『拷問投票』の主な参考文献。と、拷問投票法、全文。

『解説裁判員法[第3版] 立法の経緯と課題』池田修 合田悦三 安東章著/弘文堂
『裁判員裁判の現在 その10年の成果と課題』一橋大学刑事法部門=編著 葛野尋之=編集代表/現代人文社
『刑法 第3版』山口厚著/有斐閣
『刑事訴訟法 第2版』宇藤崇 松田岳士 堀江慎司著/有斐閣
『憲法 第七版』芦部信喜著 高橋和之補訂/岩波書店
『実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法〔第十六次改訂版〕』選挙制度研究会編/ぎょうせい
『ポケット六法 令和2年版』佐伯仁志 大村敦=編集代表/有斐閣
『分かりやすい法律・条令の書き方[改訂版(増補2)]』礒崎陽輔著/ぎょうせい
『別冊Jurist 刑法判例百選Ⅰ 総論[第8版]』木田悦子=編集人/有斐閣
『講義刑法学・総論[第2版]』井田良著/有斐閣
『講義刑法学・各論[第2版]』井田良著/有斐閣
『補訂版 政治学』久米郁男 川出良枝 古城佳子 田中愛治 真渕勝著/有斐閣
『国際政治学』中西寛 石田淳 田所昌幸著/有斐閣
『立法学〔第4版〕 序論・立法過程論』中島誠著/法律文化社
『裁判員裁判の評議デザイン 市民の知が活きる裁判をめざして』三島聡編/日本評論社
『裁判員のあたまの中 14人のはじめて物語』田口真義著/現代人文社
『刑事事実認定入門〔第3版〕』石井一正著/判例タイムズ社
『裁判員裁判と量刑法』原田國男著/成文堂
『冷酷 座間9人殺害事件』小野一光著/幻冬舎アウトロー文庫
『死刑制度と刑罰理論 死刑はなぜ問題なのか』井田良著/岩波書店
『死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの』堀川惠子著/日本評論社
『死刑制度論のいま 基礎理論と情勢の8つの洞察』大谷實 井田良 松原芳博 福島至渡邊一弘 本庄武 葛野尋之 椎橋隆幸著/判例時報社
『アメリカ人のみた日本の死刑』デイビット・T・ジョンソン著 笹倉香奈訳/岩波新書
『ロボット・AIと法』弥永真生 宍戸常寿編/有斐閣
『司法の国際化と日本 法のグローバリズムにどう対処する 米国司法と格闘した弁護士「魂」の記』秋山武夫著/幻冬舎MC
『禁酒法と民主主義 ●道徳と政治と社会●』板倉聖宣著/仮説社



●積極的刑罰措置の実施にあたっての国民による投票等に関する法律
(令和一八・五・一三  法四二)

目次
 第一章 総則(一条―五条)
 第二章 投票権と義務
  第一節 国民(六条―一五条)
  第二節 裁判員等(一六条―二二条)
  第三節 裁判官及び裁判所等(二三条―三五条)
 第三章 投票に向けての活動(三六条―四九条)
 第四章 投票と積極的刑罰措置
  第一節 投票の手続(五〇条―七〇条)
  第二節 理性的な投票(七一条―七四条)
  第三節 積極的刑罰措置の実施(七五条―七九条)
 第五章 罰則(八〇条―八八条)

 身体の自由及び生命への不可侵は全ての国民に平等に適用される基本原理であり、法の支配のもとに秩序を維持している現代社会の根幹を成すものである。それを不当に奪う行為及び肉体や精神に著しい後遺症を残すような悪質な犯罪行為は現代社会の必要不可欠な地盤を揺るがす蛮行であり、我が国としても司法制度を通して適切な処罰をし、特別予防及び一般予防の観点から厳しい対応にあたってきた。
 しかしながら、我が国における伝統的な司法制度を完成したものとして捉えることはあまりに早計であり、制度として確立していたとしても時代に合わせて変化させていくべきであることを十分に考慮しなければならない。裁判員裁判の導入及びネット社会の進展によって我が国の司法制度をより身近に感じるようになった国民の多くは、凶悪犯への刑罰の軽さが感情的に納得のできないものであるとして不満を募らせている。その最たる証拠が史上初となる最高裁判事の国民審査による罷免である。司法に対する不満は国民に私刑を正当化する理由を与える結果となり、国内の秩序が脅かされている。
 当然のごとく、国民の不満を膨らませた原因が刑罰の軽さにあると捉えるならば、刑法の全般的な厳罰化をするのが方法としては合理的である。実際、執行猶予及び心神喪失の全面的廃止や殺人罪の拘禁刑期間の下限の大幅な引き上げが行われた。しかしながら、これらの施策は、刑罰の補充性や刑法の基本原則の犠牲という大きな代償を払ったにもかかわらず、本来の目的である凶悪犯への厳罰化については十分に機能していなかったと言わざるを得ない。試みの開始から二年を待たずしてこの施策が廃止された現実は、新たな制度の必要性を訴えている。
言うまでもなく、真に国民が求めているのは、情状酌量の余地を狭くし、違法性及び有責性等の法律概念の利用を限定することで、刑罰の適用の柔軟性を失わせることではない。言語道断の一部の悪質な犯罪者に対して相応と言うべき厳罰を科すことであった。その実現のためには、局所的に発動される強い刑罰が必要である。
また、より広い視野で捉えるならば、国民はむしろ絶対的な悪としての犯罪を自らの手で裁けないことにこそ激しい怒りを募らせてきたことは言うまでもない。その要求に応じるためには、司法への国民の参加が必要である。
局所的な厳罰化と司法への国民の参加というこの二本の柱は、国民の不満を解消し、我が国の法的秩序を再構築するうえで十分に検討しなければならない現実的な案である。ここに、その二本の柱を太く固い支柱として確立し、我が国の司法を再び信頼に値する形へと蘇生させることを目指して、従来よりも強く納得することのできる大胆かつ相当な刑罰を国民の意思を適切に反映したうえで実行するため、この法律を制定する。

   第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国民が投票という形式を用いて悪質な犯罪者への積極的刑罰措置の実施の決定に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資すること、またそれらを介して司法制度の盤石な基礎を築いて国内の無秩序を防止ないし緩和することが喫緊の必要事項であることにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判の一部に関し、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号。以下、「裁判員法」という。)及び刑事訴訟法(昭和ニ十三年法律第百三十一号)の特則、国民による投票等の制度と手続その他必要な事項を定めるものとする。
(積極的刑罰措置)
第二条① 積極的刑罰措置は死刑の付加刑であり、その実施にあたってはこの法律に定める制度と手続による。
