【持論】比喩はあまり使わないほうがよい
こんにちは、山本清流です。
小説を書き続けて、およそ10年。そんな僕がいま思うのは、比喩はあまり使わないほうがいいということです。
おそらくですが、小説を書き始めたばかりの人は比喩を使いたがる傾向にあるのでは、と思います。
僕もそうでした。ゴミのような死体とか、ミミズの大群のような脳みそとか、なんか、いろいろ、書いていた気がします。
比喩は楽しいのですね。
しかし、気をつけてください。
比喩を多用するのは危険です。
なにより、読むのが面倒くさくなるのです。
比喩っていうのは、「そのもの」を表現するために「それではないもの」を持ってくる手法なので、読者の頭の中では「それではないもの」方向にもイメージが広がります。これが連発されると、読者の頭の中は渋滞してしまいます。
ですから、ここぞというときに比喩は一回だけ使えばいいのです。
美しい夜空を表現したいなら、「深海のような夜空」で終わり。
次から次に比喩を重ねていくと、マイナスに働くことが多いのではないか、と。
僕がオススメするのは、具体的なモノを堂々と書くことです。
たとえば、暑いという状態を読者に伝えたいとしましょう。
いちばんわかりやすいのは、「めちゃくちゃ暑い」と素直に書くことです。日本人ならこれで伝わります。
でも、これじゃカッコ悪いので、ここで、つい比喩を使いたくなりますね。肌が焼けるような暑さとか、熱された鉄板の上にいるようだ、とか。
それでもいいのですが、もっといい方法があります。「暑い」というイメージのモノを堂々と作中に配置するのです。ひまわり。うちわ。汗。雲のない空。蝉の声。野球部の雄叫び。ほら、もうすでに暑そうでしょう?
小説はそもそも作りものなので、小説自体が比喩みたいなモノです。
比喩の中で比喩を使うという遠回しなことをしなくても、堂々とそのまま比喩に使いたかったモノを登場させればよいのです。汗を垂らしながら熱された鉄板でたい焼きをつくってる男を登場させれば、もうそれだけで暑いです。
このことを意識すると、グッと読者に伝わる描写になるのではないか、と思います。
と言いながら、実は、これ、けっこう難しいのです。
描写が上手な人はこれをサラッとやっているのです。すごいですね。僕はまだまだです。
『拷問投票』の中でも、素直に「暑い」と書いた気がします(だって、暑いんだもの……)。
たしかに比喩を連発して成功してる人もいますけれど、たぶん、そういう人たちはセンスがあるのでしょう。
やっぱり、基本は「比喩は補助」くらいに思っていたほうが伝わりやすい小説になるのかな、と勝手にアドバイスさせていただきます。
誰かに伝えたいというよりは、僕がそう思った、というわけであります。
参考になれば幸いですが。