さんの家族6人分のミスド

毎週土曜の夜、私のお父さんはミスドを買ってきてくれる。

夕方から少林寺拳法の練習に行き、帰りに店に寄って買ってきてくれるのだ。

家族5人みんなそれを楽しみにしていた。みんなそれぞれお気に入りのドーナツがあった。

私はゴールデンチョコレートかココナッツチョコレート。弟達はその時一番大きいドーナツ。妹はポン・デ・リング。お母さんはオールドファッション。お父さんは何でも好きそうだった。

だからドーナツを選ぶときケンカにはならないが、時々期間限定商品があるとみんなそれが食べたいからじゃんけんをした。

贅沢な話だが、私達家族5人はお父さんのミスドを楽しみにしてかつ飽きてもいた。

たまには、ミスドじゃない甘いもの買ってきて欲しいなぁと、お父さんがいないときにみんなでよく話していた。でもたまにお父さんが、帰りが遅くなりミスドが閉まっていたため、ドーナツを買ってこない日があると、みんなこっそりひどく落ち込んだ。

今私は26歳。大学を出てから一人暮らしを初め、家族と離れて4年目だ。

ミスドが近所にないため、頻繁に食べられなくなった。外出時に見かけると、嬉しくなって一人で立ち寄って食べる。そうして分かった。

期間限定商品は、少し値段が高い。定番商品も、いつも100円セールしているわけではない。でも自分のお小遣いから、お父さんは毎週6人分買ってくれてたのかと思うと、ありがたくなった。

また、家族で食べるのが楽しかったと分かった。一人で食べるのもゆったりして好きだが、家族でソファーに座って、テレビを見ながらみんなで食べる。新商品が出たらそみんなで味見しあったりする。それが楽しかったし、もうできないのが寂しい。

ミスドを見ると、いつもお父さんが買ってきてくれたこと、家族で食べていた土曜日の夜を思い出す。あの些細な時間が幸せなんだと、一人暮らしをして実感した。

#ミスドの思いド   #語る部門

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