② この法律において「積極的刑罰措置」とは、法務大臣が指定した特定の製薬企業が製造した医薬品のうち、次のいずれかに該当するものを用いて一か月間に渡って精神の自由を制限する措置(身体に苦痛を与えることで間接的に精神の自由を制限するための医薬品を用いた措置を除く。)をいう。
一 服用することで屈辱感や羞恥心、恐怖、不安やその他の著しい感情の隆起が生じることで自律的な精神の活動を抑制するもの
二 服用することで精神の統合機能が喪失し、幻覚や妄想などの病的不調が生じることで精神的な不自由が生じるもの
三 その他服用することで精神に対する制御機能が喪失し、当人の意思による制御に著しく困難を生じさせるもの
③ この法律に定める制度と手続により積極的刑罰措置の実施が決定したとき、刑事施設内において直ちに実施される。
(対象)
第三条① 裁判員法の定めるところにより裁判員の参加する原則的合議体で取り扱われた事件のうち、死刑判決を言い渡された被告人についてのみ、その積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票が実施される。
② 裁判員法第二条第三項の規定により例外的合議体で取り扱われた事件においても、同様とする。
(対象からの除外)
第四条① 死刑判決が言い渡された場合であっても、裁判員法第三条第一項の規定により裁判員の参加しない合議体で取り扱われた事件の被告人は、対象にならない。 
② 裁判員の参加する合議体で死刑判決が言い渡された場合であっても、次のいずれかに該当するときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は管轄の高等裁判所の職権で、被告人に対する積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票を実施しない決定をすることができる。
一 被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に投票権を与えられる予定の国民に対して加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、投票権を与えられる予定の国民若しくはその関係者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの国民の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、その影響によって投票権を与えられる予定の国民の多くが恐怖又は不安を感じ、完全に独立した主体としての投票行動を行えず、民主主義に基づいた適切な投票を実施できないと認められるとき。
二 投票において賛成票を入れるように促す目的で暴力若しくは暴力の告知又は財産、地位若しくは名誉その他の個人の利益を侵害すること若しくはその告知を用いた脅しを行い、投票権を与えられる予定の国民の多くが真意に反して賛成票を入れざるを得なくなるように悪質な活動を展開する団体が存在していると認められるとき。
三 理由の如何を問わず、投票を実施することによって国内に極めて激しい混乱が生じることが十分に予測されるとき。
四 被告人の犯した罪が犯罪史において常軌を逸していること又は被害者若しくはその遺族若しくはその関係者が社会的な影響力を持っていること又はインターネットを含めたあらゆるメディアにおいて悪意をもった煽情的な情報が拡散していることその他の事情により、国民感情が大きく揺れ、投票権を与えられる予定の国民の多くが理性的な投票をできないと認められるとき。
③ 被告人が及んだ犯罪等により害を被った被害者及びその家族又はその遺族は、その被告人に対して死刑判決が言い渡されたとき、その被告人に対する積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の中止を裁判所に請求することができる。犯罪被害者等(その範囲については個別事件ごとに裁判所が認定する。)の過半数以上の請求があったときは、裁判所は投票の中止を決定しなければならない。
(無投票付き死刑)
第四条の二① 裁判員が参加する合議体は、評議及び評決の末に被告人の死刑が確定した場合において、付加刑としての積極的刑罰措置が妥当でないと考えるときは、積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票そのものを実施せずに死刑判決を言い渡すことができるものとし、これを無投票付き死刑とする。
② 無投票付き死刑が言い渡されたときは、その事件における被告人に対する積極的刑罰措置及びその実施の是非を問う投票は絶対に実施されない。
(投票)
第五条① 第三条における投票では、その事件で死刑判決を決定した合議体に参加した裁判官と裁判員に一票ずつの投票権が与えられる。
② この法律で定めるところの投票権を与えられた国民による投票において、その有効投票の過半数が積極的刑罰措置に賛成した場合は一票の賛成票として、過半数が反対した場合は一票の反対票として、これに加えられる。
③ 国民による投票によって一票の賛成票が生じた場合、国会でその賛成票の是非についての投票のみが行われる。衆参両院でそれぞれの有効投票の過半数が賛成しなければ、この賛成票は効力を失う。
④ 原則的合議体にあっては国民による投票の結果としての一票も含んだ十票のうち六票以上、例外的合議体にあっては同じく六票のうち四票以上が積極的刑罰措置に賛成した場合、これの実施が決定される。ただし、全ての裁判官が反対した場合又は国民による投票の結果としての一票が反対票であった場合は、絶対に実施されない。

   第二章 投票権と義務
    第一節 国民
(国民の自由意思)
第六条 この法律における国民による投票の投票権を与えられた国民は、各人の自由意思で投票できる。
(国民の義務)
第七条① 前条の国民は、理性的な投票をすることに努めなければならない。
② 投票権を与えられなかった者及び投票権を剥奪された者も、理性的な投票の遂行のために努めなければならない。
(国民による投票の公正確保)
第八条 公職選挙法(昭和二十五年法律百号)第七条の規定は、国民による投票の取り締まりに関する規定の執行について準用する。
(国民の投票権)
第九条 この法律における国民による投票の投票権を与えられる国民は、衆議院議員の選挙権を有する者とする。
(投票権の例外)
第一〇条① 前条の規定にかかわらず、例外的に投票権を与えられない国民については、裁判員法第一四条における欠格事由の規定、同法第一五条における就職禁止事由の規定及び同法第一七条の事件に関連する不適格事由の規定を準用する。この場合においては、「裁判員」とあるのは「国民による投票の投票権を有する者」と読み替えるものとする。
