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【当事者が語る】発達障害が興奮するときのメカニズム。

 さて、今回から、発達障害の啓蒙活動をしたいと思います。

 僕は自閉症スペクトラムと診断されている24歳男性です。

 自分で言うのもなんですが、僕は言語能力が高いため、発達障害の当事者としての感覚を、わかりやすく言葉にできるのではないか、と思い、今回、書いてみることにしました。

 ※発達障害の特性を一般的に語るものではありません。





 発達障害と言っても、いろいろなパターンがありますが、

 興奮しやすい(易刺激性)という特徴は代名詞です。今回は、興奮しやすいメカニズムを、当事者の感覚から、お伝えします。







 単純に考えると、ただ感情の波が激しいだけじゃないか、つまり、メンタルが弱いだけじゃないか、と思われるかもしれませんが、

 僕の感覚で言うと、自分のメンタルが一般レベルより弱い、とは感じません。






 

 

 おそらく、同じ痛みを与えて、健常者と比較すると、大して耐性に差はないと思います。






 ストレス耐性が同じでも、発達障害の人が些細なことで興奮しやすいのは、健常者と受け取り方が違うからだと思います。

 なにより、言われたこと、起こったことは、すべて真に受けます。適当に流さず、真面目に考えます。

 いままでの人生で起こった別の出来事と整合的になるような解釈を常に与えようとしてしまうのです。そういう操作を無意識のうちにやっています。しかも、一瞬のうちにやってます。







 たとえば、通りすがりに見知らぬ人から舌打ちをされると、健常者の場合、なんだ? なんだろう……まあ、いっか、で終わるでしょう。少し考えやすい人でも、1日も経てば忘れるんじゃないでしょうか。

 一方で、僕の場合、その出来事をずっと覚えていて、何年でも考え続けます。きっとうっかり睨んでしまったんだ、なんで睨んだのか、普段から顔の筋肉を動かしてないせいで硬直していたんだ、なんで普段から動かさないのか、友達がいないからだ、なんで友達がいないのか、性格が歪んでるからだ、なんで歪んだのか……みたいなことを嫌なことが起こった一瞬のうちに考えてしまうのですが、それが何年も続いたりします。もちろん、嫌なことはたくさん起こるので、すべて同時進行で、お互いに補強し合いながら膨らんでいきます。

 だから、前も書いたことがありますが、僕は見知らぬコンビニの店員に笑われただけでも自殺してしまう恐れがありました。

 とにかく、目の前で起きた出来事を、大きな解釈の中に一瞬のうちに落とし込んでしまうため、目の前で起きたことがどんなに些細だろうと、関係ないのです。







 これはとても息苦しく、窒息しそうな感じでありました。生まれたときからこうだったので、これがスタンダードだと思い込んでいました。薬を飲んでから、自分が普通じゃなかったことに気づきました。

 話を戻しますが、この解釈というのには根拠があるんです。この理屈っぽいところが発達障害の恐ろしいところ。自分はダメな人間だ、気持ち悪い人間だ、という解釈に、なんでそう思うのか? と問えば、夥しい量の根拠から論理的に説明できました。ありきたりなアドバイスを軽くねじ伏せられる力がありました。だから、優しい言葉や、他人の善意に、助けられたことは一度もありません。無理です。薬を飲まないと……。

 中学生のときから、あまりに思い込みが激しいことには気づいていたので、もしかしたら統合失調症ではないか、と疑ったこともありました。

 でも、妄想ではないんです。だって、根拠があるんだから。統合失調症の場合、妄想だと自分で気づくこともできないそうです。







 だとすると、妄想などではなく、普通なんじゃないか、ただ頑張ってないだけじゃないか、この苦しみを普通だと思って生きろ、という感じでしたね。

 ここが恐ろしい。脳みそが勝手に理論武装して、救いになるはずの解釈をすべて叩き潰していました。お涙頂戴ものの作品のメッセージなんかはすべて叩き潰されるか、自分を攻撃する理屈として機能するか、のどちらかでした。そのせいで、中学生のときは、ホラーしか見てなかったのかもしれません。







 ということで、この制御できない理屈の増殖という脳の特性がまず一点、そして、もう一つは、その理屈を感情面から支える独特な記憶システムです。

 僕は短期記憶がきわめて弱いのですが、なぜか、ネガティブな感情を伴った記憶だけ、鮮烈に残り続けます。そして、それは、すぐに思い出せるところに、いつも置いてあるのです。

 これがよくない。嫌なことが起こると、それに対する解釈が組み立てられると同時に、似たような記憶が次々と引っ張り出されてきて、しかも、その記憶が当時のままのような鮮やかさで迫ってくるため、まるで、嫌なことが同時多発的に起こってるような感じになります。それでパニックになったりするわけです。






 もちろん、嫌な記憶がずっと頭に浮かんでいるというわけではありません。いつでも出て来れるように、膨大な嫌な記憶が準備万端でスタンバイしている、と言ったほうが近いです。

 このスタンばってる記憶たちが、些細なことをきっかけに暴れ出します。

 仲のよかった友達でも、一回でも喧嘩になったりすると、その時の記憶がスタンバイされてしまい、しかも、それは半永久的に続くため、関係改善が難しく、そのまま関係が終わったりします。







 ということで、些細なことでも、それを理屈で膨らませ、嫌な記憶たちでドレスアップすることで、恐ろしく苦痛な出来事に演出してしまい、その結果、興奮する、ということです。

 僕の場合、あんまり癇癪を起こしたことはないけど、学校を脱走したりしてましたね。








 大事なことですが、この興奮しやすさ、薬で改善できます。

 少なくとも、僕は、現在、薬を飲むことで、この特性をある程度抑えることに成功しています。







 妄想と比べるとわかりづらいので、本人も周りも気づいてないケースが多いのではないか、と思います。

 理屈で組み立てられてはいても、これも妄想の一種だとは思いますけど……。なんせ、僕が服用してるのは統合失調症の方の治療にも使われてるものです。 

 苦しんでる人に気づいたら、死んでしまう前に、病院につなげてあげてください。