② 前項に規定するほか、当該事件の被害者若しくはその親族と事件発生以前から面識のある者又は当該事件の発生以後に現地に赴いて事件の内容を詳細に取材した者その他の関係者は、自らの投票権を放棄する義務を負う。
③ 投票の対象である被告人に対して死刑判決を言い渡した合議体に参加していた裁判員及びその審理に立ち会っていた補充裁判員並びに当該公判手続の途中で辞退若しくは解任された裁判員であった者及び補充裁判員であった者には、国民による投票の投票権は与えられない。
(投票権の例外の選別)
第一一条① 国内の地方裁判所の裁判員の参加する刑事裁判において死刑判決が言い渡された場合であって、国民パスポートの配布及び利用手続に関する法律(令和十三年法律第百十一号。以下、「国民パスポート法」という。)により全国民に配布された国民パスポートに当該事件の被告人に対する積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票における投票権を与えられた旨の通知を受けたときは、国民は、その投票権が無効であるか否かについて確認しなければならない。
② 前項に規定する場合において、前条第一項及び第三項の投票権の例外に自らが該当すると判断した者は、国民パスポートにて通知された自らの投票権が無効である旨の意思表示を国民パスポートを介して行わなければならない。
③ 前条第二項に規定する関係者に自らが該当すると判断した者にも、前項の規定を準用する。この場合においては、自らが前条第二項に規定する関係者であるか否かについての判断は、客観的に該当すると認められるか否かにかかわらず、完全に当人に委ねる。
④ 前二項の意思表示を誤って行った場合は、当人による当該意思表示の取消し若しくは既に無効となった投票権の再発行の請求により又は国民パスポート管理委員会の指導により組織された下部組織の職権で、当該意思表示を取消し、既に無効となった投票権を再発行することができる。
⑤ 前項の請求がない場合において、国民パスポート管理委員会の指導により組織された下部組織の審査によって投票権の例外に該当すると認められたときは、その者の投票権は無効となる。
(投票権の確認)
第一二条 投票権があるにもかかわらず、自らの国民パスポートに投票権を与えられた旨の通知が届かないときは、自らの国民パスポートを介して国民パスポート管理委員会の指導により組織された下部組織に問合せをすることができる。同組織の確認により投票権の存在が認められたときは、その者に投票権を与え、国民パスポートでその旨を通知する。
(義務教育を終了しない者)
第一三条 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める義務教育を終了しない者については、一律に欠格事由に該当すると推定し、投票権を与えない。ただし、別に政令に定める規定により国民パスポートを介して行った簡易な学力テストに合格した者については、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有すると認定し、投票権を与える。
(精神疾患を有する者)
第一四条① 現に通院している精神疾患を有する者については、一律に欠格事由(心身の故障のため理性的な投票の遂行に著しい支障がある者)に該当すると推定し、投票権を与えない。ただし、当人から投票権の確認の問合せがあった場合において、国民パスポート管理委員会の指導により組織された下部組織が当人の通院する医療機関の専門家から意見を聴取し、当該専門家が欠格事由にあたらないとの判断を示したときであって、国民パスポート管理委員会の指導により組織された下部組織が当人に対する質問の受答えを確認したうえで当該専門家が示した判断に対して疑いを持たなかったときに限り、当人を理性的な投票の遂行に支障のない者と認定し、投票権を与える。
② 前項の「精神疾患」の定義及び範囲については、政令に委ねる。
(放送及び文書の確認の義務)
第一五条 投票権を与えられた国民は、投票する前に、この法律で定めるところの投票の対象となる被告人に関する放送及び文書をあらかじめ視聴し、確認しなければならない。

    第二節 裁判員等
(裁判員等の任務の延長)
第一六条① 裁判員法第四八条第一号の規定にかかわらず、評議及び評決の末に被告人に死刑判決を言い渡したときは、その合議体に参加していた裁判員及びその審理に立ち会っていた補充裁判員の任務は終了しない。
② 前項に規定する場合において、裁判員及び補充裁判員の任務は、次のいずれかに該当するときに終了する。
一 死刑判決を受けた被告人に対する積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票が行われたのち最終的に投票結果が確定したとき。
二 第四条の規定により被告人が積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の対象ではなくなり、投票が中止になったとき。
(裁判員の投票権)
第一七条① 原則的合議体にあっては六人、例外的合議体にあっては四人、投票の対象となる被告人に対する死刑判決を決定した合議体に参加していた裁判員に対して投票権が与えられる。
② 終局裁判の告知が行われたときに裁判員の投票権が生じるものとする。
(投票準備手続への出席義務)
第一八条 死刑判決の告知が終了したあと、その合議体に参加していた裁判員及びその審理に立ち会っていた補充裁判員は、積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の趣旨、手続及び投票権の有無に関して裁判所が具体的に説明をする機会である投票準備手続に出席しなければならない。
(裁判員等の辞退の禁止)
第一九条① 投票権を与えられた裁判員は、理由の如何を問わず、その地位及び投票を辞退することができない。
② 投票権を継承することのできる補充裁判員も、裁判員に投票権が生じたときは、その地位を辞退することができない。
(裁判員等の解任の禁止)
第二〇条 裁判員に投票権が生じたときは、その投票の結果が確定するまでの間、この法律に特別の定めがある場合を除いて、投票権を与えられた裁判員及び投票権を継承することのできる補充裁判員を解任することはできない。
(投票権の例外措置)
第二一条① 死亡又は意識の喪失等により投票権を与えられた裁判員が投票権を行使できなくなったときは、あらかじめ定める順序にしたがい、補充裁判員が裁判員に選任され、投票権を継承する。
② 前項の場合において、補充裁判員がいなくなったときは、投票権を行使できなくなった裁判員の保有していた投票権は消滅し、一票の反対票として投票結果に加えられる。ただし、何者かが故意に投票権を与えられた裁判員に危害を加えて投票権を行使できない状態にしたとの事実が認められる場合においては、国民による投票によって生じた一票が賛成票であったときは一票の反対票として、国民による投票によって生じた一票が反対票であったときは一票の賛成票として、投票結果に加えられる。
(裁判員等の義務)
第二二条① 死刑判決の告知が終了してから裁判員等の任務を終えるまでの期間も、裁判員及び補充裁判員は、裁判員法第九条、第一〇条第四項及び第七〇条第一項に規定する義務を負う。
② 投票権を与えられた裁判員及び投票権を継承することのできる補充裁判員は、投票においてどの選択肢に投票するかについての意思を公表してはならない。
③ 裁判員及び補充裁判員には、この法律で定めるところの投票の対象となる被告人に関する放送及び文書を視聴し、確認する義務はない。

    第三節 裁判官及び裁判所等
(投票の決定)
第二三条 裁判所が裁判員の参加する合議体による評議及び評決の末に被告人に対して死刑判決を告知したとき、国民による投票、裁判員による投票及び裁判官による投票の実施が決定する。
(投票準備手続)
第二四条 裁判所は、裁判員の参加する合議体による評議及び評決の末に被告人に対して死刑判決の告知をした即日のうちに、積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の趣旨、手続及び投票権の有無に関して裁判員等に具体的に説明をするために、投票準備手続を行わなければならない。
(投票の期日の決定)
第二五条① 裁判所は、別に政令で定める規定にしたがい、投票準備手続を行う前に、国民による投票、裁判員による投票及び裁判官による投票の期日を決定しなければならない。これら三つの投票の期日はどれも同日に限る。
② 前項の決定は、裁判員等に対しては投票準備手続において告知し、国民に対しては死刑判決の告知をしたあと直ちに公表しなければならない。
(事実の公表)
第二六条 裁判所は、裁判員の参加する合議体による評議及び評決の末に被告人に対して死刑判決を告知したとき、その合議体で認定した事実の全てを遅滞なく国民に対して公表しなければならない。
(裁判官の意見の禁止)
第二七条 投票権を有する裁判官は、投票準備手続においても、その他のすべての時と場所においても、投票が完了する前に賛成票を入れるか反対票を入れるかについての意見を述べてはならない。
(控訴提起期間の停止)
第二八条① 投票の実施が決定したときは、刑事訴訟法第三七三条に規定する控訴提起期間は停止し、控訴することはできない。
② 投票が実施され、投票結果が確定した当日に、前項の規定は効力を失う。
(特別控訴)
第二九条① 投票の期日の前日までは、検察官、被告人若しくは弁護人は、第四条第二項の各号に規定する対象からの除外の事由に該当することを理由としてのみ、投票を中止するために管轄の高等裁判所に特別控訴をすることができる。
② 前項の特別控訴があったとき又は管轄の高等裁判所が第四条第二項の各号に規定する事由を疑ったときは、即日のうちに管轄の高等裁判所に所属する裁判官五名による合議体によって評議及び評決が行われる。
③ 前項の合議体の請求があるときは、当該事件を担当した裁判所は公判手続において取り調べた資料の全て又は一部を提供しなければならない。
④ 特別控訴の裁判所が評議及び評決の末に第四条第二項の各号に規定する事由の存在を認めたときは、国民による投票、裁判員による投票及び裁判官による投票は中止となる。この決定に対して不服申立てをすることはできない。
(裁判所の通知)
第三〇条 裁判所は、投票の実施が決定した即日のうちに、中央選挙管理会に対して、その時点で裁判所が把握している国民による投票の投票権の例外に該当する者(事件に関連する不適格事由に該当する者、事件の合議体に参加していた裁判員及びその審理に立ち会っていた補充裁判員並びに当該公判手続の途中で辞退若しくは解任された裁判員であった者及び補充裁判員であった者に該当する者)の情報をまとめた名簿を送付するとともに、投票の実施が決定した旨を通知しなければならない。
(中央選挙管理会の事務)
第三一条① 前条に規定する通知を受けた中央選挙管理会は、その下部組織との協同により、衆議院議員の選挙権を有する国民の名簿から前項に規定する国民による投票の投票権の例外に該当する者の情報をまとめた名簿に記載された者を除外したうえで、暫定名簿を作成しなければならない。
② 中央選挙管理会は、前項の暫定名簿の作成を完了したとき、国民パスポート管理委員会に対して、この暫定名簿を十分に点検したうえで送付するとともに、投票の実施が決定した旨を通知しなければならない。
③ 国民パスポート管理委員会から請求があるときは、中央選挙管理会は、必要な事項を報告しなければならない。
④ 中央選挙管理会は、国民による投票の準備及び実行を担当する国民パスポート管理委員会と、裁判官による投票及び裁判員による投票の準備及び実行を担当する裁判所とを仲介する事務を行う。
(国民パスポート管理委員会の事務)
第三二条① 国民パスポート管理委員会は、前条に規定する通知及び暫定名簿の送付があったとき、その下部組織との協同により、この暫定名簿から欠格事由及び就職禁止事由の規定に該当する者を除外し、決定名簿を作成しなければならない。
② 決定名簿の作成が完了したとき、国民パスポート管理委員会は、決定名簿に該当する者全てに対して、国民パスポートを介して当該被告人に対する積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票における投票権を与える旨の通知をする。
③ 国民パスポート管理委員会の指導により組織された下部組織は、国民から国民パスポートを介して自らの投票権が無効である旨の意思表示があったとき又は当該意思表示の取消し若しくは既に無効となった投票権の再発行の請求があったとき又は投票権の確認の問合せがあったときは、必要に応じて中央選挙管理会に確認を取り、その者の投票権が無効であるか否かについて審査する。第一〇条第二項に規定する関係者に該当することを理由として投票権が無効である旨の意思表示があったときは、審査することなく、その者の投票権を無効とする。
(裁判官の投票権の例外措置)
第三三条① 投票権を与えられた裁判官が投票権を行使できなくなったときの例外措置については、第二一条の規定を準用する。この場合においては、「裁判員」とあるのは「裁判官」と、「補充裁判員」とあるのは「補充裁判官」と読み替えるものとする。
② 第二一条第二項のただし書における事実は、その事実に関する公判手続を待つことなく、裁判所の権限で迅速に認定する。例外的合議体における裁判官が投票権を行使できなくなった場合又は原則的合議体の裁判官の全てが投票権を行使できなくなった場合であって、補充裁判官がいないときは、同一の地方裁判所に所属する別の裁判官又はその合議体がこれを行う。
(放送及び文書に関する権限)
第三四条① 裁判所は、投票準備手続のあと遅滞なく、投票権を与えられる予定の国民が投票に際しての検討材料とする放送及び文書の準備を、検察官、被告人、弁護人及び日本放送協会に命じなければならない。
② 策定された放送計画及び作成された文書の原稿は、国民が理性的な投票をできるようにあらかじめ裁判所が確認し、裁判所の意見に沿って修正し、結果として裁判所が許可を与えたときに限り、放送計画は日本放送協会によって実行され、文書は国民パスポートを介して国民に公開される。
③ 投票の期日の前日までにこの放送及び文書が公開されないときは、投票の期日は延期され、放送及び文書がどちらも公開された日の翌日が投票の期日となる。
④ 放送及び文書の詳細な規定については、政令に委ねる。
(国民投票広報協議会)
第三五条① 検察官、被告人、弁護人及び日本放送協会が前条の放送計画及び文書の原稿を作成するときは、裁判所の請求により、国会に、国会法(昭和二十二年法律七十九号)に定められた国民投票広報協議会が設置される。
② 前項の協議会は国会法及び日本国憲法の改正手続に関する法律(平成十九年法律五十一号)の規定により組織され、事務としては投票に際しての国民の検討材料となる放送及び文書のために検察官、被告人、弁護人及び日本放送協会が取り組む放送計画及び文書の原稿の作成を全面的に補助するものとする。
③ 国民投票広報協議会と裁判所の意見が対立した場合において、協議により合意形成が果たされなかったときは、裁判所の意見を優先するものとする。

   第三章 投票に向けての活動
(適用上の注意)
第三六条 この章の規定の適用にあたっては、日本国憲法の改正手続に関する法律の第一〇〇条の規定を準用する。
(適用の期間)
第三七条 この章の規定を適用する期間は、投票の対象となる被告人の事件を担当した裁判所が国民による投票の期日を公表したときから現に投票の期日となった当日までとする。
(政治活動と投票活動)
第三八条 この章における「政治活動」は、この法律に定める制度と手続に対する政治的な考えを表明する活動とし、この章における「投票活動」は、投票の対象となる被告人に対する量刑として第六二条に定める選択肢のうちのいずれかを選ばせること又は投票を棄権させること又は同被告人に対する積極的刑罰措置の実施について反対票若しくは賛成票のいずれかを選ばせることを目的として国民による投票の投票権を有する者に対して直接又は間接に勧誘及び誘導をする活動とする。
(政治活動と投票活動の権利)
第三九条 全ての個人又は団体は、この法律に特別の例外規定がある場合を除いて、前項の政治活動及び投票活動を行うことができる。
(投票権の例外に該当する者の活動の禁止)
第四〇条① 第一〇条第一項の規定により欠格事由又は事件に関連する不適格事由により国民による投票の投票権の例外に該当する者は、政治活動及び投票活動を行うことができない。
② 事件に関連する不適格事由に該当しない場合であっても、第一〇条第二項に規定する投票権を放棄する義務を負った者は、投票活動の権利についても放棄する義務を負う。
③ 投票の対象である被告人に対して死刑判決を言い渡した合議体に参加していた裁判員及びその審理に立ち会っていた補充裁判員並びに当該公判手続の途中で辞退若しくは解任された裁判員であった者及び補充裁判員であった者は、政治活動及び投票活動を行うことができない。
(欠格事由の例外)
第四一条 欠格事由に該当する場合であっても、この法律に定める規定によって投票権を与えられた者は、政治活動及び投票活動を行うことができる。
(投票事務関係者の活動の禁止)
第四二条 次に掲げる投票事務関係者は、政治活動及び投票活動を行うことができない。
一 中央選挙管理会の委員及び中央選挙管理会の庶務に従事する総務省の職員並びに選挙管理委員会の委員及び職員
二 国民パスポート管理委員会の委員及び国民パスポート管理委員会又はその下部組織の庶務に従事するデジタル省の職員
三 デジタル省からの委託を受けて国民パスポートのシステム管理業務に従事する民間の従業員
(公務員等及び教育者の地位利用による投票活動の禁止)
第四三条 公務員等及び教育者の投票活動については、日本国憲法の改正手続に関する法律の第一〇三条第一項及び第二項の規定を準用する。この場合においては、「国民投票運動」とあるのは「投票活動」と読み替えるものとする。
(犯罪被害者等の活動の禁止)
第四四条 投票の対象となる被告人が及んだ犯罪等により害を被った被害者及びその家族又はその遺族は、国民による感情的な投票を避けるため、政治活動及び投票活動を絶対にしてはならない。
(虚偽事実の禁止)
第四五条 公判手続における認定を受けていない事実は、その真偽にかかわらず、全て虚偽事実とし、それを投票活動で用いることはできない。第二六条の規定により公表した事実以外のものは虚偽事実として扱う。
(投票に関する放送についての留意)
第四六条 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十六号に規定する放送事業者は、積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票に関する放送について、放送法第四条第一項の規定の趣旨に留意するとともに、投票の対象となる被告人の事件を担当した検察官と同被告人及びその弁護人の両当事者に対して公平な放送に努めなければならない。
(準用)
第四七条 インターネットテレビの放送倫理・番組向上対策に関する法律(令和九年法律百二十二号)第二条に規定するインターネットテレビ事業者についても、前条の規定を準用する。
(投票の期日における活動の禁止)
第四八条 何人も、投票の期日において政治活動及び投票活動を行うことはできない。
(活動の禁止処分)
第四九条 次のいずれかに該当する行為に及んだ個人又は団体に対しては、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は裁判所の職権で、政治活動及び投票活動を禁止することができる。
一 第八一条、第八五条の罰則に抵触する行為
二 第四五条に規定する虚偽事実を用いて投票活動に及んだ行為
三 裁判員法第一〇六条、第一〇七条の罰則に抵触する行為
四 裁判員法第一〇一条、一〇二条の規定に違反する行為
五 その他積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の円滑な遂行を妨げる行為
(投票権の剥奪)
第四九条の二① 前条の規定により政治活動及び投票活動の禁止処分を受けた者は、国民による投票における投票権を失う。
②  裁判所は、前項の投票権を失った者について、直ちに中央選挙管理会を通じて国民パスポート管理委員会に通知しなければならない。通知を受けた国民パスポート管理委員会が当該人物の投票権の剥奪を実行するものとする。

   第四章 投票と積極的刑罰措置
    第一節 投票の手続
(国民による投票の時間と方法)
第五〇条 国民による投票は、投票の期日の午前八時から午後八時までの十二時間とし、その方法は国民パスポートを用いた電子投票とする。場所については指定しない。
(国民パスポートによる本人確認)
第五一条 投票権を有する国民が国民パスポートを用いた電子投票をするときは、公職選挙法の規定にしたがい、投票をする前に指紋認証及び顔認証によって本人確認をするものとする。
(再投票の禁止)
第五二条① 投票時間のうちに投票を終えた国民は、当人に非のないシステムトラブル又は脅迫等による意思を抑圧された状況下によって真意でない投票が行われた場合を除いて、投票をやり直すことができない。
② 前項に規定する場合においては、国民パスポート管理委員会の指導により組織された下部組織の判断で、再投票をすることができる。
(投票経過の秘密)
第五三条① 国民パスポート管理委員会又はその関係者は、投票が終わるまでの間、各々の国民パスポートによって集計した投票経過について外部に漏らしてはならない。裁判員による投票の投票権を有する者及び裁判官による投票の投票権を有する者に対しても、投票経過を伝えてはならない。
② あらゆる報道機関又は情報発信の手段を有する国民は、投票が終わるまでの間、投票経過に関する客観的なデータ又はそれを装ったものを基にした推定及び予測を公表してはならない。
(裁判員及び裁判官による投票の時間と方法)
第五四条 裁判員による投票及び裁判官による投票は、投票の期日の午後七時五十分から午後八時までの十分間とし、その方法は当該被告人に対して死刑判決を言い渡した裁判所が所属する地方裁判所の施設内での投票用端末を用いた電子投票とする。
(裁判員等の出頭義務)
第五五条① 投票権を有する裁判員及びその投票権を継承することのできる補充裁判員は、投票の期日の午前八時までに、当該被告人に対して死刑判決を言い渡した裁判所が所属する地方裁判所に出頭しなければならない。
② 前項に規定する時間までに投票権を有する裁判員が出頭しなかったときは、あらかじめ定める順序にしたがい、出頭した補充裁判員が裁判員に選任され、投票権を継承する。時間までに出頭しなかった裁判員は裁判員による投票の投票権を失い、時間を過ぎたあとに地方裁判所に出頭しても投票権は復活しない。
③ 出頭した補充裁判員だけで裁判員を補充できなくなったときは、足りない裁判員の一票は反対票として投票結果に加えられる。
(投票直前手続)
第五六条 投票の期日の午前八時になったとき、裁判所は、裁判員及び補充裁判員に対して積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の趣旨、手続及び投票権の有無に関してあらためて具体的に説明をする投票直前手続を行う。
(宣誓の義務)
第五七条① 地方裁判所に出頭した裁判員及び補充裁判員は、投票直前手続において裁判所から投票に関する説明を受けたあと、理性的な投票をすることについて宣誓をしなければならない。
② 前項の宣誓を拒んだ者は、裁判所による決定で、その場で解任される。裁判員が解任されたときは、あらかじめ定める順序にしたがい、宣誓をした補充裁判員が裁判員に選任され、投票権を継承する。
③ 宣誓をした補充裁判員だけで裁判員を補充できなくなったときは、足りない裁判員の一票は反対票として投票結果に加えられる。
(裁判員等の処遇)
第五八条① 裁判員及び補充裁判員は、投票直前手続を終えたあと、地方裁判所の施設内にある外界と接触ができない個室に移動し、内側から解錠することのできないその個室で誰とも接触できない状態で投票の時間まで待機する。
② 前項の規定はひとりきりで待機することを要求するものであり、前項の個室に二人以上で待機することはできない。
③ 個室にはトイレやベッド等の生活に必要な設備が備わっていなければならない。
④ 個室内には、インターネットに接続できる電子機器等の外界の情報を摂取できるもの及び全ての私物を持ち込むことはできない。その制約の範囲で、裁判員及び補充裁判員が投票の時間まで苦痛なく待機するために必要な小説、映画、ゲーム等の娯楽品を、あらかじめ裁判所に許可を得たうえで持ち込むことができる。
⑤ 食事を欲するときは、その旨を地方裁判所の職員に伝えることで、希望するものの無料での提供を受けることができる。その量及び回数に制限はない。
⑥ 個室内は完全にプライベイトな空間であり、たとえ理性的な投票の遂行のためには裁判員及び補充裁判員のプライバシーを侵害する措置が必要かつ相当であるとしても、個室内に対するいかなる監視も許されない。
⑦ 投票を終えたとき又は投票権の継承がないまま投票が終わったときは、裁判員及び補充裁判員は個室から出ることができる。
(裁判員による投票)
第五九条① 投票権を有する裁判員は、投票の時間になったとき、各々の個室内に備えられた電子端末を用いて投票しなければならない。
② 投票の時間内に投票がなかったときは、裁判員による投票の投票権を失い、あらかじめ定める順序にしたがい、補充裁判員が裁判員に選任され、投票権を継承する。この場合において、投票の時間は、地方裁判所の職員から個室内の補充裁判員に対して投票権を継承する旨の通知があったときから十分間とする。
③ 補充裁判員だけで裁判員を補充できなくなったときは、足りない裁判員の一票は反対票として投票結果に加えられる。
(裁判員等への支給)
第六〇条 投票の期日における義務を果たした裁判員及び補充裁判員には、裁判員法第一一条の旅費、日当及び宿泊料のほか、最高裁判所規則に定めるところにより、謝礼金を支給する。
(裁判官による投票)
第六一条 投票権を有する裁判官は、投票の時間になったとき、地方裁判所の施設内で電子端末を用いて投票しなければならない。この場合において、裁判官ひとりひとりが個室で投票する必要はない。
(国民による投票の選択肢)
第六二条① 国民による投票の選択肢は、「死刑及び積極的刑罰措置」、「死刑」、「無期拘禁刑」、「棄権」の四種類とする。
② 前項の選択肢のうち、「死刑及び積極的刑罰措置」は賛成票として、「死刑」及び「無期拘禁刑」は反対票として扱われる。
③ 第一項の「死刑及び積極的刑罰措置」、「死刑」、「無期拘禁刑」を有効投票として扱い、「棄権」は有効投票としては扱わない。
(裁判官及び裁判員による投票の選択肢)
第六三条① 裁判官による投票及び裁判員による投票の選択肢は、「死刑及び積極的刑罰措置」、「死刑」の二種類とする。
② 前項の選択肢のうち、「死刑及び積極的刑罰措置」は賛成票として、「死刑」は反対票として扱われる。
(無期拘禁刑の過半数)
第六四条① 国民による投票において有効投票の過半数が「無期拘禁刑」であった場合は、死刑判決は覆され、無期拘禁刑に減軽する。
② 前項に規定する減軽によって無期拘禁刑となった被告人に対しては、控訴審、上告審及び差戻し審において死刑判決を言い渡すことができない。
(投票結果の公表)
第六五条 裁判所は、国民による投票、投票の期日における裁判員による投票及び裁判官による投票の結果について、以上の全ての投票が完了したことを認識したときは直ちに公表しなければならない。
(投票の秘密)
第六六条① 裁判員の誰がどの選択肢に投票したかについての秘密は守られなければならない。
② 裁判官はどの選択肢に投票したかについて公表しなければならない。この場合において、その投票の理由については黙秘することができる。
(国会による承認)
第六七条 国民による投票において有効投票の過半数が賛成票であった場合は、投票の期日の翌日、第五条第三項に規定する投票を行う。この場合においては、投票しなかった者の一票は有効投票として扱わない。
(再投票の権利)
第六八条① 投票した裁判員は、投票の期日の翌日から三日以内に、投票が行われた地方裁判所に出向いて再投票をすることができる。この場合においては、一度目の投票で選ばなかった選択肢しか選べない。
② 投票の期日において投票した裁判員が再投票の期間中に投票権を行使できなくなったときは、投票の期日における投票をその裁判員の最終判断として確定する。
(投票結果の確定)
第六九条① 前条第一項の裁判員による再投票の期間が過ぎたとき、投票結果が確定する。
② 前項に規定する投票結果の確定を受けて、裁判所は、当該被告人に対する積極的刑罰措置の実施の有無及び無期拘禁刑への減軽の有無について決定する。
(投票結果による決定に対する即時抗告)
第七〇条 前条第二項に規定する決定に対しては、刑事訴訟法の規定により即時抗告をすることができる。

    第二節 理性的な投票
(権利と義務の均衡)
第七一条 この法律に定める積極的刑罰措置の実施にあたっての国民による投票等において投票権を有する者は、投票に対する自由意思を尊重されるとともに、他方で理性的な投票に努める義務を負う。投票権を有する者は全て、この権利と義務の均衡について自覚し、配慮しなければならない。
(投票に際しての確認事項)
第七二条① 前項の投票権を有する者は、投票に際して、以下に掲げる確認事項について確認しなければならない。
一 人類のたゆみない努力の積み重ねの中で発展してきた基本的人権は、個人の尊厳を背景として全ての個人に等しく本来的に備わっている不可侵の権利として位置づけられており、その権利に対して国家権力又は国民主権を背景とした国民による権力が介入することは、公共の福祉のためとはいえ、慎重に慎重を期して行うべきであること。
二 この法律は、正式な立法手続によって効力を有しているものではあるが、司法の安定化という公益のために例外的に犯罪者の精神の自由に対する極端な介入を行うことができる制度を規定したものであり、その立法の経緯としての補充性の観点を顧みれば、安易な判断は許されないこと。
三 積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の対象となる被告人がその犯罪の中で身勝手に他者の尊い命を奪い、その者の将来と幸福の追求を一方的に潰した行いは卑劣にして野蛮であり、最大限の強い言葉で非難すべきことに間違いはないが、基本的人権の思想が国家や君主による一方的な弾圧に対する反発として形成され、国家からの自由として個人の自由権を認めてきた人類の歴史を忘れてはならないこと。
四 精神医学の発展の中で悪質な犯罪者への投薬治療の研究が進んできた現代では、犯罪者に対する適切な治療によって更生させることが現実的な可能性として存在しており、更生プログラムによる犯罪の特別予防に関する法律(令和十二年法律第九十五号)又は犯罪防止のための関連機関の連携に関する法律(令和十四年法律第三十七号)等の犯罪抑止の法律の実効性も救いの光として見えてきており、刑罰により犯罪を抑止することが前時代的手段とも言えること。
五 この法律に定める制度が国際社会の風潮から著しく逸脱していることは指摘するまでもなく明らかであること。
② 法曹三者をはじめとする法律の専門家は、国民による投票の実施が決定されたとき、前項に掲げる確認事項について簡易かつ的確に国民に対して説明することに努めなければならない。
(投票に際して考慮すべき基準)
第七三条 投票権を有する者は、投票に際して、この法律で定めるところの投票の対象となる被告人に関する文書及び放送から得た当該被告人の犯行の事実又は公判手続において認定された当該被告人の犯行の事実を基にして、あえて善良な国際社会の常識を超えることが相当であると考えるべき特段の事情の存否について思料し、その異常性を認めたときは賛成票を、その異常性を認めなかったときは反対票を投じることが、この法律の趣旨に沿った基準である。
(理性的な投票の限界)
第七四条 前二条の確認事項と基準を考慮した場合であっても、最終的な判断は個人の自由意思に委ねられる。前二条の規定は投票に際しての絶対的な基準を押し付けるものではない。

    第三節 積極的刑罰措置の実施
(積極的刑罰措置の開始期限)
第七五条 この法律の定める制度と手続により積極的刑罰措置の実施が決定したときは、即時抗告により当該決定の執行が停止された期間を除いて、三日以内に積極的刑罰措置を開始するものとする。
(被告人に対する説明)
第七六条 積極的刑罰措置が実施される前には、対象となる被告人に対して積極的刑罰措置に関する十分な説明がなければならない。
(犯罪被害者等への配慮)
第七七条① 積極的刑罰措置の実施を担当する刑事施設は、積極的刑罰措置を実施する前に、対象となる被告人が及んだ犯罪等により害を被った被害者及びその家族又はその遺族に対して、方法を問わず、当該被告人に対する積極的刑罰措置の実施を開始する旨を報告しなければならない。
② 前項に規定する犯罪被害者等が希望するとき、刑事施設は、施設内において直接に又はビデオ通話等で積極的刑罰措置が実施される前の被告人と対面できる機会を設けなければならない。
(積極的刑罰措置の実施方法)
第七八条① 積極的刑罰措置は、内側から解錠することができない刑事施設内の一室において、第二条に規定する医薬品を医師免許を有する者が対象となる被告人に対して注射器で投与することによって行う。
② 対象の被告人の精神の自由を一か月間に渡って制限するために必要な量及び回数は使用される医薬品によって異なり、その判断は高度の専門性を要するため、どれほどの量をどれくらいの頻度で投与するかについては、投与を担当する医師免許を有する者の裁量に委ねる。
③ 対象の被告人の生命の安全を確保するため、積極的刑罰措置の実施されている間は、刑事施設としては常にカメラ等により被告人を監視する体制を維持する。
④ 積極的刑罰措置を実施する中で被告人が自死に及ぼうとしたとき又は発狂の末に自傷行為に及んだときその他必要があると認めるときは、刑事施設の判断で、被告人の身体を拘束することができる。
⑤ 積極的刑罰措置を実施する中で被告人に対して医療行為が必要になったときは、積極的刑罰措置は実施したままで投与を担当する医師が処置する。ただし、より高度な専門的治療が必要な場合は、積極的刑罰措置を一時的に停止し、専門機関で治療したあとに積極的刑罰措置を再開し、残りの期間が終わるまで行う。
(心神喪失の適用)
第七九条 積極的刑罰措置を実施する中で対象の被告人が犯罪の構成要件に該当する行為に及んだときは、一律に心神喪失の状態であったとみなし、刑事罰に問うことはできない。

   第五章 罰則
(裁判員等の不出頭等に対する過料)
第八〇条① 次のいずれかに該当するときは、裁判所の決定で、十万円以下の過料に処する。
一 呼び出しを受けた裁判員又は補充裁判員が、第一八条、第五五条第一項の規定に違反して、正当な理由がなく出席又は出頭をしないとき。
二 裁判員又は補充裁判員が、第五七条第一項の規定に違反して、正当な理由がなく宣誓を拒んだとき。
三 裁判員による投票の投票権を有する裁判員が、第五九条第一項の規定に違反して、指定された時間内に正当な理由がなく投票をしなかったとき。
四 裁判員又は補充裁判員が、第二二条第二項の規定に違反して、裁判員による投票においてどの選択肢に投票するかについての意思を公表したとき。
② 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(組織的多人数買収及び利害誘導罪)
第八一条 組織的多人数買収及び利害誘導罪については、日本国憲法の改正手続に関する法律第一〇九条及び一一〇条の規定を準用する。この場合においては、「憲法改正案」とあるのは「積極的刑罰措置の実施」と、「国民投票運動」とあるのは「政治活動及び投票活動」と読み替えるものとする。
(職権乱用による自由妨害罪)
第八二条① 中央選挙管理会若しくはその下部組織又は国民パスポート管理委員会若しくはその庶務に従事するデジタル省の職員その他の投票事務関係者が、職務上の立場を利用し、国民パスポートを介して私的なメッセージを送ること又はいずれかの選択肢に誘導する意図を持って国民パスポートのディスプレイ上に選択肢を配置すること又は投票において国民が選んだ選択肢とは異なる選択肢としてカウントすることその他の国民パスポート又はそのシステムへの不当な介入によって、国民による自由意志による投票又は投票の公正を妨げたときは、五年以下の拘禁刑に処する。
②  裁判員による投票の投票権を有する者又は裁判官による投票の投票権を有する者の電子投票において前項と同様の介入をした投票事務関係者についても、同様とする。
(投票の秘密侵害罪)
第八三条① 第五三条第一項の規定に違反して、投票経過の秘密を侵害した投票事務関係者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
② 第五三条第二項、第六六条第一項の規定に違反して、投票経過の秘密又は投票の秘密を侵害した者は、一年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。
(暴行・脅迫による投票干渉罪)
第八四条① 国民パスポートを用いた電子投票において、暴行若しくはその告知又は社会生活における名誉若しくは地位その他の利益を損なう旨の脅しを行い、他人の意思を抑圧若しくは自由意思による投票を困難にしたうえで投票を行わせた者又は指紋認証及び顔認証を行わせたうえで他人の国民パスポートを奪取して投票を行った者は、四年以下の拘禁刑に処する。
② 親族に対する暴行の告知又は親族の社会生活における名誉若しくは地位その他の利益を損なう旨の脅しを行い、他人の意思を抑圧若しくは自由意思による投票を困難にしたうえで投票を行わせた者又は指紋認証及び顔認証を行わせたうえで他人の国民パスポートを奪取して投票を行った者も、同様とする。
(不正アクセス行為による投票の妨害・干渉罪)
第八五条 個別の国民パスポート若しくは国民パスポート管理委員会が中心となって管理している国民パスポートの運営システム又は裁判所の管理している投票のシステムに対して、積極的刑罰措置の実施の是非を問う投票の実施が公表されたときから投票の期日までの期間において、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為を行い、国民による投票又は裁判員による投票又は裁判官による投票に対して妨害又は干渉した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
(投票権に対する規制違反)
第八六条 第一〇条第一項及び第三項に規定する投票権の例外に該当するにもかかわらず、自らの国民パスポートに投票権を与える旨の通知が届いたとき、第一一条第二項の規定に違反して、投票権が無効であるとの意思表示を行わないで投票権を行使した者は、自らが投票権の例外に該当することの認識の有無にかかわらず、十万円以下の罰金に処する。
(投票に向けての活動の規制違反)
第八七条 第四〇条第二項又は第三項、第四二条から第四四条、第四八条、第四九条の規定に違反して、政治活動又は投票活動をした者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
(虚偽事実使用罪)
第八八条 投票活動において第四五条に規定する虚偽事実を大胆かつ悪意に満ちた方法で用いた者は、一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。